【給与還元率83%】「エンジニアが搾取される業界が嫌で仕方なかった」元俳優が派遣エンジニアの働き方を変革!

『この会社に転職して、全く同じ仕事内容なのに年収が200万円以上増えました』

こんな風に書いてしまうと、嘘くさく聞こえるかも知れない。しかし、これはあるエンジニア派遣会社に転職したセールス・エンジニアの実際の声である。

彼女が転職した先は、社員給与還元率82~83%を掲げる、異色のエンジニア派遣会社―株式会社リベラルエンジニアズだ。

代表取締役の金子周平氏は、元SIerエンジニア。会社設立の背景には彼がエンジニア時代に感じた深い「憤り」がある。

「エンジニアが搾取されるこの業界の状況が本当に嫌で仕方なかった」

「会社員としてのセイフティネットは確保されながらも、フリーランスのようにエンジニアが主体的に働ける会社を作りました」

株式会社リベラルエンジニアズ代表取締役金子周平氏。俳優業を経て、SIerで10年間エンジニアとして働く。「フリーランスと会社員の間」の世界をエンジニアに提供するべく、起業。

給与還元率83%で、自由に働ける—「そんなうまい話があるのか?」と一抹の疑問を持ちながら、金子氏、そしてセールスエンジニアとして同社で働く半澤美由紀氏に直撃。すると、利益度外視で派遣エンジニア業界に一石を投じる、元俳優・異色エンジニアの強い覚悟が見えてきた。

派遣エンジニアの低い給料体系をぶっ壊したい。転職後、同業務でも年収230万増の秘密

———「給与還元率83%」って、かなり高いですよね。正直、会社はやっていけるのかなと疑問に思ってしまったのですが…。

金子氏「うちは、エンジニアは担当案件の売り上げの65%を貰うことが決まっています。それに、会社が提供する社会保険などを合わせて、還元率82~83%になっています。普通の派遣会社だと、還元率は50~70%くらいですね。派遣は、案件ごとに値段が決まっているので、経営者の取り分を増やせばエンジニアの取り分は減るし、その逆もまたしかりなんです。今までのエンジニアの派遣や業務委託は、経営者が一人勝ちな世界でした。経営者の取り分が多すぎて、エンジニアが不当に搾取されてきたんです。私もSIerでエンジニアとして働いていましたが、その搾取する構造が嫌で嫌で仕方なかった。待遇も良くないし、会社主体で仕事が決められて、自分主体で動けない。すごく窮屈な思いをしていました。
 それを変えるために、起業したので、社長として儲からなかったとしてもそれはもういいと思っています。それよりも、最初の理念を変えたくない」

———セールスエンジニアとして働く半澤さんは、実際に前のエンジニア派遣会社からリベラルエンジニアズに転職されてみて、いかがでしょうか?

半澤美由紀氏。派遣会社を経て、リベラルエンジニアズに転職。セールスエンジニアの傍ら、バーテンダーとしても活躍!

半澤氏「私はある大手メーカーに、リベラルエンジニアズから出向しているんですが、転職前と全く同じ業務内容でも年収が約230万円増えました。」

———え!!(金子氏含め、取材陣一同驚きの声)

「出向先の会社は好きだったのですが、出向元の派遣会社のお給料があまり多くなくて。当時、生活費の足しにと、週2でバーテンダーのアルバイトも始めました。
 お給料が上がっていいなと思うのは、経済的に余裕ができるだけじゃなくて、そのお金を使って自分のスキルを伸ばせることだと思います。例えば、私は今、個人輸入ビジネスの勉強をしていて、いつか自分でビジネスを始めようと準備しています」

金子氏「年収が230万円もアップするのはかなり多い方ですが、平均的にうちに来ると同じ業務内容でも100〜200万円ほど年収が上がるということがほとんどですね。」

———他社に比べてそんなに多く給料を払うと、同業他社から何か言われたりしませんか?

「すごく言われますね。同業の経営者から『そんなに払ってたらビジネスとして成り立たないだろう』とチクチク言われることもあります。他の会社は給料を低く抑えるためにいろいろとエンジニアに説明しているわけですから、うちが多く払っていると『払えるんじゃないか!』ってことになって嫌なんだと思いますよ。でも、うちが払いすぎというよりも、今までエンジニアが支払われなさすぎだったんだと思います。今の給料体系をぶっ壊していきたいですね。それでも低い給料しか出さない会社は、淘汰されれば良いんじゃないかと思っています。」

穏やかな口調でありながらも、話す内容は熱い。

仕事の仕方は完全カスタマイズ。業務委託で、畑仕事も

———SIer・派遣エンジニアの中には会社を辞めてフリーランスになる人もいると思いますが、なぜ金子さんはあえて「会社員とフリーランスの間の世界」を作ろうと思ったのでしょうか?

金子氏「僕自身、SIerエンジニアを辞めたいと思った時は、フリーランスになることも考えました。でも、フリーランスになると、社会保障など会社が与えてくれていたセイフティネットがなくなって、一気に不安定になってしまう。僕には家族もいますので。そういう風に、『会社員も嫌だけど、フリーランスも嫌』というエンジニアは多いはずだと気づきました。
 『ソロプレイヤーとして主体的に働きたい』、でも、『会社が与えてくれるセイフティネットやコミュニティも欲しい』——その両方が叶う場所があればいいんじゃないかと。」

———「フリーランスと会社員の間」の働き方が想像しづらいのですが、実際に皆さんはどのように働いているのでしょうか?

金子氏「バラバラですね。一人一人話し合って、カスタマイズして働き方を決めています。週5日現場常駐が基本ですが、例えば、運営スタッフは今育児中なので、だいたい10時半から17時半くらいで働いています。昔は、農家もしたいからということで、週3でエンジニアをしている社員もいました。今、彼はむしろ農家主体でやりたいということなので、弊社が持っている畑の畑仕事を業務委託で任せています(笑)。」

練馬に本格的な畑を構える。

半澤氏「ここは本当に自由ですね。他のビジネスをしている人も多いですし。私はリベラルエンジニアズの正社員として、週5で出向先の会社で働いていますが、今は本格的にバーテンダーのお仕事も副業として継続しています。アルバイトとして始めたバーテンダーに実はハマりまして…(笑)。契約の業務時間があるので、それに達すると平日でも早く帰ることも多いです」

都内老舗バーでバーテンダーとして働いているという。「仕事でお酒を飲めるのが最高です(笑)」

金子氏「会社組織としては、いわゆる『会社』のイメージとはかなり違うと思います。むしろ、職人が集まっている『ギルド』のような感じですね。社員も、パートナー(業務委託)も、皆それぞれスキルがある職人たち。会社はセイフティネットとして存分に利用してもらいながら、あとはソロプレイヤーとして場所も時間も担当する案件も自分で決めて自由に仕事をしてもらっています」

個性を育てすぎて、会社から社員が独立…?「それも応援したい」

———そこまで自由にすると会社に対してデメリットはないんでしょうか?

金子氏「社員が個性を出していくと、どっかに行っちゃうんじゃないかっていう不安がある会社も多いと思います。副業も解禁されましたが、なかなか広がらないのは、『自分のところで囲っていたい』という会社の思いも影響しているんじゃないでしょうか。
 実際に、うちから出て行く社員もいます。事業部内でECを始めるという約束で、ECの会社に出向していた社員がいました。でも、彼は『会社を出て、自分のECの会社を立ち上げたい』と。じゃあ、うちはそれを支援しようということで、このことがきっかけで社内での独立支援も始めました。」

———「元々社内で新事業を立ち上げる」という約束を破って独立する、となると喧嘩別れになりそうなものですが…。

金子氏「『いてもらう』とか、『いなきゃいけない』とかじゃなくて、会社を『いたいから、いる』という場所にしたいんです。だから、確かに最初の約束とは違うかも知れないけど、独立したいということならそれも応援したい。信頼関係ができていれば、たとえ会社を退職しても、また一緒にビジネス関係を続けたければ、続けられる。お互いwin-winの関係でいたいなと。」

出て行った仲間とも、ビジネスを続ける。

新卒から20代後半までExcel処理のみ―派遣会社が生み出す「売れないエンジニア」の末路。

———金子さんは俳優や選挙出馬のご経験がありますが、それが今も活きることはありますか?

金子氏「まず、芸能人のブランディングの考え方は、今もすごく役立っています。僕はもともと芸能事務所に属して俳優をやっていましたが、芸能人って自分の事務所・会社を全面に出していても、売れないですよね。『金子周平』という個人として認識してもらわないとだめです。
 それは、会社員、特にエンジニアにも言えることなんじゃないかと思っています。リベラルエンジニアズのエンジニアだから仕事が来るんではなくて、『○○さん』として仕事が来る―そういう『売れる芸能人』ならぬ『売れるエンジニア』を育てなくてはいけないと思います。」

———「売れるエンジニア」は、具体的にどうやって育てるんでしょうか?

金子氏「具体的には、常に今求められているスキルや技術を、私や運営スタッフから一人一人にフィードバックするようにしています。『この案件はスキルアップにつながると思う』と勧めたり。あとは、Sクラスの優秀なエンジニアたちにヒアリングをして、今何がエンジニアに求められているのかを探ることもあります。この業界もかなり情報がオープンになってきているので、『今こういうスキルを求めている案件が多い』ということを、主に運営スタッフが調べてくれています。」

———逆に、「売れないエンジニア」というのは、どういう人でしょうか?

金子氏「SIerや普通の派遣会社だと、エンジニアが担当する案件も会社の都合で決まることが多いです。そうすると、技術的に低いものしか必要としない案件ばかり回ってくるエンジニアもいます。 実際、最近うちに転職してきたエンジニアは、前社では新卒から20代後半までずっとExcelのVBしかやってこなかったそうです。途中で、『このままじゃだめだ』と思って自分でWeb系言語の勉強をしていて、うちに転職してきました。今ではRailsのエンジニアとしてスキルチェンジして働いています。
 彼のように20代の内に技術転換できる人は良いですが、ずるずると同じ会社に留まってしまう人もいます。そういうエンジニアが、30代、40代に他の会社に行こうと思ってもなかなか難しいですよね。そうなってしまう前に、うちのエンジニアには常に『売れるエンジニア』でいてもらえるようにしています。」

優秀なエンジニアこそ、○○○○を求めている

———好待遇であること以外に、金子さんがエンジニアと仕事をする上で気をつけていることはありますか?

金子氏「エンジニアに対して、好待遇であることももちろん大事ですが、それと同じくらい信頼関係も重要です。いま業務委託で、自社で受託開発してもらっているエンジニアは、かなりハイレベルのエンジニアが多いのですが、彼らはお金だけでパートナーになってくれている訳ではないと思います。彼らにとっては、うちが、『こういう値段で受託開発します。会社はこれくらい貰います、エンジニアの取り分はこれくらいになります』とすべてクリアに情報を開示して、信頼関係を築いていることが大きいと思います。
 社員に対してだけでなく、業務委託のパートナーに対しても、フェアな関係を築きたい。お互い腹の中を探り合う関係では、ストレスもありますし。透明性は大切にしています」

———いま派遣会社からエンジニアを要請するのではなくて、自社でエンジニアを雇って技術を内製化していく会社も増えてきていますが、それはリベラルエンジニアズにとっては脅威になりませんか?

金子氏「確かに技術の内製化は進んでいますね。でも、優秀なエンジニアの中には、1つの会社に限定されること無く、いろいろな会社・プロダクトに関わっていたいという人がいます。実際に2、3年で転職を繰り返しているエンジニアも多いです。転職ももちろん良いと思いますが、転職は時間も体力も取られます。派遣エンジニア、または業務委託のエンジニアとして色々なプロジェクトに同時に関わっていたいエンジニアはいるので、うちは彼らにとって良い場所であり続けるかなと思います」

派遣会社とエンジニアは、泥沼の共依存関係に陥っている

金子氏「今の派遣会社とエンジニアって、会社もエンジニアに依存しているし、エンジニアも会社に依存してしまっている、共依存の状態なんじゃないかなと思います。会社主体で低い給料体系で働かされるなど酷いことをされているのに、エンジニア側も自分で考えることなく、給料がただ微増していくことだけを待っている人が多いように感じます。」

———なるほど…。主体的に動けなくて悩んでいるエンジニアに対してアドバイスはありますか?

金子氏「リベラルエンジニアズに応募してみてください笑。とにかく、動くしかないですね。100点満点を目指して動こうとしたら、結果全然動けなくなってしまう。『今はまだスキルがないから』とか待っていたら動けなくなってしまいます。大体当ては絶対外れるので、いけると思ったことが上手くいかなかったり、無理だと思っていたことが案外簡単にできてしまったりします。100点満点を目指さず、動いてみて下さい!」

「60点でも70点でもいい、とにかく動くこと」

エンジニア派遣会社としてはおそらく唯一無二の自由な形態を持つ、リベラルエンジニアズ。

「基本的にはフリーランスのように自分主体で働いていたいが、会社がもたらすセイフティネットも欲しい」というエンジニアにとって、これ以上にぴったりの場所はないと感じた。

「働き方改革」が叫ばれる日本において、多種多様な働き方を促進するリベラルエンジニアズという現代版職人ギルドは、これからますます広がっていくはずだ。

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