声優がもっと自分をアピールできる場を作りたい! ライブ配信可能なバーチャルYouTuberアプリに迫る
映画やテレビアニメ、ゲームなどにとって、欠かせない存在であるのが声優だ。その声優たちの声がそのままキャラクターの個性へと直結する。最近では、声優がアニメのテーマソングを歌って、ライブなどの音楽活動も積極的に行うようになっており、歌って踊れる「アイドル声優」というジャンルも登場している。これらはアニメ制作会社や声優の芸能プロダクション事務所が、戦略的に売り出していることがほとんどだ。
声優の仕事とはアニメーションと合わさって、初めて成立するもの。シンガーやダンサー、お笑いなどのジャンルのように個人で動画配信して世間にアピールすることは難しい。そこに1石を投じたのがいちから株式会社だ。
同社が展開するバーチャルライブアプリ「にじさんじ」は、iPhoneXのAnimoji(Face Tracking with ARKit)で表情認識し、Animoji機能と同様、iPhoneXの前面にあるTrueDepthカメラを使用しユーザーの詳細の表情を認識し、アニメキャラクターにリアルタイムで配置することができる。にじさんじで作られた動画はYoutube、Periscope、Mirrativなど、モバイル端末でのゲーム実況に対応しているサードパーティアプリに対応。このアプリを活用することで簡単にバーチャルYouTuberとしてライブ配信することが可能になる(現在、公式配信声優のみ限定公開)。
ニッチでコアなアニメファンが熱狂体験できる場を提供する
2018年2月8日、にじさんじの公式バーチャルアイドル8人が始動した。このバーチャルアイドル8人は動画投稿やライブ配信を始めている。バーチャルアイドルは妹系魔法少女「勇気ちひろ」、女神様「モイラ」、男の娘「鈴谷アキ」、バーチャルゲーマー「渋谷ハジメ」など、個性豊かなキャラクターが揃う。
同社代表取締役の田角陸氏は、「にじさんじの公式バーチャルアイドル8人が各キャラクターごとのYoutube、Twitterのチャンネルで動画投稿やライブ配信をどんどん行っていきます。今後もキャラクターを増やしていきますが、たくさんの方から認知いただくようなキャラクターではなく、さらにニッチでコアなアニメファンの方々が熱狂できるような多種多様なキャラクターを制作していく予定です」と話す。
同社では、このにじさんじの公式バーチャルアイドル8人の初期声優メンバー・オーディションを開催した。第2回オーディションも2月22日から開催している。
「声優志望の方、トークや声に自信のある方、バーチャルYouTuberに興味のある方にご応募いただきました。当社に所属してもらい、バーチャルアイドルの声優×インフルエンサーの領域というものを作りたいと思っています」
声優がもっと自分をアピールすることができる場を作りたい
声優という仕事は、アニメなどがあってようやく成立する世界だ。
「そのため、声優がアニメを自分で描いて配信していくことなどは難しく、声優が個人の力だけで有名になった人というのは今までいないんです。声優を抱える芸能プロダクションが一括で新人声優とまとめて契約します。声優としてのキャリアは芸能プロダクションに所属すること、そこからスタートしています。また個人で声優としてアピールする場もほぼありませんでした。当社のにじさんじでは、声優が簡単にアニメキャラクターに声をのせてバーチャルユーチューバーとして配信できるバーチャルライブアプリになります。今までは難しかった声優個人としてのアピールできる場がYouTubeをはじめ、Periscope、Mirrativで持つことができるようになるんです」
動画はライブ配信がメイン。にじさんじが目指すものとしては、いつも誰かがライブで配信しているという環境を作ることだ。ライブであれば配信する側と観ている側の双方向のコミュニケーションを取ることもできる。
「リアルタイムで双方向のコミュニケーションを大事したいと思っています。そのことから、配信するアニメにはストーリー性を持たせる必要はないと考えています。声優個人のバックグラウンド的なものなども盛り込んだ等身大で、かつユーザー目線のアニメで、“ファンの感情移入を促す”ことを目的としています。声優をはじめ、イラストを描いたイラストレーターに注目してもらうために、キャラクターを動画配信していくイメージですね」
いちから株式会社は「魔法のような技術で夢と幸せを提供する」をミッションに2017年5月2日に設立されたエンターテイメント系スタートアップ。古くからずっと変わらないアニメ制作業界の形態をリプレイスし、アニメ好きなユーザーに新しい価値を提供していくことを推し進めている。つまり、エンタメコンテンツを制作するためのツールを提供することによって、個人がエンタメコンテンツを作成し消費する「エンタメ経済圏」を加速させること。同社はそれを目指している。
「多くの人に観てもらうには視聴者の心に刺さるキャラクターを作らなければなりません。キャラクターによって人気が出て、声優の人気にもつながったらいいですよね」
技術の進化により、声優個人でのアニメーション配信が世界にできる時代になった。日本の文化として認知されるまでになった“アニメ”。今後も世界を圧巻させるアニメ文化の発信を期待したい。