人材不足のホテル業界に、即戦力となるAIチームメイトが現れた

宿泊施設の料金は平日休日や行楽シーズン、イベントなどによって変動することは周知の事実だろう。だが、この料金はどうやって決められているか、ご存知だろうか。実は宿泊施設のマーケティング担当者が行楽シーズンやイベント情報、周りの宿泊施設の料金などの情報をかけ合わせて変動させている。

そのためホテルのマーケティングには、専門的な知識を持ち、変わる市場にスピーディーに対応できる人材が求められている。しかし、人材不足により従業員が多様な業務を兼務しながら対応せざるを得ない状況などにある。またホテル業界には民泊という新たなライバルも登場し、マーケティング業務は複雑化している 。

CBREの発表(2018年1月)によれば、東京23区・大阪市・京都市の三大マーケットで2017年から2020年にかけて、客室数が訪日外国人客の増加の影響などもあり、38%増えると予想されている。しかし、増加するホテル数に対して人材の供給が追いついておらず、人材不足がますます問題となってくる。

そんな状況下、株式会社空が4月17日、AIがホテル市場分析を代行し、報告・提案を行う「エージェント型サービス」を発表した。

ツールではないエージェント型のサービスとは

空がサービス提供していた市場分析ツール「ホテル番付」、これをホテル・マーケティング業務の一端を担う市場分析エージェントとしてリニューアルすると発表した。

同社の松村大貴代表取締役は、ツールは数値やデータを届けるもの、エージェントは数値から分析結果を届けるものと前提したうえで、「一般的にツール型サービスには、①使いこなすために知識やスキルが必要、②使用中はほかの仕事ができなくなる、③得られる成果はユーザー次第――といった弱点があった。エージェント型サービスでは、①簡単なセットアップと設定で動作する、②見ていないときにも仕事が進む、③幅広い業界、領域に適用可能なコンセプト――という特徴がある。エージェント型サービスは『ツールと汎用AIの間』にあるサービスだ」と説明した。

リニューアルに伴い追加される「ヒントレポート」。変化が起きた事象を教えてくれる【同社提供画像】

限られたリソースを有効活用するための自動化

宿泊施設はそのエリア内で宿泊先を探している顧客が、ほかのホテルなどではなく、自分たちの宿泊施設をどうやって選んでもらうか、そこに注力をする。しかし、マーケティング担当者といっても専任ではなく、フロント業務や問い合わせ対応、メール対応、宿泊客対応など、さまざまな業務を行いながらマーケティング業務を行っている状況だ。

ホテルのマーケティング業務とは、情報を集めて、分析をしてそれを企画や値段設定などに反映していくことが一般的だが、ある施設では1日のうち、その業務に割ける時間は取れて30分、他宿泊施設との料金比較は3施設ぐらいしかできず、効果的な戦略を打っていくには十分な時間が確保できなかったという。

ホテル番付は、全国2万軒以上のホテル情報を自動調査し、周辺ホテルとの比較により、素早く客観的な評価や発見を得ることができる。これによりマーケティング担当だったユーザーは、調査・分析などの作業より大切である、ホテルの企画や戦略だけに限られた時間の中で注力することができるようになる。

松村氏は、「ツールは人の手が入って、はじめて機能するが、エージェントは人がいない時も働いている。つまり、ツール=従業員の作業時間だったが、エージェントは従業員が帰宅した後も動いている。これが大きな差となっている。日々の繰り返し作業はエージェントに任せて、人はよりクリエイティブかつワクワクする仕事へと集中できる。エージェント型『ホテル番付』はそれを実現させてくれるチームメイトだ」と話した。

この「ホテル番付」を今後は、キャパシティが決まっていて、日によって集客が変動するような業界、例えば駐車場や飲食店などへの横展開も視野に入れているという。

株式会社空の松村大貴代表。「見ていなくても情報分析」、「何か変化が起きたとき、必要なときにお知らせ」、これが新しいホテル番付だと話す

これまで、ホテル業界に提供されてきたのは、データ、数字といったツール。これからはエージェントがユーザーに代わって、その業務の一端を行うようになる。松村氏はこの変化について、「“吸引力がアップ”、“コードレス”、“軽量化”といっても人が動かすことが前提になっていた従来の掃除機がツール。エージェントは、人が動かす必要がないロボット掃除機のようなものだ」と例えた。

今後、ますます人の仕事を助けてくれるテクノロジーが登場していくだろう。逆に考えれば、人手不足という課題は、その課題解決を行う新しいテクノロジー誕生へのチャンスと考えられるのではないだろうか。「仕事の自由化は、あなたの自由化だ」、機械ができる仕事は機械で、人にしかできない仕事を人がする。これが当たり前になる日は近い。

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