Peakers Hitachi Cup – 電力消費量予測ハッカソン-メンターインタビュー 株式会社日立製作所 但馬 慶行さん


2019年9月13日、株式会社日立製作所とPeakersの共同開催でPeakers Hitachi Cup – 電気消費量予測ハッカソン- が行われた。本イベントは、コンペティション形式の個人戦ハッカソンだ。課題はヨーロッパ各国のヨーロッパ各国の電力消費量のオープンデータを用いてモデルを作成し、指定された1カ国の消費量予測を行うというもの。参加者たちはあらゆる角度からデータの処理方法や分析手法を検討。丸一日かけて自分自身のベストスコアを磨き上げ、数パーセントの精度を競い合った。

本ハッカソンに技術メンターとして参加したのが、日立製作所研究開発グループシステムイノベーションセンタ・システムアーキテクチャ研究部の但馬 慶行さんだ。研究開発グループの研究員として、論文の学会発表等も行っている。当日はメンターとしての高度かつ誠実なアドバイスはもちろん、参加学生と技術的な話題で談笑する姿も。但馬さんの穏やかな雰囲気に、参加者も安心して質問を投げかけている様子だった。

本ハッカソンへの参加で、驚いた点と「やはり」と思った点が両方あったという但馬さん。ハッカソンの感想や上位入賞のポイントともに、日立製作所の研究員としてAI事業にかける思いなど、お話を伺った。

今回のハッカソンの感想をお聞かせください。

学生さんに対する感想はひと言、「すごいな」です。これだけの短い時間で、みんなPythonはもちろんのこと、LightGBMというライブラリもサラッと使って、工夫しながら結果を出しているのには本当に驚きました。能力も意欲も高い学生さんばかりで、メンターは参加しなくてもよいのではないかと思ったくらいです。

深い話を聞きにくる経験豊富な人もいれば、こういう場に初参加の人もいて、みなさん純粋にこの場を楽しんでいました。こういう素の学生さんの姿を見ることができたのは、とても新鮮でしたね。気さくに会話しながら、学生さんの本音を聞くことができる貴重な場だったと思います。

個人的には、「やっぱり」と思った点が2つあります。まず、AIツールもそれを使える人財も当たり前に揃う時代になったこと。僕が学生の頃とは、もう全然違いますね。もはやWord、Excel、PowerPointだけで仕事になるという時代ではないと、つくづく感じました。もう一つは、コンペ形式の良さ。同じ課題に大勢で取り組むことで、こんなにいろんな解決策が見つかるものなのですね。

上位入賞された方は、どのような点が好成績に繋がったのでしょうか?

上位者に共通していたのは2点、時系列特性を読むことと適切な欠損処理を行っていたことです。まず、時系列データの予測ですから、時系列特性を取り扱うことがポイントになります。冷暖房、特に冬の電力使用量が多いことを加味して、月という情報に直して変数を持たせたり、1年間という観点でサインカーブ・コサインカーブという形で特徴量化して数値を持たせたり。これは上位者全員がやっていました。

さらに欠損値処理も行った人は、よりハイスコアになりました。学習データと訓練データで被っていない曜日があることに気づいてざっくり落としていけた人は、よく検討できていたのではないかと思います。「ハッカソンやコンペではきれいなデータが比較的多いから、今回のような現実味のあるデータはかえって面白かった」と言う声もありました。そういうリアルなデータをちゃんと処理できたというのがポイントだったと思います。

1位の方は、さらにそこから頭一つ抜きん出ていましたね。データには各国の政府が算出した消費量予測値のカラムがあったのですが、この予測値の精度があるときから良くなっていることに気づいて分析に組み込んでいました。これには僕も「おーっ!」と感心しました。モデルに関しては、時間が限られていることもあって、予想通りほとんどの学生さんが勾配ブースティングに特化。ディープニューラルネットを使った方もいましたが、残念ながら時間がなく十分な結果が出せていませんでした。十分な時間があれば、ディープニューラルネットとLight GBMのような勾配ブースティング手法のアンサンブリングをガンガンかけるという方法も取り得ましたね。

貴社のAI事業に対して、但馬さんはどのような思いをお持ちですか?

現在のAI業界はAIの芽を作るフェーズ、データ分析で何ができるのかを模索している段階です。その知見を統合してどういうアクションにつなげていくのか、今後のAIはそこをめざしていくことになるでしょう。このような流れの中、技術を社会に生かすという視点を持ちつつ、データを生み出す会社とデータを分析する会社がともにwin-winになるビジネスを模索するのが、我々のミッションだと考えています。

本ハッカソン参加者のようなAIを学ぶ学生さんが貴社に入社された場合、どんな活躍をしていただきたいですか?

“技術のキュレーター”になって欲しいですね。最新技術への感度を常に高く持ち、お客様からの課題に対して自分ですぐに行動できる人。机の前に座ってじっとデータを眺めているのではなく、自分から動いて最先端の技術を使いこなす人になって欲しいです。人とモノ、バーチャルとリアルをつなぐCPSの分野で一緒にがんばっていければと思っています。ぜひ、世界一のデータサイエンティストになってください!

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