スマートスピーカー普及でスマートフォンの使用頻度が初めて低下傾向に

iPhoneが2007年にアメリカで発売されて以来、スマートフォンは世界的に急速に普及した。総務省がまとめた「平成29年版 情報通信白書」によれば、個人のスマートフォンの保有率の推移(国内)は2011年に14.6%であったが、2016年には56.8%と5年間で4倍に上昇した。

また、モバイルによるインターネット利用時間(平日1日あたり)を2012年と2016年とで比較すると、全体で38分から61分と1.6倍に増加。その要因としてスマートフォン利用者1人あたりの利用時間も増加しているが、スマートフォン利用者の割合が上昇した影響が大きいと見解している。スマートフォン利用者に限ったインターネット利用時間(2016年の平日1日あたり)を年代別にみると、全体での平均は82分であり、10代および20代がそれぞれ143分、129分と顕著に長くなっていた。

昨今、スマートフォンの普及により「スマホ依存症」や「ソーシャルメディア依存症」という依存症も誕生している。この二つは関連性が強く、特に若年層の間では精神的な健康に対する深刻なリスクが懸念されている。

アクセンチュア株式会社は4月3日、世界19ヵ国の消費者2万1,000人を対象にオンラインで実施した「2018年デジタル消費者調査」(※)の調査結果について発表を行った。

この調査結果からスマートスピーカーの普及動向とともに、スマートフォンの利用において変化が見えてきたという。

リアルとデジタルがより融合した体験を望むデジタル消費者

アクセンチュアは、今回の調査から消費者がリアルとデジタルがより融合した体験を望んでおり、①スマートスピーカーによるデジタルとリアルを融合した新しい顧客体験、②自動運転への興味、③シンプルで魅力的なオンデマンド動画体験への期待、④拡張現実や仮想現実(AR/VR)体験への高い関心――の4点をグローバルトレンドにおけるデジタル消費者の期待として挙げた。

特にさまざまなサービスをより便利に利用するための新たな環境を生み出しているスマートスピーカーにおいては、「真にシームレスな体験」をユーザーは求めており、スマートスピーカーはその最先端にある。この転換期において、「いかにシームレスに融合したユーザー体験を開発・提供するか」は、業界全体の最優先課題だと強調した。

スマートスピーカーが新たなデジタル接点になる可能性

今回の調査によると、スマートスピーカーのユーザーの66%は「家庭でスマートフォンを使う頻度が低下した」と回答したほか、64%が「エンターテインメント用にスマートフォンを利用する頻度が低下した」と答えた。また、「オンラインショッピングで利用する回数が減った」や「通常の情報検索のためにスマートフォンを利用する回数が減った」と回答したユーザーはそれぞれ58%、56%と過半数を占めたことがわかった。

アクセンチュアの戦略コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク日本統括 マネジング・ディレクターの中村健太郎氏は、「スマートフォンの使用頻度が調査開始以来、初めて低下した」と述べ、用途によってはスマートスピーカーがスマートフォンに代わるデジタル接点になる可能性があると指摘した。

アクセンチュアの戦略コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク日本統括 マネジング・ディレクターの中村健太郎氏

スマートスピーカーの普及率は、世界中で急速に上昇する

調査対象となったすべての国において、スマートスピーカーの所有率は、母国語でのサービスの有無にかかわらず前年比50%超という大幅な伸びを見せている。また購入予定の人も含めた場合、スマートスピーカーの所有率(カッコ内は2017時点所有率)は中国(14%)、インド(14%)、アメリカ(21%)、ブラジル(13%)、メキシコ(15%)の5ヵ国で、2018年末までにオンライン人口の3分の1にまで達する見通しだ。日本の消費者の所有率は16%にとどまる見込みだが、若年層での興味・関心度が高いことから今後、日本でも急速な普及の拡大が予想される。また現在、スマートスピーカーユーザーの94%が製品に対して「満足している」または「非常に満足している」と回答した。

キャズム理論によると、普及率16%を超えると急激に新技術の流行は拡大する。近年では普及のスピードが加速しており、10%前後から急速に普及率が上昇する傾向にあるという。スマートスピーカーは既に多くの国で「キャズム」に達しており、また今持っていなくても、将来スマートスピーカーを所有・利用することへの興味は非常に高いことがわかった。

中村氏は、「自分の好みの曲を流してくれるなど、『自分』の行動に沿ったサービスに価値を感じている人が多いことがわかった。現在は音楽再生が主な利用用途になっているが、音楽再生以外の利用が拡大すれば一気に普及率は上昇するだろう」と述べ、日本での普及率が低いことについては、日本語に対応したスマートスピーカーが市場に投入されたのが2017年秋で、他国と比べて遅かったことを付け加えた。

日本のユーザーの約9割が家電との連携にも期待を示すなど、デジタルとリアルを融合した新たな体験をリードする接点として、スマートスピーカーに注目していることが明らかになった。こうした消費者の新たなニーズを確実にビジネス機会につなげるために、企業はデジタル時代に対応したパーソナライゼーション戦略の策定を進め、より価値ある顧客体験の創出に注力していくことが重要。

アクセンチュアは2018年デジタル消費者調査結果に見る日本の市場機会について、①リアルとデジタル体験の融合はこれまで以上に加速する。リアル・デジタルを融合した新たな顧客接点を構築し、その接点を充実するための顧客体験を設計する必要がある、②消費者は、「自分に合ったサービス」に関する関心が高く、競争のフィールドは、機能の差分からサービスのパーソナライズ化に移行する、③消費者が求めるものとお金を払ってもいいものが、一層乖離するため、サービス提供と多様な収益化の方法を、周到に設計する必要がある―とまとめた。

自動運転やAR/VRへの期待

自動運転に対し、回答者の半数以上が安全性への懸念を示してはいるものの、自動運転車に乗ってみたいと回答しており、消費者が自動運転車の利用に前向きであることがわかった。日本のユーザーは、自動運転車に対する不安感が少なく、むしろ安全性が高まることを期待している傾向が出たという。また、安全性が高まると答えた人のほとんどが自動運転に興味があると回答した。拡張現実(AR)と仮想現実(VR)を活用したサービスに対する消費者の関心の高さも示されており、その利用範囲はゲームの枠にとどまらず、行き先を確認したり、スポーツイベントを体感したり、新たなスキル手法を学んだりするための手段として、より実用的なニーズにまで拡がっていることが明らかになった。

【※調査方法】
2017年10月から11月にかけて、Harris Interactiveがアクセンチュアからの委託を受け、日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、オランダ、イタリア、メキシコ、ポーランド、シンガポール、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、アラブ首長国連邦、英国、および米国の計19ヵ国の消費者2万1,000人を対象に調査を実施。各国のサンプルはそれぞれのオンライン人口を代表するよう選定され、回答者の年齢は14歳から65歳以下となっている。本調査とそれに関連したデータ・モデリングは、デジタル機器に対する消費者の認知度やコンテンツとサービス、購買パターン、各サービス事業者に対する好みと信頼度、およびコネクテッド(インターネットに接続された)なライフスタイルの未来などを数量化したもの。

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