AIを学ぶエンジニア学生たちがビジネス領域にもチャレンジ。Peakers Academy Exawizards Cup -AI Hack-a-thon for Students 開催レポート

2019年7月7日〜8日、港区浜松町にて株式会社エクサウィザーズと共同開催のハッカソン「Peakers Academy Exawizards Cup -AI Hack-a-thon for Students-」が行われました。

インドの防犯カメラ映像をデータとして用い、AIによる活用法をチームで考えデモを作成した今回のハッカソン。エクサウィザーズ社からは機械学習エンジニア2名、ビジネスサイドのメンバー1名がメンターとして参加しました。

12名の学生さんたちが技術とビジネスの両面からプロダクトアイデアを磨き上げていった二日間。その様子をレポートします。

1日目:課題発表

まずはエクサウィザーズ社・佐藤健吾さんより、同社の企業説明とテーマ・課題の発表が行われました。

使用データはインドの防犯カメラ映像です。チームはこのデータのAIによる活用方法をスライド8枚分にまとめてポスター化し、同時にデモを作成。最終的にそのポスターとデモを用いてプレゼンを行うという形式でした。

今回のハッカソンでは、アーキテクチャ設計・分析方法といった技術的観点はもちろん、そのプロダクトを導入した際のビジネスインパクトや新規性といったビジネス観点も重視されます。具体的には、①実現性、②新規性、③ビジネスインパクト、④デモの精度の4つの評価軸が設定されていました。

評価方法のインプット後、ビジネスサイドの考え方についてのレクチャーが行われました。その際、ビジネス担当のメンター・吉村春菜さんが話した

「例えば、顧客から『ドリルが欲しい』と要望があった時、顧客が本当に欲しいのはドリルそのものではなくそれを使ってあける穴のほうである。その顧客が穴を空けるためにはドリル以外のもっといい選択肢があるかもしれない。ドリルが欲しいと言われたから単純にドリルを差し出すのではなく、顧客の本当のニーズを見極めた上で最適な方法を提示する必要がある」

というお話は、多くの学生さんにとってビジネスサイドの考え方に興味を持つきっかけとなったようで、開催後のアンケートでも印象に残った内容としてあげられていました。

1日目:アイスブレイク

今回のハッカソンは、A~Dの各3名ずつ4チームに分かれて行われました。チーム分けはPeakers側で事前に実施されたため、ほとんどの方がお互い初対面です。ハッカソンを開始する前に少しでもチーム内の結束が高まるよう、アイスブレイクとして簡単なゲームを行いました。

ゲームは「共通点グランドスラム」。

制限時間中を設けてチーム内の共通点を書き出してもらい、それをポイント化して競うゲームです。チーム内のより多くのメンバーに共通する事柄を書くと高ポイントとなり、最終的に全共通点の合計得点で順位が決まります。

参加者の各チームのうち人数が少ない1チームにはエクサウィザーズ社の人事担当・佐藤さんが参加。他、メンターの3名も1チームとしてアイスブレイクに加わっていただきました。

結果、学生チームはそれぞれ30〜36点の高い得点を獲得。「DeNA社のステッカーを持っている」「映画好き」「MLエンジニアになりたい」など様々な共通点が挙げられていました。初めて会った人同士でも、自分と同じところがある! とわかることで、早く打ち解けることができていたようです。

一方、共通点探しが難航していたメンターチームの合計得点は12点に。唯一全員が揃った共通点は「ディズニー好き」でした。年齢や性別も異なり、またビジネスサイドとエンジニアからそれぞれ参加いただいたメンターチームの個性が強く現れた結果となりました。

1日目:ワーク開始、アイデア出し

アイスブレイクが終わると、早速ハッカソン本編が始まります。

どのチームも、まずは動画データを見ながらアイデアを洗い出すブレインストーミングからスタートしていました。

データとして提供された防犯カメラ映像は、インドのとある会社の出退勤ゲートを映したものです。ゲートは狭く、時間帯によっては多くの人ひしめきあいながら通過します。動画には「表情」「服装」など様々な情報が含まれていますが、その中から何をどのように活用するのか、チーム内で議論が行われました。

アイデアを固めていく過程でチームが考慮しなければならない点は大きく2つありました。ひとつは「与えられたデータと機械学習で実現可能なアイデアか」、もうひとつは「そのアイデアにビジネス的な価値があるかどうか」です。

前者は参加学生の皆さんにとって深く知見のある部分ですが、後者は多くのチームにとって初体験で、みなさん長い時間をかけて悩んでいらっしゃいました。ワーク開始後しばらくは、顔認証による勤怠管理や不審者検知など、オリエンテーション内で言及された機械学習で実現しやすい案に引き寄せられてしまい、なかなかアイデアが出ないチームもありました。

そのため、メンター陣より自由な発想を求めるアナウンスがなされました。

「ビルの入退館映像だと考えると、ビルの入退館というアイデアしかでてこない。でも、『たくさんの人が出入りをしていて、歩いている以外の行動があまり想定されない映像』として考えると、駅だったりモールだったりいろいろなところでの活用アイデアが出てくる。今回はそういうアイデアでも良しとしているので、もっと柔軟に考えて欲しい」

そこからは、各チームまずは実現可能性にこだわりすぎないアイデアを出したあと、メンターと会話しながらそれを実現できる方向に落とし込んでいくという方法をとっていました。

1日目:ビジネスとしての価値策定

実現したいことの方向性が固まったチームから、実際にプロダクトの価値を具体化するフェーズに入ります。Cチームは特に決定スピードが早く、開始から2時間程度ですでにこの段階に進んでいました。

参加者のみなさんにはビジネスサイドのレクチャー時、ビジネスインパクトを考えるためのフレームワークとして「ビジネスモデルキャンバス」がインプットされていました。

各チーム、このキャンバス上にビジネスの価値を整理します。

メンター陣からはチームに「それを実現して、どんな人が欲しがるのか?」「どういった組織団体と協力するとさらに価値を生み出せるのか?」といった問いかけがなされ、それに答えたりアドバイスをもらったりすることで、さらにビジネスの価値をシャープにしていきました。

例えば、Bチームのアイデアは「監視カメラから従業員の身だしなみをチェックできる」もので、「身だしなみからきちんと働いているかどうかを判定したい」という意図でした。ですが、一般的な企業では服装とパフォーマンスに必ずしも関連性があるとは限りません。

そこで、高級ホテルのフロントなど、整った服装が求められる場面を想定。さらに「日本の高級ホテルや高級料理店が海外進出した際、日本人社員のチェックに代わって身だしなみのクオリティを維持する」という導入例を考え、監視カメラとAIを用いることに意義をもたせました。

各チームこうしてアイデアを固め、数時間かけてビジネスインパクトを高めていきます。一番時間がかかったBチームは1日目の終了後にもメンター陣からアドバイスを受けていました。

最終的な活用案は以下のとおりです。

Aチーム:顔認識を用いたオフィスエレベータの混雑解消

Bチーム:人工知能による身だしなみチェックの自動化

Cチーム:画像認識による勤怠管理と健康管理

Dチーム:画像認識技術を利用した統合的社内環境改善

苦戦するチームが多かったビジネスサイドの策定。ですが、メンター陣からは「皆さん経験のないビジネスサイドの考え方も拒絶せず興味をもって意欲的に取り組んでくださったのが好印象だった」とのコメントがありました。また、開催後の参加者アンケートでも「ビジネスの考え方を学ぶことができてよかった」という回答が多数あり、皆さん新しい知見をたくさん積むことができたようでした。

1日目終盤〜2日目:実装方針の決定

ビジネスとしての価値が固まると、次はそのアイデアを技術的にどうやって実現していくかを話し合っていきます。1日目から技術的な会話に入っているチームもありましたが、多くは2日目からが本格的な議論となりました。

2日目のワーク開始時、まずはエンジニアメンター陣より技術的アウトプットとして求められるものについての解説が行われました。


人工知能をビジネスとして現場に導入する際、エンジニアは人工知能の精度が高いかどうかだけではなく、適切なデータの取得ができる環境づくりや、要件を満たす分析・処理の選択などにも目を向ける必要があります。今回のハッカソンでは、そうした観点も踏まえた技術設計を求めているというオリエンテーションでした。

解説で事例としてあげられたのは、エクサウィザーズ社でインドの道路映像から車のナンバープレート読み取りを行なった時の設計です。画質とフレームレートの高い録画データに対して素早い読み取りと正確さを両立させる処理の方法や、ナンバープレートの位置特定・読み取りなどにそれぞれ用いた手法について、順を追って説明がなされました。

解説が終わりワークに入ると、早速「難しい!」という声が。各チーム議論が一気に活発になります。同時にエンジニアメンター陣がチームを巡回し、アーキテクチャ設計のためにどういった観点が必要なのか・アウトプットへのより具体的な期待値などをインプットしていきます。

コーディングだけではないデータサイエンスの重要な部分に触れ、「データサイエンティストは意外とコーディングしない(技術設計的な部分の構築に時間を費やしていることが多い)と聞いていたけど、ほんとにそうなんだね」と話している学生さんもいらっしゃいました。

1日目までは日本語だけだったホワイトボードシートには英語や数式が増えていき、メンター陣への質問も技術的に高度なものばかりに。皆さんやはり技術的分野には強く、知見が深いことが見て取れました。1時間経過した頃にはエンジニアメンターの加藤さんから「メンターからのインプットを元に、すんなりと実装の話に入っている」というコメントもあり、どんどん方針が固まっているようでした。

2日目:実装および最終成果物作成

実装方針が決まったチームから、最終プレゼンの準備がスタート。

ほとんどのチームで、デモのコーディングをするメンバーとプレゼンのスライド作成・構成などを考えるメンバーに役割分担をして進めていました。

2日目はランチとしてお弁当が配られました。2日間に渡る長時間作業の疲れも色濃くなる中、皆さんお箸を片手に、黙々と画面に向き合います。

エレベーターの混雑解消を目指すAチームでは、アイデアを実現するための数式を終盤までメンター陣に相談。Aチームには「混雑解消は難しい課題だとは思うが、だからこそチャレンジしてほしい」というメンターからの要請もあり、技術的にしっかりとした解を出したいという強い意欲が見受けられました。

ハッカソン全編を通して高い計画性とスピードを見せたのがCチームです。Cチームでは開始後すぐに「画像×ヘルスケア」の方向でアイデアを決め、早い段階からビジネスサイドの価値を固めるメンバーと実装に向けた調査を行うメンバーで役割分担を行なっていました。終了後のメンターインタビューでは吉村さんから「ヘルスケアでBtoBという路線で行くという点が最後まで揺れなかったのは、非常に大事なこと」とコメントがあったように、しっかりと初志貫徹していたCチーム。早い分担の甲斐あって、1日目の終盤〜2日目の序盤ですでに一部の実装を終え、2日目の後半には細部の磨き上げに持ち込めていました。

残り1時間ほどになると、どのチームもスライドの最終仕上げやリハーサルに入ります。時間のギリギリまで意見を出し合いながら、より良い成果物になるよう皆さん力を尽くしていらっしゃいました。果たして、どのような最終プレゼンになるのでしょうか。

2日目:最終プレゼン

プレゼンはAチームからアルファベット順に行われました。

方眼紙に印刷したスライドを貼り付けたポスターと、デモを作成したチームはそちらを利用して自分たちの考えたビジネスとその実現方法を発表します。

チームA「顔認識を用いたオフィスエレベータの混雑解消」

従業員のストレスを軽減し、また待ち時間で勤務時間が少なくなってしまうことによるコスト面での損失削減を目指します。

従業員は前もって顔画像と部署を登録しておき、入館時に顔認識で個人を特定。所属部署のある階を目的階として自動で乗り込むエレベータを振り分け、必要な階にのみ停止するようにするというものです。

例えば、エレベータが2機ある5階建てのビルの場合、従来であればそれぞれのエレベータが2~5階全てに停止する場合があります。そこで、2、3階のみで1機、4、5階のみで1機と振り分ければ、それぞれのエレベータの停止階が少なくなり、待ち時間を軽減することが可能です。

最適化には、ユーザーの満足度とエレベータ稼働率を最大化するアルゴリズムを用います。デモの発表はありませんでしたが、アルゴリズムについてはチーム内で最後まで考察検討し、数式でスライドに盛り込まれていました。メンター陣からは、厳密に解を出そうとすると難しい課題に対して敢えてチャレンジした点が評価され、最もポテンシャルが高いチームとのコメントもありました。

チームB「人工知能による身だしなみチェックの自動化」

時間がかかりチェック項目も多い身だしなみチェックの効率化、および外国人労働者や海外展開先等も含めた均質化が目的です。ビジネスインパクトとしては、店舗数の多いファミリーレストランなどの場合年間2億3,000万円にのぼるという試算も。

物体検出はYOLO V3、判定はVAEを用います。今回のデモでは制服を着ているか着ていないかのみの検出に止まり、誤検出・未検出や誤判定も多くありましたが、物体検出モデルの利用・中間特徴量に時系列情報を使用することでの改善も提案されていました。

入退館の動画から服装に着目した発想力が評価された一方、ネクタイの結び方やシャツの着崩れ、靴など細かい部分を画像認識で判別するのは現状困難ではないかというメンター陣からの意見もあり、課題も残りました。

チームC「画像認識による勤怠管理と健康管理」

表情認識による疲労度スコアの算出で従業員の健康管理を効率化し、同時に勤怠管理も行うシステムです。

コンサル会社や健康外部専門事業者と提携して、健康経営のための施策として一般企業に売り込んでもらうことを想定しています。提携会社にとってはより良い革新的な施策として提案が可能になり、導入先企業では従業員の健康管理とエンゲージメント強化を実現。導入先企業の従業員にとっては働きやすい環境が整えられ、様々な人にとって利益の大きいプロダクトとなっています。

また、リアルタイムに表情をHappy・Neutral・Tiredの3つに分類するデモを作成。2日という短い期間の間に実装までこぎつけた計画性とスピード、および開発力はメンター陣からも高い評価を受けました。

ビジネスとしてのアイデア・技術的な実装部分ともに現状と理想をしっかりと切り分けた上でブラッシュアップ案を提示しており、将来性を強く感じられたのが印象的でした。

チームD「画像認識技術を利用した統合的社内環境改善」

勤怠管理と、動画から社内のコミュニティを把握する機能を組み合わせた社内環境改善ツールです。社員が増えるにつれて、個々の社員への手厚いメンタルケアは困難になります。その課題を、コミュニティの可視化で配属を最適に行うことで解決しようというアプローチになっています。

社内環境改善という視点はCチームと近しいですが、骨格や表情からコミュニティを把握しそれを可視化するというアイデアは非常にユニークでした。また、技術的な実現可能性が高く、また類似サービスが少ないことからビジネスチャンスが大きい点も高く評価されました。

最終発表で時間が足りなくなるアクシデントはあったものの、実際にコミュニティのマッピングを行なったデモの提示もあり、多数の部署のハブになる社員や孤立している社員が点と線の描画で感覚的にわかるように作成されていました。

2日目:結果発表、総評

全てのチームの最終プレゼンと質疑応答が終わると、審査時間に。今回はメンターの3名が審査員を務めました。

評価は、

①実現性:10pt

②新規性:10pt

③ビジネスインパクト:10pt

④デモの精度:5pt

の合計35ptでチームごとに点数をつける形で行われました。審査は30分以上かけて行われ、今回の接戦具合が感じられました。

その結果……最終順位がこちら!

1位:チームC 25pt

2位:チームD 24pt

3位:チームB 20pt

4位:チームA 16pt 

見事1位を獲得したのは、チームCでした!

2日間で顔検出から表情の識別までをデモとして実装したスピードと開発力、健康経営という社会的な関心の高い分野に着目し、初期の販路〜今後の拡張性までのストーリーを描ききった点が大きく評価されました。チームCは早い段階からチーム内で役割分担を行なって各メンバーのバリューを発揮。技術面・ビジネス面ともにクオリティの高い発表がなされていました。

チームCのみなさん、おめでとうございます!

表彰式と賞品授与後、メンターの玉城さんが本ハッカソンの総評を行いました。

「今回の課題は慣れないビジネスサイドの要素もあれば開発の要素もあり、やることが幅広くたくさんあったと思います。優勝したチームCはそれらが一通りできていて、デモも動くものまで持ってきていたので、非常に驚きました」

「それから、みなさんチームワークが素晴らしかったです。エクサウィザーズではエンジニアとビジネスサイドが協力しあってプロジェクトを進めていくため、コミュニケーションはとても重要です。皆さんとても積極的にコミュニケーションを取っていらっしゃったので、すごく良いなと感じました」

「一番思ったのが、エクサウィザーズにいそうなメンバーがたくさんいるなあと。他のメンターともそう話していました。そういった方々と出会うことができて、本当に良かったです」

以上で2日間のハッカソンは幕を閉じました。ですが、解散後も会場には多くの参加者の方が残り、メンター陣にエクサウィザーズ社の実際の業務や採用などについてお話をされていました。開会式時点では多くの学生さんが同社についてご存知ないようでしたが、今回のハッカソンで「とても技術力のある企業だと思った」「なんで知られていないのかが不思議」と、大きく印象が変わったようでした。

まとめ

普段は実装や精度向上を中心に励む学生さんが、ビジネスサイドの考え方に触れ、実際の運用を見据えた開発プロセスの構築などを学んだ今回のハッカソン。多くの学生さんにとって馴染みのないワークにも、積極的に取り組む姿勢が非常に印象的でした。

オンラインのコンペティションや大学での研究ではなかなか得られないナレッジを持ち帰っていただけたのではないかと思います。事後アンケートでも新たな学びを得られたとの声もあり、運営一同非常に嬉しく思っております。

優勝したチームCの皆様をはじめ、4チーム12名の参加者の皆様、2日間大変お疲れ様でした!

チームCの各メンバーのインタビューと、今回参加いただいたメンター陣のインタビューもぜひご覧ください。

チームCメンバーインタビュー

瀬戸 翔さん
中川 椋太郎さん
西田 吉克さん

メンターインタビュー

玉城 大資さん
吉村 春菜さん
加藤 卓哉さん

Peakersでは、今後も様々なハッカソン・MeetUp・インターンシップを開催予定です。ここでしか体験できない学びを手に入れたい学生の皆さん、ご参加をお待ちしております!

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