PoliPoliCEO伊藤さんってどんな人?「マウンティング嫌いです」19歳ブロックチェーン起業家の素顔
23歳ライター、19歳起業家に嫉妬する
Mewcket編集部の木嶋です。私は現在23歳なのですが、自分より若いCEOにインタビューすることが最近増えてきています。
そこで気になることがあります。
彼ら・彼女らは何を考えて、どうしてCEOになったのか。
私のようなCEOではない人間とは何か違う特別な人生を送ってきたのか――。
こんなことを思っていた矢先、ちょうど自分より4つ年下のCEO、伊藤和真氏(19)にインタビューする機会を得ました。
伊藤氏は、トークンエコノミーで日本の政治を変えるPoliPoliのCEOとして最近メディアにも出ずっぱりの注目若手起業家です。
トークンエコノミーに基づいた「荒れない」政治コミュニティを創り出すPoliPoli。その斬新な事業内容も面白いのですが、今回はCEOの伊藤氏自身に注目してみました。
常人の4倍くらいの濃度で人生を生きている伊藤氏の、人となりやその“哲学”迫ってみたら、ただの「頭の切れる若年起業家」だけではない伊藤氏の意外な一面が見えてきました。
地方の“イキリ系進学校”は、起業家を生む?「孫さんとかホリエモンさんもそうだと思うんです」
ー「どんな人生を送ったら、若くして起業することになるんだろう?」って素朴に疑問に思うんですが、起業のきっかけは何だったのでしょうか?
僕のきっかけは俳句ですね。
俳句をもっと気軽にシェアしたくて、大学に入学してすぐにプログラミングコミュニティに入りました。そこで1人で数ヵ月かけて「俳句てふてふ」という俳句SNSアプリを作りました。
(俳句てふてふは毎日新聞社に先日事業譲渡が決定!その記事はこちらで。)
そこからスタートアップ界隈の人と繋がるようになって、そのご縁で、あるベンチャーキャピタル(VC)でインターンをしたりもしていました。PoliPoliを起業したのは、インターンをした後ですね。
ー政治のスタートアップを立ち上げたのは、もともと政治に興味があったからなんでしょうか?
特別興味は無かったですね。普通の人と同じくらい冷めていると思いますよ。
18歳になった時に、せっかく選挙権があるから投票しようかと思って、自分の選挙区の候補者について調べようと思ったら、出てくる情報が分かりにくくて、これをテクノロジーで変えられないかと思ったのがきっかけです。
僕は、「投票しよう!選挙に行こう!」っていうスタンスではないんですよね。 そこは他の人に任せて、僕はあくまでテクノロジーを使って政治の仕組みを変えたいと思っているんです。
―日本では、政治系スタートアップは珍しいですよね。しかも、それにトークンエコノミーを掛け合わせるってすごい発想力だと思うんですが、どうやって思いつかれたのでしょうか?
海外事例をちょくちょくチェックしているのですが、アメリカやエストニアではtoG(政府向け)サービスって結構あるんです。
日本はまだほとんどなくてブルーオーシャンなんですが、だからこそ、チャンスだと思いました。
トークンエコノミーに目を付けたのは、海外のSteemitというブロックチェーン事業から着想を得たからです。Steemitは、ユーザーが書いた文章に対して、他のユーザーが良いと思ったら、トークンで評価、報酬を与えられるようなサービスです。
これを、「政治コミュニティにも応用できるんじゃないか」と思いました。
そうして思いついたPoliPoliの仕組みは、政治家のコメントに対して、参加した市民はPollinというトークンを投げ銭できるというものです。そして、そのPollinnを得るために、市民自身もコメントしたり、記事を書いたりすることができます。
政治コミュニティって普通荒れがちですよね。でも、そこをトークンで評価し合う体制を取ることによって、不適切なコメントは防げると考えています。
でも、周りから理解を得るのは難しかったですね。
PoliPoliのアイデアをスタートアップ界隈の大人たちにプレゼンしたら、「そのサービス全然イケてないよ」、「政治系のサービスは難しいよ」って言われました。
超頭の切れる人たちなんで、「この人たちが言うならきっとそうなんだろうな」とも思ったんですが、「いや、ここまで反対されたら、逆にやってやろう」と反骨心も湧いて来ました(笑)。
―問題を見つけたからと言って、「起業して変えよう!」という発想が普通の大学生には出てこないような気もするんですが、その起業家精神は一体どこから来たんでしょうか…?
伊藤さんの人生が気になってしょうがないんですが、高校生の時はどんな学生でしたか?
僕は、東海高校という愛知の男子校に通っていました。
株式会社メルカリの代表取締役会長兼CEO・山田進太郎さんの母校でもあるんですが、東海地方では1番頭の良い学校で、イキってましたね(笑)。
周りの学校の生徒も「あ、東海生だ」って気付くような、その地域ではかなり有名な学校でした。
井の中の蛙なんですけど、「自分だったら何でもできる」と思っていました。その考えはVCでインターンするようになって、完全に打ち砕かれましたけど(笑)。
でも、こういう地方の“イキってる”進学校って起業家を生みやすい気もするんですよね。
東京来たらすごい人って山ほどいるじゃないですか。そうすると、「自分にはできる」、とか「自分はすごい」とか思えなかったんじゃないかなと。
孫 正義さんとか、堀江貴文(ホリエモン)さんも、九州の進学校出身ですよね。地方の進学校の、あの独特な環境は起業家育成には良いんじゃないかなと思ったりします(笑)。
―そういう感覚って確かに、大切な気がします!勉強だけしているようなタイプにも見えないですね。
勉強もしてましたけど、中高はとにかくダンスに熱中してました。中3の時にニューヨークにダンス留学もしてました。
―それはかなり本格的ですね!
ニューヨークで、「日本人だから金持っているだろう」って喝上げされそうになったりして、死にそうな思いもしました。今思えば、あれより怖いものはないですね(笑)。起業しても死なないですし。
SNSマーケティングの力はダンスで磨かれた?
中高時代にやっていたダンスは、今のPoliPoliのマーケティングにも生きていると思います。
SNSでメッセージを発信するときに、自分自身の見せ方をすごく意識しなくちゃいけないと思うんですけど、それはダンスも同じ感覚なんです。
ダンスをしていたときも、ステージでどう観客に自分を見せるかを意識するので。
ー確かに伊藤さんは、SNSをすごく活用されている印象あります。
基本的なことかも知れないですが、ツイートやリツイートするときは誰に対してどういうことを伝えたいのか目的を意識するようにしています。
メディアに載ったら、感想をつぶやいてくれた人たちのツイートをリツイートして、PoliPoliのニュースを盛り上げていく工夫もしています。
僕個人だけでなく、会社としてもSNSマーケティングを意識しているので、メンバーに対して「これはどういう目的でツイートしたの?」って詰めて、ピリピリしたこともあります(笑)。そのくらい、SNSは重視しています。
「起業のほとんどが失敗に終わるのは知っています」
こういう風に喋るのって、難しいですよね。
僕、おしゃべり好きなので、頼まれたら取材でも講演でもペラペラ話しちゃうんですけど、ともすると「マウンティング取ってないかな?」って心配になるんですよ。
―いやマウンティングを取られている感じは全然ないですよ!とにかく「すごいな、私×4人分くらいの人生をもう既に生きてるな……」と、思っています。
なら良かったです。マウンティングを取るのも嫌だし、他人から取られるのも嫌だってすごい思うんです。マウンティング取ってくるような大人にはなりたくないですね。
―私も嫌です。逆に、こういう大人になりたいという像はありますか?
「なんで生きているのか」という質問に答えられるような大人になりたいですね。
―???
高校生の頃から「何のために生きてるんだろう」ってよく考えてたんです。それで、ベルクソンとかハイデガーの哲学書を読んだり。それでも答えはわからなかったですけど。
僕たちみんな、自分の意思じゃなく、生まれてきちゃった訳じゃないですか。
ただ子孫を残すために生まれたDNAの箱船なのかなと思うと、むなしくなったりしませんか?
―た、確かに。考えたことなかったですけど、そうですね。
でも、どうせ生まれたんだったら、意思を活かして自分の幸せを最大化したいんですよね。
まあだからこういう起業とかしているのかもしれません。
もちろん、起業は楽しいことだけじゃなくて、辛いことも多いので、矛盾はあるんですけど。
―ちょっと意外な一面な気がします。明るい人というイメージだったので、何か意外と暗いところもあるのかな?と思いました。
僕、人より悩みが多い方かもしれないです。ストレス対処のために、猫カフェに1人で行ったりしますし。
―不安になったりもするんですね……。
VCでインターンしていたので、成功する起業家が一握りなのも知っています。起業が失敗する人も沢山います。そういう人たちみたいに自分もなるかもしれないなっていう不安は常にあります。
数年後自分がどうなっているかも分からないですし。
でも、僕は元々、「自由に生きたい」というのが根本にあって、起業した今、なかなか自由に生きられていると思います。時間からだけはなかなか自由になれないですが。
しかしかといって、「みんな起業するべき」とも思っていません。
何か1つの生き方が他の生き方よりも良いってことは無いと思っていて、起業家でも、猫カフェの店員さんでも、大企業の社員でも、人ぞれぞれ自分の価値観に沿って生きる方が素敵だなと思います。
ー私、伊藤さんが19歳だと知った時、「19歳で起業している人もいるのに、私は人生で何しているんだろう」とちょっと劣等感も覚えたりしてました。でも、伊藤さんみたいな人が、「どの生き方も良い」と言うのを聞くと、何か安心もします。
起業ブームですけど、僕個人としてはそれぞれ好きなように自由に生きるのが1番だと思っています。
僕もPoliPoliのメンバーも社会不適合者が多くて、「社会に自分を合わせる」よりも「社会が自分に合わせに来て」というスタンスなので、そういう人たちには起業が合っているのかもしれないですね。むしろ、それ以外の生き方の方が難しいのかな。
大変なことも多いですが、今はPoliPoliに全力を尽くす日々です。
思わぬ方向に進んでいったインタビュー。
明るくて人見知りも全くせず、頭も切れる伊藤氏。
しかし、その裏には、人生の意味について熟考したり、マウンティングをしていないか気にしたりするような繊細さが潜んでいるとは想定外だった。
大人の反対意見をものともしない強気と、人を気遣う優しさを兼ね備えた伊藤氏のこれからに期待だ。
絶妙なバランス感覚を持つ伊藤氏が、日本の政治を変える日も近いのではないだろうか。