AI・デジタル研究者の、データによる価値創造プロセスを体感。日立製作所主催2Daysハッカソン 優秀者インタビュー 新海公章さん–関西学院大学 森田堅斗さん–金沢大学

新海公章さん
関西学院大学大学院 理工学研究科 人間システム工学専攻 修士1年
森田堅斗さん
金沢大学大学院 自然科学研究科 電子情報学専攻 修士1年

『日立製作所のAI・デジタル研究者と学ぶ課題解決型オンラインハッカソン』が2021年10月23日-24日、オンライン開催された。

本イベントは「協創」の現場に携わる日立製作所 研究開発グループの現役AI・デジタル研究者と一緒に、価値創造のプロセスを学べるプログラムだ。「顧客課題の解決」をテーマとし、仮想の顧客の要望と与えられたデータを元に、ニーズの深堀りや仮説立案、課題抽出を行い、それらを元に施策提案を行った。

コーディング力や機械学習の知識だけでなく、さらに一歩先の「データによる価値創造」をめざし、参加学生の皆さんで競い合った。

主催の日立製作所は社内に高度な専門性を持つAI・デジタル研究者、データサイエンティストを多数擁している。国内外の様々な分野の顧客とタッグを組み、デジタルソリューションサービス「Lumada」を中心にデータを用いた社会イノベーション事業を展開する。

英国におけるエネルギー消費の最適化、公共交通機関における混雑回避アプリケーションの開発など、「協創」の事例は多岐に渡る。

そのような高度な専門性と高い技術力を有した日立製作所 研究開発グループの現役AI・デジタル研究者がメンターとして参加。参加学生がわからないことや、つまずいたことがあった際は、いつでも質問できる環境が整えられた。

学生たちは、研究者としての考え方や立案の方法など、メンターと直接交流することによって得られる知見に触れ、自身の成長を実感する2日間となった。

最優秀賞受賞者:
イベントでは、全体を2つのリーグに分けて評価を行い、それぞれのリーグで最優秀者が選出された。

リーグ①では関西学院大学大学院理工学研究科 人間システム工学専攻 修士1年 新海公章さん、リーグ②では金沢大学大学院自然科学研究科 電子情報学専攻 修士1年 森田堅斗さんが最優秀賞を受賞した。

優秀な成績を収めたお二人に、「ハッカソンの印象は?」「好成績につながったポイントとは?」等、お話を伺った。

―普段の研究内容について教えてください。

新海さん:
私は情報系の学科で感性工学を研究しています。感性工学とは人の目には見えない価値観を科学的手法に基づいて定量化することで、製品やサービスに応用していく学問です。私の研究テーマは一人一人の好みやニーズに合ったプロダクトデザイン手法を開発することで、モノから抱く印象の関係性をモデル構築する研究を行っています。

森田さん:
私は医療分野に人工知能を応用する研究をしています。健康診断で得られる健康状態を表すデータ、あるいはMRIスキャンで得られる医療画像を使用して、どのような病気を発症しているのか、または将来どのような病気を発症するのか予測する人工知能構築の研究をしています。さらに、人工知能がなぜそのような予測をしたのか、患者さんが納得できるような説明性が高い人工知能の構築に注目して研究を進めています。

―ハッカソンに参加してみていかがでしたか?

新海さん:
ハッカソンへの参加は初めてでした。参加前は皆が競い合うイメージを持っていましたが、実際に参加してみるとアライアンス制のチームで切磋琢磨しながらアウトプットに繋げていく形で、新しい印象でした。初めてで不安もあり、周囲の技術力にも圧倒されましたが、その中でも自分のできることを全てやり切れるように意識した結果、良い成績を修めることができたと思っています。

森田さん:

私も初めての参加でした。AIを使って何らかの予測モデルを作り、予測精度を競うのかと思っていましたが、実際はデータ分析した結果を解決策立案まで結びつけるという課題でした。今まで経験したことのない内容でした。競うものも数値ではなく、発表の成果や提案資料のクオリティだったので、参加前のイメージとは異なっていましたが。提案資料作成はあまり得意ではないと思っていましたが、今回優勝することができ、自分でも驚いています。「案外、企画提案が得意なのかもしれない」と自分自身の新たな側面を発見できました。

―仮想の顧客の要望と与えられたデータをもとに施策を提案してみて、いかがでしたか?

新海さん:
テーマに解釈の自由度がある中で「顧客に納得してもらう」「論理性があり顧客にメリットがある提案」を意識しました。私はアプリを提案したのですが、顧客だけではなくユーザーの快適性や安全性を意識した提案をしました。

森田さん:
私は実際に顧客へ見せることを想定した発表資料になるよう工夫しました。

―好成績を修めましたがどのような工夫をしましたか? 最も優勝に繋がった作業や苦労した点について教えてください。

新海さん:
最も力を入れたのはニーズを探すところです。逆に力のボリュームを下げたのはデータ分析です。時間が限られた中でデータ分析に集中しすぎると厳しいのかもしれないと初日に判断し、できるだけデータ分析をスムーズに終わらせ、次の提案につなげようと意識し、ニーズを解決できる提案手法を意識して作業しました。

森田さん:
私はニーズ検討で一番苦労しました。安全な利用の定義付けにおいて、独自性やユニークな定義をつけたかったのですが「コロナ禍の安全利用とは?」に対して浮かぶアイデアが「混雑していない」「密にならない」などの普遍的な定義しか見つからずに苦労しました。最終的には普遍的な定義を突き詰めることにしました。また、施策立案において、自分がこれまで身につけた知見を活かして取り組めたことが優勝に繋がったと考えています。

―普段の研究開発での経験が活かされた部分はありますか?

新海さん:
感性工学は「ユーザーがどう感じるか」「使いやすいか」など、常に人に寄り添う研究です。どのようなところに使いやすいかと思うか?といった部分で強みを活かせました。普段は社会実装をする研究も行っているので、ユーザーが使いやすいシステム構築の経験をアプリに活かせたと思います。

森田さん:
先ほどと重なってしまいますが、立案にあたっては、研究等で得た知識を活用しました。具体的には、学部時代の卒業研究で「病気の未来予測」の経験があったので、未来予測に関するノウハウや機械学習モデルの知見をもっていました。地下道の混雑を予測できるシステムを提案したのですが、与えられたテーマを自分の得意なフィールドに持ってくることができた点がよかったと思います。

―主催企業の印象について率直な感想を教えてください。

新海さん:
参加前のイメージとしては「技術力が高い」「幅広い事業行っている」「エンジニア一人一人の技術に関する熱量が高い」といったものでした。実際にメンターの方からは、技術に関するお話をたくさん聞くことができました。さらに業務のやりがいについても(課題を通じて)触れることができ、仕事に対する熱量も感じられて、日立製作所のイメージがより良い方向の印象に上書きされました。

森田さん:
以前から技術力が高い企業だと思っており、イメージ通りでした。日立製作所の研究開発職は、大学の研究室のように論文を読んで新しい技術をつくっていくというイメージを持っていましたが、実際にはお客様との関わりが想像以上に多いことがわかりました。

―メンターさんの印象や役に立ったアドバイスについて教えてください。

新海さん:
どの方も物腰柔らかで、私のやりたいことを真剣に聞いてくださいました。もっとダメ出しされるかも……と思っていましたが、私のやりたいことに納得したうえで議論を進めてくださいました。課題解決の提案だけではなく、ビジネスにつなげるアドバイスをいただけたことが良い結果に影響したと思っています。ビジネス視点での提案が実現したのはメンターの方のアドバイスのおかげでした。

森田さん:
私は説明が下手な部分があるのですが、言葉足らずの説明でもメンターの方は言いたいことを理解してくださいました。メンターの方に進捗を踏まえた進め方の相談を実施した際、私が少し意味を誤認してフォーマット記入をしていたことに気づいていただき、軌道修正をしてくださいました。その指摘のおかげで優勝できたと思っています。

―今後、どのようなチャレンジをしていきたいですか?

新海さん:
今回は普段の研究で扱わないデータを分析することができました。今後もあらゆるデータや手法に触れ、様々なデータを扱えるエンジニアになりたいです。私は研究者になるのか就職してビジネスに携わるのか迷っている時期がありました。今回、本イベントに参加したことで「技術力は、社会実装されてはじめて価値が出る」と改めて感じました。社会に還元することで価値を生むために、技術を社会実装していく仕事に携わることが目標です。

森田さん:
直近ではKaggle(カグル)などにも参加してスキルを磨いていきたいです。キャリアプランはまだ漠然としていますが、現在、医療分野の研究をしているので、医療分野×AIの研究開発職に進めたらと考えています。さらに現在の研究とは別の視点で、暮らしの中での自動化(水回りの掃除や洗濯物をたたむなど)にも興味があります。将来的にはそういったシステムを作ることにも携わりたいと思っています。

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