2020年ICT×ビジネス×英語を掛け合わせる、規格外の最高学府現る!
AI、ビッグデータ、IoTなどの新しい技術やサービスの登場により、今後ますますIT活用の高度化・多様化が進展することが予想されている。しかし、日本では2019年をピークにIT産業人口は減少していき、また、IT関連産業従業者の平均年齢も2030年まで上昇の一途を辿ることが確実視されている。
経済産業省がまとめた調査(※1)によると、今後「量」・「質」ともに「特に大幅に不足する」と見込まれる人材は、「AI」、「ビッグデータ」、「IoT」、「ロボット」に関する人材という結果が出ており、そのほかにも「デジタルビジネス」、「クラウドコンピューティング」、「情報セキュリティ」などを担う人材も不足感が強いという結果となった。企業としては、不足するIT人材を補うために、高度なスキルを持った外国人人材の活用も検討する必要があるだろう。
今後、ビジネスを進めていくには「AI」、「ビッグデータ」、「IoT」などの先端IT技術は重要な鍵であり、必要不可欠なものである。先端IT技術に関連するビジネスは、グローバルでのトレンドであり、IT人材不足が謳われている日本がそのような世界の流れにどう乗っていくのか。そのニーズに応え、将来の日本を牽引していく人材を輩出すべく、「i専門職大学」(仮称、設置構想中)が2020年に開学する。新しい最高学府に迫る。
新しく創設される「専門職大学」
高等教育機関「i専門職大学」(※2)を開学する学校法人電子学園は1951年の創立以来、IT、ビジネス、ネットワーク・セキュリティ、電気・電子、CG、ゲーム、アニメ、デザインなど、さまざまな分野に数多くのエンジニア・クリエイターを輩出しており、卒業生は延べ11万人を超える。その電子学園が、世界を牽引するICT人材を育成するi専門職大学を2020年4月、東京都墨田区に開学する予定だ。
i専門職大学では「変化を楽しみ、自ら学び、革新を創造する。」を教育理念とし、ICT分野にフォーカスした職業教育を行っていく。AIやロボットが進化し、社会における将来予測が困難化している今、変化を楽しみながら、高度な専門性を修得・活用しイノベーションを起こすことができる人材育成を目指す。
電子学園i専門職大学設立準備室の宮島徹雄室長は、次のように話す。
「i専門職大学は今までの大学とは違います。ICTを基礎に社会課題の解決を目指すビジネスリテラシーを横断的に学んだ、将来的にリーダーとなるべき人材を輩出していく大学になります。今後のビジネスにおいて、ICTは避けては通れないものになっていくだけでなく、積極的に世界と関わっていく分野になるので英語教育にも注力していきます。教員は最先端企業の第一線で活躍するビジネスパーソンをはじめ、各分野のスペシャリストたちに教鞭を執っていただく予定です」
i専門職大学は日本の教育に対する挑戦
「i専門職大学ではプログラミング、情報処理などの基礎をはじめ、IoT、AI、セキュリティ、ビッグデータ、ブロックチェーンなどについても教育していきます。また、創造性・デザイン力のほか、マネジメントやポリシーなども身に付け、リベラルアーツを兼ね備えた文理融合の即戦力となるプロフェッショナルを育てます。卒業生が活躍する先はICT業界だけに限りません。コンテンツ、メディア、金融、製造、小売、物流、観光、教育、医療、農業など、あらゆる産業にイノベーションを起こせる人材を育成していきます」
またi専門職大学では、学生全員に1人600時間以上の企業インターンシップで学ぶチャンスを提供、実ビジネスの中でのプロジェクト教育を実施していく。
「今、日本が抱えているビジネス課題を解決できるICTとビジネススキル、グローバルで活躍できる人材が求められています。i専門職大学の学長に就任する予定の中村伊知哉先生は、『アメリカではICT分野において、大学が中心となって新しいビジネスが生まれている。日本の大学も革新的なビジネスを生みだす中心になるべき。そのためには産業界と連携して学生を育てていく環境が必要だ』と言われています。また、企業側も企業が求める人材が少ない。それは今の日本の教育に課題があるのでは、と感じており、そういった想いからi専門職大学の構想がスタートしました。i専門職大学は産業界と連携することにより、多数のインターン先とプロジェクトを用意、実ビジネスの中で学ぶOJT大学であり、プレ企業大学となります。i専門職大学は世界のどこにもない全く新しいスタイルの大学です」
実ビジネスの経験はインターンだけではない。
「『起業して成功する』、それは社会人になってからでも経験できますが、反対に失敗することは経験したくはありませんよね。i専門職大学では起業機会を全学生に提供します。これは成功を経験させるためではなく、失敗経験を積んでもらうためです。失敗してはじめて学びになることもたくさんあります。失敗は教職員でフォローしていくので、どんどん失敗してもらって、その経験を次に活かしてもらいたいと思っています」
中村伊知哉先生は、1984年ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。その後1998年 MITメディアラボ客員教授、2002年スタンフォード日本センター研究所長、2006年慶應義塾大学大学院教授を歴任している。
英語を活用しグローバルで活躍する人材
i専門職大学は英語による授業を充実させ、卒業生は英語でビジネスができるようなレベルまで達することを目標にしている。これは授業で「英語を教える」のではなく、授業を「英語で学ぶ」スタイルを目標にしている。
「留学生も積極的に受け入れていく予定です。それもなるべくいろんな国からの留学生を迎えたいと考えています。今後のビジネスにおいて、多国籍のチーム組織が編成されていくことが多くなっていくでしょう。そうなった場合、文化が違う相手と相互理解するためにはどうすればよいか、そういった部分を学べる機会を提供していきます。また、授業の多くはオンラインでの受講も可能で、世界の著名教授、研究者、専門家のバーチャル出講も揃えます。世界と通じるためには英語は必須のツールなのです」
日本を代表する企業などが協力・連携を表明
協力・連携を表明している企業や団体として、NTTドコモ、エボラブルアジア、カヤック、KDDI、グリー、SAPジャパン、Schoo、墨田区、セガゲームス、ソフトバンク、チームラボ、デロイト トーマツ ベンチャーサポート、TBS、ドワンゴ、パナソニック、富士通、吉本興業など、そうそうたる企業名が並んでいる。これら企業とは授業連携などで協力を進めていく予定で、協力・連携する企業や団体は今後も増えていくという。
「このような企業が手を挙げてくれたのは、i専門職大学学長予定者である中村伊知哉先生のネットワークによるところが大きいです」と宮島氏は話す。
東京23区で唯一大学がない区に開学、地域に開かれた大学を目指す
i専門職大学はビジョンとして、国内外トップクラスのICT企業と連携する場や、教育分野の構造改革特区を企画・設計する「知のハブ+教育特区」を掲げている。また本校舎が設置される墨田区において、産官学+金融の連携により、ICTを活用した地域創生プラン(墨田区モデル)を展開する「地域創生モデルの構築」といった独自の取り組みを推進していく。
「『知のハブ+教育特区』では、小中学校でのプログラミング教育での協力をはじめ、ICT 教育における提携学校を増やし、ICTの基礎を持ってi専門職大学に入学してもらおうという計画をしています。ほかにも例えばですが、学びたいという社会人への講座提供や高齢者向けにスマートフォン講座なども開催できればいいなと考えています。墨田区は東京23区内で唯一、大学がない区でした。i専門職大学がその墨田区に第1号大学として設置させていただくので、地域の人たちから愛される開かれた大学にしたいと思っています」
墨田区は中小企業が多い区。日本の経済を支えてきた中小企業にi専門職大学がICTを活用してイノベーションを起こし活性化していくことも計画しているという。
i専門職大学が中心となって、墨田区が日本の最先端ビジネスの生まれる中心地になる日も近いかも知れない。
(※1)IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 2016年6月10日
(※2)「専門職大学」とは、2019年度から設置される新区分の高等教育機関。大学制度において新たな教育機関が追加されるのは、1964年の「短期大学」の創設以来55年ぶりになる。教育内容は、卒業単位の3~4割程度以上が実習などの科目、さらにインターンシップを4年間で20単位・600時間以上履修することを義務付けており、教員も専任教員の4割以上を実務家が担うなど、より実践的なカリキュラムとなる。また卒業後には、大学と同じ「学士(専門職)」の学位が与えられる。