「安心・安全なおいしいものを届けるため」農・食・ITの融合で、食卓を変えてゆく

2018年2月6日、エンジニア向けの勉強会TechMashにて「日本の『食・農』をWebで変革しNight」を開催した。これまでITを活用することが難しいと考えられていた、食べ物の生産や流通という分野。今回のイベントでは、「食べ物の生産や流通」のあり方を変えようとしている登壇企業3社が、サービス開発・運用現場での取り組みなどについて語った。

日本における食農の課題として、農業は昔から儲からないことが良く言われていた。また、最近だと女性の社会進出や共働き世代の増加に伴い、なかなか食事の準備に時間が取れないという家庭も多いのではないだろうか。子どもにおいしく安全なものを食べさせたいと思っても、時間の問題だけでなく、食材・産地の偽造問題も心配の種だ。
こうした食の問題を解決しようとしているのが、オイシックスドット大地株式会社。1985年創業の大地を守る会と2000年創業のオイシックスが合併して誕生した。農業から考える課題と食卓のあり方から考える課題を一緒に解決していこうと歩み始めた同社は、現代の日本が抱える食農の課題に、どのように取り組んでいるのだろうか。同日は、同社のシステム本部長である伊藤秀文氏にご登壇いただいた。

TechMashでは「エンジニア×新規事業」や「エンジニア×IoT」など幅広いテーマで勉強会を定期的に行っている。

いまが熱い、ミールキットサービス

当社では、食べる側と作る側を繋ぐ仕組みを進化させようとしており、食に関する社会課題に対してビジネスの手法で解決していこうと考えております。メインターゲットは大地を守る会が50~60代、オイシックスが30~40代の共働き世代と異なっています。それぞれのブランドを維持していく中で2017年1月には、らでぃっしゅぼーや株式会社が子会社として加わることになりました。我々が展開しているサービスには、おいしいものをお届けしたいという想いが込められており、献立に悩まずに素早くおいしい料理を作ることができます。KitOisixというミールキットのサービスは、料理手順がわかりやすく、20分のうちに主菜と副菜が見栄え良く作れるため、特に注目が集まっています。この市場はすでに米国で伸びていて、当社でもミールキットに対する需要の高さを実感しているところです。

食農とITの融合によって、今までにないプラットフォームづくりを目指す

食農の流通事業における課題の1つは青果を扱うところにあります。青果はなんといっても劣化が早いです。他の物流事業とは異なり賞味期限があるので、長期間滞在として置いておくのが難しくなります。また、商品のばらつきがあるため、モノを買って流すという流通業のイメージとは少し違うのかなと感じますね。
2つ目の課題は、直接届けるBtoCサービスという点です。家族構成や年代、地域などによって食べるものが違ってくるため、お客様それぞれの好みも異なってきます。現在約18万人いる会員の方々にどのように適切なものをお出しするかを考えなければいけません。
そして3つ目の課題が利益率の低さ。ゲームやWebサービスとは違い、流通業なので思い切った投資がしづらいところが難しい部分ではありますね。

同社システム本部長の伊藤秀文氏

このような課題に対して我々はITを用いて解決しようと挑戦しています。まず青果を扱う時は、届けるところから逆算してパッキングし、時間との戦いをITによって解決しています。ミールキットのように、材料を切り、分けて個別に梱包しなければいけないといったシステムでも効率化できると考えています。BtoCサービスの課題に対しては、AIの力でそれぞれの好みに対してパーソナライズしています。毎週メニューを買っていただくというサブスクリプション型のシステムなので、AIによって提案するものを個別最適化していき、気が付いたら自分好みになることを狙っています。利益率の課題に対しては、廃棄をどう減らすか配送をどうするのかという部分に、データ分析で解決しようとしています。
今まで定期購入や青果の扱いをベースとしたプラットフォームはなかなかありませんでした。我々は日本における業界のプラットフォームになれるのではないかと思っていまして、それが今の会社およびエンジニアのチャレンジになっています。

10年後を考える

作り手が減っていく中でどう効率化していくのかという部分で、ようやくITが出てくるのかなと思っています。特にスマートフォンが出てきたことで、変わってきているなと感じますね。この間、インドへ最新技術の勉強会に行く機会がありました。インドはまだ発展途上国で貧困などの問題も深刻です。そんなめちゃくちゃな場所でも、インターネット環境が整っていて人々がスマートフォンから支持を受けていたのを目の当たりにしました。アナログだけれどもハイテクな世界を知り、ITの革命ってすごいなと感じましたね。今までの仕組みが新たに変わってきているので、そこでのITがうまく対応していけると良いのと思います。

イベント後半は登壇企業3社によるパネルディスカッションも行われた

ママさんエンジニアもいる開発チーム

当社のエンジニアにおける女性の割合は、20人中5人ほどです。食に関わる仕事なので、子どもがいる方で事業内容に共感して入ってくれた人も多いです。
開発の体制は、今はJAVAメインでやっておりビルドの部分ではどんどん新しいものを取り入れていきたいと思っています。サブスクリプションプラットフォームとしては、ビルド&デプロイとフロントとサーバサイドは切り離して、ロギングと監視はしっかりするようにしていますね。開発プロセスはきちんと定義してレビューをしていこうと思っています。一方でやりすぎると時間もかかるので、その辺のアジャイル開発はしっかりと行っていく方針です。
また、当社ではエンジニアも一緒にビジネスを考えることが多くあります。販売でどのような売り方をしていくかについてデータを持って考えたり、物流において今後ITでどのようにアプローチしていくか考えたり。1番大事だと思っているのは、考え方やスタンスですね。まだこれから新しいものをつくっていく段階なので、自分はこれしかやりませんというのは、難しいかなと思いますね。
当社の行動理念のベースはサッカーです。守備範囲はあるけれど、みんなで攻めてみんなで守ろうというように、エンジニアだからどうというよりは、いろいろなチームが一緒になって1つの価値をつくることに共感できる方と働きたいですね。

時代と共に変化する食のあり方に対して、それぞれに合った課題解決のサービスを提供しているオイシックスドット大地。農業側と食卓側の両面から、ITをもって解決していくという考えは、共感する人も多く、より良いサービス展開に繋がっていくのではないだろうか。

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