Beauty Tech Companyと考える物流の未来  L’Oréal Supply Chain Workshop開催レポート

2019年11月5日、新宿区の日本ロレアル(以下:ロレアル)本社にて「Beauty Tech Companyと考える物流の未来 L’Oréal Supply Chain Workshop」が開催されました。ロレアルが重視する「サプライチェーン」に興味がある学生さん24名が参加。理系6割、文系4割というバランスで、熱いディスカッションが繰り広げられました。

業界内世界NO1企業における日本の立ち位置と今後

まずは人事本部・採用マネージャーの梅原康太さんより、会社説明が行われました。

「ロレアルグループは、ユニバーサリゼーションという戦略を掲げ、その国特有のニーズに沿ったコミュニケーションや製品を大切にしているのが特徴です。なかでも日本ロレアルは、ロレアルグループの戦略的な創造拠点としての重要な役割を担っており、 アジアで初の研究拠点として開設したほか、日本以外の国向けにも製品を製造する工場を擁しています」

「これまで、Eコマースでの化粧品の需要率は伸びないと言われてきました。しかし、技術の発達により、世界の化粧品市場のEコマースの伸び率は昨年度比+25%(2018年実績)となっています。VUCA(ブーカ)と呼ばれる複雑性が高く変動的な社会環境の中で、消費者はEコマースによるショッピングを楽しみ、 サプライチェーンはそれを最適化していかなくてはなりません。デジタル化に柔軟に対応する一方で、サステナビリティも意識したビジネス展開が求められるなか、サプライチェーン職の重要性は今後ますます高まるはずです」

現場スタッフによるリアルな「働き方とやりがい」の話

サプライチェーン職で実際に活躍している猪鼻さんから、具体的な職務内容や普段の働き方について説明がありました。

「ロレアルのサプライチェーンには、さまざまな部門があります。担当する職種によってデマンドサプライプランニング、リテールサプライチェーンカスタマーケア、フィジカルディストリビューションなど細かい部門に分かれています。サプライチェーンは、メーカーの血流を担うと言われている部分です。お客様が求める商品を期日までに必要な個数を、最高の品質で届けるのがミッションです。商品の調達から在庫管理、受注、配送まで、モノの流れを一貫して担当するのがサプライチェーン職であり、品質を担保するのも大事な仕事です」

「また、働き方についてはリモートワークも積極的に活用しています。自身がオフィスにいなくても、チャットや会議をパソコンで繋いで行うビジネスチャットツールを活用して 参加するなど、フレキシブルに仕事をこなすことで、理想的なワークライフバランスを実現することも可能です。そして、キャリアにおいても決まったキャリアパスはなく、会社のニーズ、自身のキャリアに対する考え方、そして現職での成果などを加味しながら、サプライチェーンからマーケティングへ行く人や、ファイナンスからサプライチェーンへ異動する人もいます。日本ロレアルのどの職種にも共通しているのは、仕事内容や働き方に多様性があることと、デジタル的な分析とアナログ的な人とのコミュニケーションがあるということです」

課題発表

いよいよワークショップが始まりました。今回は、フィジカルディストリビューションという部署で、実際に起こっている課題をどう解決するかがワークショップのテーマです。フィジカルディストリビューションは、一カ所の倉庫に集められている全商品について、入荷から出荷までを管理する部署の名称です。具体的な課題内容は、「メーカーとして、2020年に配送コストを10%削減したい。配送業者と良いパートナーシップを築きながらコスト削減を実現するためにはどうすればいいか?」というものです。このテーマについて実際の事業における前提条件が学生に提示され、それを踏まえながら、解決策を考えていきます。

ワークショップ開始

今回のワークショップは4人1組のチーム戦で行われました。話し合い25分、プレゼンテーション6分という限られた時間の中でお互いにアイディアを出し合います。みなさん活発に議論するだけでなく、手を動かして試算しながら効率的な解決策を考えていました。ただ意見を出し合うのではなく、問題を解決するための効率的な方法を、チームで協力しながら考察することが重要となります。また、論理的根拠を持ちつつアウトオブボックスな思考を推奨されるのがロレアルならではの特徴で、右脳と左脳のバランスを保ったイノベイティブな提案を求められます。

プレゼンデーション


プレゼンテーションでは、それぞれのチームから興味深いアイディアについて発表がありました。

「再配達を減らすために、注文時に受取日時の指定ができるようにする」

「1箱あたりの製品個数を増やすために、セット販売にする」

「まとめ配送ができるように、会社や大学でグループ購入ができるようにする」

「ECサイトの各ブランドを統合して一括購入できるようにする」

「配送にかかる人件費を削減するために、会社や駅に宅配ボックスを設置する」

学生さんの発表を聞いた社員の方からは「いいアイディアをもらって、良い刺激になりました。”どう削減するか”を”どう投資するか”という観点から見るとまた面白いな、と感じました」と感想を頂きました。

最後に再配達率を下げるため、日本ロレアルが実際に取り組んでいる内容について説明がありました。

「現段階ではコンビニでの受け取りや、QRコードからの受取日時指定といった取り組みを検討しています。今後は、オンライン注文の店頭受け取りを可能にする、配送方法の選択を可能にする、自社倉庫から直接配送できるようB2C配送の最適化を検討する、不在配達を減らすことでCO2削減を目指すなど、環境への配慮を加味した施策にも挑戦していく予定です。」

質疑応答

ワークショップの後、質疑応答が行われました。学生さんが疑問に思ったこと、聞いてみたかったことを社員の方に直接質問します。

Q.どのようなデジタルツールを利用していますか?

A.需給予測するforecastingツールや、それに基づいて供給計画を最適化するツール、店舗ごとに在庫を見ながら補充計画を作っていくツールなどを活用しています。かつてはエクセル管理、FAX受注という時代もありましたが、現在は「化粧品業界界でデジタルの先駆者になる」という目標を掲げ、最新デジタル技術を積極的に取り入れています。

Q.現場での課題解決方法を教えてください。

A.たとえばフィジカルディストリビューションでは、3つのチームに分かれてマネージャーと社員が共同で問題提起し解決する仕組みができています。倉庫のコストデータを毎月把握しており、何かあればすぐに原因究明して改善プロジェクトを立ち上げます。ただし、ビジネスの現場では目の前の課題を解決して終わりということはまずありません。トレンドがある分野ですし、常に探究心を持ってPDCAサイクルを回し続けることが必要です。

Q.地震や台風など災害時の対策は?

A.公共交通機関の計画運休などを見てもわかるように、時代の流れはより安全性を重要視する方向に動いています。先日の台風時には、被害が出そうな週末に備えて金曜日にオーダーをストップし出荷データを作らないという対応をしました。BCP(事業継続計画)としては、関東で災害があって本社が機能しなくなった場合には、サプライチェーンの一部メンバーが大阪オフィスにすぐに移動し、いち早く全国の出荷ができるような計画になっています。天気でも物流でも、forecast(予測)できるものはそれを見越して対策を打つことが大事です。

Q.ロレアルのサプライチェーン職ならではの魅力は?

A.「サプライチェーン職でできる仕事が非常に広い点です。キャリアが多岐にわたっていて、自分の希望を伝えればきちんと尊重してくれます。入社して一番良かったなと思うのは、起業家精神を大切にしていて、社員のアイディアを受け入れてくれるところ。自身が周囲を巻き込み、提案し、承認がとれていけば、実行するところまでやらせてもらえるので大きな達成感を感じます」 「私は大学院では数理ファイナンスを専攻していました。その私がサプライチェーン職を選んだのは、おそらく一番知的好奇心、知的向上心が満たされる仕事だからです。ただ数字を見るだけでなく、その背景にあるものを自分で深く掘り下げたり、いろんな領域と関わりながら仕事ができるのが非常に面白いです」

まとめ

「Beauty Tech Companyと考える物流の未来 L’Oréal Supply Chain Workshop」は、以上で無事終了となりました。学生さんたちの熱気もさることながら、日本ロレアルの現役社員さんたちが真剣に学生さんと向きあう姿が印象的で、今後ますます重要性を増すであろうサプライチェーン職に対する強い思いを感じました。学生さんたちも、実際に働いている現場のことを知りたいと熱心に質問をしており、就職活動に真剣に取り組んでいる様子が伺えました。ワークショップという形式で実際の仕事を垣間見ることができたのは、学生さんたちにとっても、貴重な経験になったと思います。今回のワークショップをきっかけに、サプライチェーン職の未来を担う人材が育ってくれることを期待しています。

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