住宅設備メーカーリクシルが開催する、クローズドデータを用いた学生向け機械学習ハッカソン、技術メンターおよび人事担当にインタビュー
2020年10月、住宅設備メーカーとして国内有数のメーカーである株式会社LIXIL(以下「リクシル」)。同社は「人間中心設計」を掲げ、様々なデータ利活用に乗り出している。その一例が、今回のハッカソンでテーマとなった同社の研究・実験施設「U2-Home II(ユースクエアホームツー)」だ。「U2-Home II」はIoTやスマート社会の到来を想定し、LIXILの商品や生活研究のノウハウと、最新のセンサーやネットワークの技術を加えたIoTハウス。人・物・家・社会が情報で結ばれた「住生活の未来」についてのアイデア発想と検証実験を行う250個のセンサーが設置されている。今回はそこで得られた実際のデータを活用しながら、新しい課題発見と、実現のための実験を設計していく。
学生の技術的な支援のためハッカソンに参加した、技術メンターの栗本氏は、キャリア入社組として、他社ではエンジニア、マネージャーとして、時には経営陣の一角を担いながら、リクシルの技術開発を引っ張る人物だ。また、今回は新卒採用部門の責任者として、人事担当の齋藤氏も参加。ハッカソンへの取り組みや、リクシルが強化するデジタル人材採用についてお二人にお話を伺った。
ビジネスと技術の両輪、学生の自由さがユーザー目線のソリューションにつながった
まずは技術メンターとして参加した栗本氏に話を伺った。
3日間、メンターとして学生さんに接してみての感想を聞かせてください。
ユニークで素晴らしいアイデアをたくさん提案してもらうことができました。洗濯物が生乾きにならない場所を選択できるソリューションなど、一人暮らしをしている学生ならではのアイデアをいただけて非常に有意義でした。
社内でも同じような新規事業コンテストを開催したことはあるのですが、社会人だとどうしてもビジネスありきのアイデアになってしまいます。学生さんの発想はもっと自由で、日々の困りごとからユーザー目線のソリューションを考えていて感心しました。
今回の評価ポイントを教えてください。
主に2つの視点で評価させていただきました。1つはどのような課題を解決できるアイデアなのか論理的に説明できているかどうか。もう1つは、そのアイデアを実現するための技術について、明確かつ説得的に表現できているかどうかです。どんなに技術的に優れていても、よりよい生活を実現するためにデータを何らかの社会的な価値に変換できていなければダメですし、逆に、アイデアがどれほど素晴らしくても、実現可能性がなければ机上の空論で終わってしまいます。
データから価値を探し出すのは、実は私たちでもかなり難しいことです。通常はお客様の解決したい課題がまずあって、それを解決するためにどんなデータを集めればいいのかを考えるという順番ですから。でも、今回参加した学生さんたちは、ちょっとヒントを伝えただけで自らアイデアを発見できていました。これはすごいことです。
どうすれば、データから価値を見つけることができるのでしょうか?
「こうすればうまくいく」という正解はありません。どんなアイデアでも、実際にやってみなければわからないことばかりです。データをしっかり分析して、スピーディに実行し、消費者の反応を見るというサイクルをいかに速く回していくかがコツといえばコツでしょうか。
決勝進出した学生と他の学生の相違点はどこだったのでしょうか?
評価基準である、アイデアの提供価値と技術的な実現可能性の2つを論理的に説明できたかどうかだと思います。1位の方は総務省のデータで社会課題を証明していましたし、技術的な説明も論理的でした。
感心したアイデアはありましたか?
個人的には、人感センサーの精度を上げるため、あるいはプライバシーを保護するためにCO2センサーを活用するといった、本来の目的とは異なるセンサーの使い方を考えたアイデアに感心しました。
がんばった学生のみなさんに一言お願いします。
本業も忙しいなか、リクシルに興味を持ってハッカソンにご参加いただき、本当にありがとうございました。みなさんにお伝えしたいのは、今回の結果がすべてではないということです。どんなアイデアも、実際にやってみなければわからないものです。あくまでアイデアソンですから、残念ながら入賞できなかった方も、決して結果をネガティブに捉えないで欲しいなと思います。入賞した方は、20人いる審査員が評価したということですから、ぜひ自信を持ってください。
急速にデジタル化するリクシル、テクノロジー人材が活躍できる多様性あるフィールドへの変貌
続いては人事部門で新卒採用を担当する齋藤氏に伺った。
今回はじめてハッカソンを実施した経緯は?
デジタル系の学生さんにリクシルがデジタル事業に積極的に取り組んでいることを知ってほしいと思ったのと、デジタルの知見が “住”のフィールドでいかに有用か気づいてほしいという思いで実施しました。
変化が激しい時代のなかで、例えば商品開発などビジネスの様々な場面でスピーディな対応が求められます。リクシルではこうした変化に対応するためにデジタル人材を含めた多様性を重視した若い人が活躍できる環境を見据えた組織改革を行っていきます。
学生さんへメッセージをお願いします。
我々の業界では、生活のベースになる住というフィールドで、それをいかに豊かに変えていけるかが重要になります。皆さんが持っている知識と我々の経験を合わせれば、今までにない新しいものを作ることができるはずです。会社としても、やりたいことに挑戦できる環境を十分に整えています。
他業界に比べ、我々の業界はまだ人が少なく、様々な課題に挑戦しやすい状況です。やりたいことがある方、新しい取り組みに挑戦したい方は、是非飛び込んできてください。