激変する「サプライチェーン」の世界、グローバル企業で踏み出すファーストキャリアの魅力に迫る

さまざまなものがAIやITに置き換えられていく今の世界において、AIやITでは代替えできないものがある。その最たるものが「物流」、つまりサプライチェーンだ。人が生きていく限り、物の動きがなくなることはない。むしろEコマースの台頭などによって、物が動く量は以前より一層、変貌していくと言えるだろう。

このサプライチェーンを事業上の重要課題と捉え、変革していこうとしている企業がある。グローバルでは売上高3兆円を超え、化粧品業界ナンバーワンのシェアを持つロレアルグループの日本法人である日本ロレアルでは、サプライチェーンのトップがヴァイスプレジデントを務めている。このことからも、サプライチェーンをいかに重視しているか理解できる。これからのサプライチェーンはどう変化していくのか、どんな変革を達成しようとしているのか、日本ロレアルヴァイスプレジデントのジャン−リュック ローランス氏に直接話を伺った。

データが「サプライチェーン」の未来

近年、VUCA(ブーカ)という言葉がキーワードになっています。Volatility(不安定さ)、Uncertainty(不確実さ)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(曖昧性さ)の頭文字をつなげたこの言葉は、先を見通すことが難しい現代の特徴をよく表しています。ビジネスのあらゆる領域においてVUCAの要素は散見されますが、特にそれが顕著なのがサプライチェーンです。

今後消費者は、より気軽に、特にEコマースによるショッピングを楽しみ、サプライチェーンはそれを最適化できるよう求められていくでしょう。しかし、消費者はただ便利で品質が高い物を求めているわけではありません。便利で高品質な一方、梱包は過剰ではないか、環境を汚す成分を使っていないかなど、いかに環境や社会に配慮しているか、つまり持続可能(Sustainable)か、という視点を大事にしています。サプライチェーンはこの持続可能性(Sustainability)に対して大きく貢献する領域です。例えば、需要予測によって最適な製造計画を立てることができれば、製品の無駄を最小限に抑えることができます。環境や社会に貢献する企業であることを目指す上で、サプライチェーンの変革は避けることができないテーマなのです。

VUCAの側面の1つとして、AIをはじめとした「データ社会化」も重要なテーマです。サプライチェーンはまさにデータの宝庫であり、その活用インパクトも非常に大きい。どういった消費者が、どういった製品を、いつどんなタイミングで必要とするのか。そういったデータを把握し、次に活かすことができます。例えば需要予測によって製造の最適化に貢献するとともに、消費者は何を望んでいるのかという示唆を得てビジネスに貢献することもできます。我々の強みの一つは、こうしたデータを世界トップレベルで保有していることです。サプライチェーンはそういったデータの「ハブ」としての役割を持ちつつ、そこからいかにビジネスを生み出していくのか、という、「データ」と「ビジネス」のバランス感覚を鍛える最適の場だと言えるでしょう。

顧客中心主義と社員中心主義の両立

社会がデジタル化していく中で、顧客は便利なだけの無味無臭の世界を求めるのではなく、地球環境への配慮を重視するようになってきました。また、社員も、自分が働く場所を選択する際に、その企業が倫理的な会社であるかどうかを意識する人が増えています。顧客、社員の意識が大きく変化する時代において、ロレアルはそれを大きなチャンスと捉え、前向きにチャレンジしています。

例を挙げると、ロレアルグループでは「男女平等が、健全な職場環境を作り上げ、創造性や革新を促進し、さらなる企業成長を促す」という考えのもと、長年にわたって男女平等の推進に積極的に取り組んできました。そうした実績が高く評価され、2019年に「ブルームバーグ男女平等指数の企業」に選定されました。また、「倫理的な企業風土」は社員にとって、またビジネスにおいて、外すことのできない、重要なポイントとして重視しています。こうした姿勢が高く評価された結果、「世界で最も倫理的な企業」に、今年を含め10回選出されています。

さらに、持続可能な環境や社会を目指し、持続的発展のコミットメントとして「SHARING BEAUTY WITH ALL (美のすべてを、共に次世代へ)」を掲げています。廃棄量・CO2排出量・水使用量の削減、グリーン電力の使用や、環境への負荷を低減した成分の採用、女性活躍推進のコミュニティー支援など、さまざまな取組みを推進しています。こうした私たちの取組みが、国際的な環境評価NGOから評価され、サステナビリティの世界的リーダーとして3年連続で表彰されました。

消費者、及び顧客を中心に考えたときに重要となるAgility、つまり「迅速かつ柔軟な顧客対応力」を持つことも重要です。化粧品はトレンドによって状況が大きく変わります。日々変化するトレンドをキャッチし、需要を読み、日頃からどの国に対しても最適に出荷できる提案力を持つと同時に、瞬間的なニーズに対しても柔軟かつ迅速に対応できるような供給体制を構築することが、廃棄を削減し、持続可能性のある経営を可能にします。

このようにして、我々はConsumer Centricity(顧客中心主義)と、Employee Centricity(社員中心主義)の2軸を両立させるよう意識しています。顧客が環境や社会に優しい商品を選ぶのと同様に、社員も持続的に発展できる企業で働くことを求めているからです。男女平等の推進や、環境問題への取組みが、認められ表彰されることは、実際に働いている社員の誇りにもつながっていきます。社会環境や持続的発展への取組みは、顧客と社員双方に、ロレアルの価値を伝えるチャンスなのです。

我々はConsumer Centricity(顧客中心主義)と、Employee Centricity(社員中心主義)の軸を両立させ、スピーディに変化するこの世界で、リーダーシップを取ることを目指しています。

「Beauty Tech Company」への進化

ロレアルは、化粧品メーカーという位置づけを超え、いまではIT系企業の買収なども手がけるNo. 1 Beauty Tech Companyとなるべく生まれ変わろうとしています。今後世の中で重要になるであろうものをいち早くキャッチし、変化を恐れずに大きく投資して、有言実行する。それが、ロレアルグループの特徴でもあります。

この先を見越した考え方から、サプライチェーンにおける新たな仕事も生まれています。身近なところでいえば、Eコマース化は大きなテーマであると言えるでしょう。我々はサプライチェーン・チームの中に、e-key account(Eコマースの主要取引先のアカウントマネージャー)という職種を置き、各取引先の個々の特徴や戦略を見ながら、協働の精神で独自の戦略や対応に取り組んでいます。 日本ロレアルにおけるEコマースは、今後15年で今の3倍まで伸びるであろうと想定しており、ロレアルらしい顧客体験はどんなものなのかを探求しています。

また、時代の流れを受けて、社内にはデータエンジニアのような新しい職種が誕生しています。ただし、いま私たちが必要としているのは、データを扱うだけのITエンジニアではありません。ITとビジネス両方を理解し、ビジネスの最前線に立つことができる人材を求めています。

数年前まで、「サプライチェーンといえばデマンドプランニング(需要予測)」と認識されていました。しかし、今後は需要予測だけでなく、データを駆使して正確な予測を立て、様々なトレンドや社会の要望をキャッチしながら数字に向き合うことができる、デマンドセンシング(需要感知)が重要になります。

サプライチェーン職は、かつてのバックオフィス的なポジションから、戦略的にビジネスの最前線に立つ職種へと大きく変貌していくはずです。単なるサービスの提供者ではなく、積極的かつ戦略的な提案ができるビジネスパートナーとしての活躍を期待しています。

サプライチェーンに携わる醍醐味は、生産、物流、販売に至るまで関わるため、市場やビジネスの状況がよくわかることです。生産現場で起きていることから、ビジネスの現場で起きていることまで理解できる、ハイブリッド型の人材が活躍できる職種であり、ロレアルの企業カルチャーである「詩人と農夫(Poet & Peasant)」が最も当てはまる仕事といえるかもしれません。

「キャリアは自分でつくりあげる」がロレアル流

ロレアルには、決まったキャリアパスというものがありません。「キャリアパスは、上長や人事から指示されるもの」という概念もありません。

学歴・人種などさまざまなバックグラウンドを持つ人材を積極的に迎え入れ、個性あふれるメンバー一人ひとりが、自分で自分のキャリアパスを作り上げるというのが、私たちの重要な価値観なのです。

サプライチェーンだけでも、需要予測チームや、供給チーム、カスタマーケアチームなど、いろいろな仕事が経験できます。海外で働いたり、生産ラインにより近い場所で仕事をする機会もあるでしょう。「こういうことをしたい」という想いを持ち、結果を出しながらその想いを発信していくことが重要なのです。

自身がオーナーシップを持って臨むカルチャーは、ほかでも見受けられます。たとえば、働き方の全社プロジェクト「simplicity」では、「枠組みづくりと自由の奨励(Frame and Trust is the new control)」という行動指針があります。この指針を基に、会社の目的など一定の枠組みは作りながらも、その中で社員を信頼して任せるという考え方を実践しています。

社員は、共通のビジョンを持って、ともにチャレンジする大切な仲間です。proximity=距離が近く、言いたいことが言い合える親密性と、generosity=違う意見を受け入れる寛容性が、お互いのtrust=信頼を作るサイクルにつながっていく。この考えがロレアルらしさの源です。

ロレアルはダイバーシティ(多様性)を重視しており、キャリア形成において男性、女性という観点は、なんの影響も及ぼしません。完全にフラットです。男女問わず、さまざまな年齢・人種の社員が働いています。多様な人材が、自分らしく働くことができるロレアルこそ、私の誇りなのです。

自分らしく働きたい方、スキルや個性を最大限に活用したいという方は、ぜひ我々サプライチェーンの「等身大」を見にきてください。11月5日に、現場社員との交流や業務理解を目的としたワークショップを開催します。サプライチェーンに興味がある方はぜひお越しください。

11月5日開催!Beauty Tech Companyと考える物流の未来〜L’Oréal Supply Chain Workshop

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