東京大学大学院からIT企業、外資系コンサルへ。スペシャリストとしてのファーストキャリア、ジェネラリストとしてのいま

「上位理系学生が活躍できる職場」として、外資系コンサルティング会社が注目されている。今回は、2018年から”ヨーロッパ最大の戦略ファーム”として知られるローランド・ベルガー社で、シニアコンサルタントとして活躍する石村氏にお話を伺った。石村氏の考える「修士・博士学生のキャリア」「ファーストキャリアとしてのコンサルタント」「これからのAI×コンサルティングの関係」とは?

学生時代「枯れそうな森の予測」でテクノロジーの面白さに出逢い、ITコンサルティング企業へ

私の学生時代のお話を少しさせていただくと、東京大学の農学部からそのまま大学院に進みました。大学院では中でも情報系の研究室に所属し、人工衛星の画像を解析して、枯れそうな畑や森を予測するインデックスをつくっていました。画像処理・予測指標をつくる中で「テクノロジーの可能性」の面白さに出逢いました。

その後、ファーストキャリアとして、2012年、IT系のコンサルティング会社に進み、AI・ビッグデータ活用の支援に携わりました。身近なものとしては、例えば、車の運転ログデータから、安全運転やエコ運転のアドバイスをする指標や、運転の仕方によって向いている車をレコメンドする仕組み等をつくりました。専門的なものとしては、製造業における製品出荷前の検査ログデータから、出荷後に壊れやすいものを予測する指標等に関わりました。

ファーストキャリアでは、国内に留まらずシリコンバレーでの駐在も経験しましたが、切り出されたデータ分析だけではなく「もっと上流から参画したい」という想いを胸に、2018年から当社のメンバーになりました。

スペシャリストとしてのファーストキャリア、ジェネラリストとしてのいま

前職では、プログラミング・統計などのハードスキルがダイレクトに活きていました。自分でコードを書いてデータを触るので「何が起きているか?」つまり、AI・ビッグデータ活用という文脈で「何がどのくらいの精度でできているのか?」「どのくらいの時間がかかるのか?」を肌で感じることができ”自分でものを作っている”というやりがいはありました。

他方で「ビッグデータを使って〇〇してください」という切り出された課題テーマに取り組んだものの、当該テーマを含むプロジェクト全体が頓挫し、”自分のつくったものが使われない”という現実も経験しました。

現職は、より戦略寄りのジェネラルなコンサルティングなので、前述のハードスキルというよりは、院生時代の仮説検証サイクルや、タイトな学会発表、論文向けのタスク管理、教授等との議論を通したフィードバック引き出し・合意形成の経験などが活きています。

当社は、一定の職位までテーマ・業界とも広く横断的に経験する方針のため、特定領域に絞らず広範に対応できます。私が携わったテーマとしては、中計策定、新規事業創出、グローバル市場調査、リストラクチャリング、BDD、PMIなど。業界は、製造業、素形材、ヘルスケア、消費財、官公庁、金融(ファンド)などです。どれも上流から参画するため、意義のあるストーリー・計画をお客様と一緒に描くことができます。社会に役立つことへ”ビジネスとして携われること”は、まさに「挑戦しがいのある仕事」と言えます。

いまは「デジタル・AI」が全く絡まない案件は少なく、特に新規事業関連の案件では先進技術・ツールの活用を検討される傾向にあります。当社は、尖った強みを持つ25超の外部プロフェッショナルと協業する「価値共創ネットワーク」を持ち、AIに係るハンズオン支援やプロダクト提供も担うプレイヤーと協業し、戦略検討から実装まで担うコンサルティングにも携わることができます。

修士・博士学生のキャリアの考え方「キャリアのスタートはどこがいい?」

修士・博士学生のキャリアとしては、技術力・起動力のあるスタートアップで、培った専門性を活かしつつサービス・プロダクトを開発・提供していくことが、最近のトレンドと見ています。そういった場所で活躍するにも、まず当社のような戦略ファームで、ビジネスの作法を身に着けるのも有効な方法かと思います。

当社で積める市場調査や事業計画策定などの経験もそうですが、対大企業においての物事の進め方、関係者の力学や気にするポイント、売り込み方、予算の取り方など、ビジネスの作法を身に着けてから、専門分野で力を発揮すると、技術面・ビジネス面でのバランス感覚に優れた状態で、キャリアを積んでいけるのではないでしょうか。実際、私の周りにもこのようなキャリアを積んでいる仲間が多いです。

修士・博士学生のキャリア形成には、広い視野が大切だと考えています。気を付けたいのは、専門性がしっかりしているがゆえに、研究室の推薦・先輩が就職した先などを中心に”限られた選択肢”の中で、視野が狭くなることです。

理系の中長期的な強みとしては『自分の専門分野に立ち戻れること』ではないでしょうか。例えば、当社のような戦略ファームで、経営企画の経験を積んだあと、データサイエンティストの専門家になるパターンもあります。これは修士・博士時代に培ったバックグラウンドがあるからこそ、実現できるキャリアです。

立ち戻れる場所「専門分野」を持っていることは、キャリア形成のうえで大きな強みです。つまり、新卒で入る企業としては、ジェネラルな企業を選んでも、戻る道があるという考え方です。ジョブ型雇用でのキャリアを考えると、大手有名企業の逆推薦から選ぶよりも、中長期的に見て「本当にやりたいことなのか?」をしっかり見極め、自分にフィットするファーストキャリアを選択することが、これからの時代には必要だと見ています。

これからの「AI×コンサルティング」の関係

2015‐16年頃までは「データを使って何ができるか?」と小さく試すような世界でした。いまは、AIを使うことがビジネス上の施策としてある程度”当たり前”として浸透してきているように見ています。プロジェクトの中でも、例えば、ウェブサイト上のチャットボット、レコメンド、マーケティングオートメーションツールの導入などは、お客様の方からも既に検討中の施策案として提示されることがあります。

背景としては、外部のベンダー企業・ソリューション企業が、新たに組み込みやすいプロダクトとして実績あるものをSaaS的に提供できるようになってきているところが大きいのではないでしょうか。他方、企業の中にある当該企業固有のデータ・固有の業務に係る分析・活用までは、まだ実現しきれていない印象を持っています。

今後は、各企業が持っている固有データの内部活用が進むと見ています。例えば、各社独自の使われ方をする機械の予防メンテナンス・需要予測や、独自性ある会員制サービスにおける退会予測・リテンション施策レコメンドなど、課題としては昔からあったものの、各企業の持つ内部データを有効活用しないと、実装できなかったものです。

それぞれの企業のデータ分析官・データ活用チームと「ビジネス上のイシューとして何が必要か?」を考え、事業の成長予測を観るプロジェクト計画を立てるなどの場面が、これから益々増えてくるでしょう。

お客様の社内で、プロジェクト計画の必要性を説得するのもコンサルタントの仕事です。その時に「ある程度、専門知識を持った状態」で話ができること、”いかに上手く橋渡しができるか”は、ひとつのインパクトだと思います。

多様性から生まれる”知のアップデート”。「コンサルティング」という仕事を通じて、実現できるものとは?

当社の強みのひとつは、ジェネラルに色々な専門性を持つメンバーで構成されていることです。新卒・キャリア採用の比率は半々くらい、新卒社員も、院生・学部生・海外の大学まで、出身校も学部も多様なメンバーで構成されており、学生時代の経験を含め、それぞれが個々の多様な力を発揮しています。多様なメンバーとの意見交換から生まれる”知のアップデート”は非常に重要だと思います。

お客様は、それぞれの専門分野の素晴らしい知見を蓄積されている方ばかりです。その中でも、彼らが気づかないチャンスがあります。それを専門領域の外側にいる私たちが見つける。コンサルタントとは、お客様自身が気づけない部分をしっかりアドバイスすることで、彼らのビジネスを最大化できる仕事です。

私たちコンサルタント自身が”知のアップデート”を続けることを忘れずに、お客様が気づかないチャンスを、外側からアドバイスし、彼らのビジネスを最大化していくには「ビジネスの可能性」への探求心が必要です。「テクノロジーの可能性」に面白さを感じ、探求心を持つ学生は、この仕事にフィットすると思います。

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