コミュニケーションで食に安心と楽しさを。消費者と生産者を繋ぐポケットマルシェ

2018年2月6日、エンジニア向けの勉強会TechMashにて「日本の『食・農』をWebで変革しNight」を開催した。これまでITを活用することが難しいと考えられていた、食べ物の生産や流通という分野。今回のイベントでは、「食べ物の生産や流通」のあり方を変えようとしている登壇企業3社が、サービス開発・運用現場での取り組みなどについて語った。

日本では、これまで食の安全性に関わる事件がいくつも起きている。その原因のひとつに、消費者と生産者の間での相手の名前も顔もわからないというコミュニケーション不足があげられる。そういったコミュニケーション不足をなくし、消費者と生産者を直接結ぶサービスを開始したのは、2015年に設立したばかりの株式会社ポケットマルシェ。2017年9月にはユーグレナやメルカリなどを引受先とする第3者割当増資を実施。資本・業務提携を結び、総額1億8000万円の資金を調達した。同日は同社からエンジニアの川俣亮介氏にご登壇いただいた。

TechMashでは「エンジニア×新規事業」や「エンジニア×IoT」など幅広いテーマで勉強会を定期的に行っている。

消費者と生産者を繋げるポケットマルシェ

ポケットマルシェというサービスは、全国の漁師や農家の方と会話をしながら、直接食材を購入できるCtoCサービスです。1番の特徴は、消費者が商品を購入した後に生産者とコミュニケーションをとれるところです。例えば、リンゴを買って食べたとします。消費者が「美味しかったです」「こんなふうに料理しました」という投稿をすると、それに対して生産者が「ありがとうございます」「こういうふうに料理するともっとおいしく食べられますよ」というように、気軽にやり取りができるんです。サービスを利用した生産者からは、たくさん売ることができたという報告や消費者から嬉しい言葉をかけてもらえたという声が届いています。
当社は、「東北食べる通信」という漁師や農家の方の情報が載った情報誌をもとに、代表の高橋博之が立ち上げました。第一次産業を情報産業に変えるという旗を揚げていて、「東北食べる通信」で得た知見やノウハウを広げようという挑戦をしています。

同社エンジニアの川俣亮介氏

第1次産業界にITは受け入れられるのか

当社はCtoCなので、農協などといったところとの戦いみたいなものは、正直全くないです。ただ、漁師や農家の方にサービスのことを話す際は、ITのことがよくわからず、面倒に思われることはよくありますね。解決手段としては、代表の高橋が講演会をしに全国を飛び回っています。我々はこういったサービスをやっていて、このように商品を売ることで、このようなメリットがありますよ、という話をすることで、理解を得ようと取り組んでいます。
またエンジニアに限らず、消費者と生産者間での活発なコミュニケーションを見ると、自分は社会に貢献しているんだなと、やりがいを感じますね。特に子どもが野菜嫌いなのに食べてくれたとか、スーパーに並んでいるものとポケットマルシェで購入したものは、良い意味で全然違うという消費者の声に対して、生産者がものすごく喜んでいるところを見るのは、こちらとしてもものすごく嬉しい瞬間です。

10年後、第1次産業が生き残るためには

現在の食卓において、少しずつ個人が食べるものにこだわりを持つようになってきました。10年後はもっとそのような傾向が高まり、食への需要が多様化していると思います。例えば、健康に良い野菜を食べたい人や見た目に華を持たせた料理が欲しい人など。そして、そういった個人のニーズに対応できる漁師や農家が生き残り、いわゆる成功者になるのではないかと思いますね。当社のエンジニアとしては、消費者に対して出品しているものの中にある売れそうな野菜をレコメンドできるような開発を理想だと考えております。

イベント後半は登壇企業3社によるパネルディスカッションも行われた

「働く場所はどこでも良い」生産者に会いに行くエンジニアの働き方

チームは社員が2名、外部が6名の体制で開発を進めていります。ネイティブのエンジニアが1名、その他はすべてサーバサイドのエンジニアです。主にRailsを使っていますが、まだ自動化やデプロイはできていない段階です。
また、誰でも自由に生産者に会いに行けるというチームづくりを目指しています。働く場所はどこでも良いんです。私も先日実家に帰るついでに、生産者に会いに行きました。自分のやりたいことができる自由な文化のチーム体制でありたいですね。インフラはまだ全然困る状態にはないので、テレビでも出ない限り落ち着いています(笑)。なのでサービスの開発を積極的にやりたいというエンジニアがいると嬉しいですね。サービスはまだ使える状態にするという段階なので、そこまでビジネスについての意思決定をするということはないのですが、今後エンジニアチームも入ってくるようにしたいと思っています。

人と人とのつながりを大事にし、情報をもってして食の安全・楽しさを誕生させているポケットマルシェ。生産者と消費者の距離が近いのは、ポケットマルシェが常にユーザーのことを考えて歩み寄ってきたからではないだろうか。この新たに生まれたサービスは、よりいっそう人々のコミュニケーションを活発化させ、食への認識を安心・安全なものへと変えてゆくに違いない。

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