「一人ひとりにパーソナルトレーナーを」、ダイエットメニューを自動作成する夢のAIアプリが凄い!

痩せたいやコレステロールを下げたい、健康診断の結果が悪いから改善したい、疲れにくい身体を作りたい、そういった健康の希望は食事9割、運動1割の割合で改善していくことが必要だと一般的に言われている。しかし、食生活の改善と言われても、ひとりではどう進めていけば良いのかわからない。その課題に挑戦したのが、meuron株式会社(ミューロン)だ。

食生活やダイエットに関するアプリは多種多様にあるが、そのようなアプリでは1日3食の内容を自分で記録しなければならないものが多い。食事の度にそれを事細かに入力する労力は大きく、長続きしない要因となっていた。同社が開発したダイエットの献立を自動作成する人工知能アプリ「CALNA(カルナ)」は、従来のダイエットアプリに必要だった手間を大きく削減してくれる。

CALNAでは何を食べたら良いかを先回りして提案し、それができたか否かを報告して、そのまま食べたものが記録されていく。食生活の改善でよくある「何を食べたら良いかが分からない。記録が面倒くさい」という悩みが解消される夢のアプリだ。

食生活の改善を提案してくれるバーチャルアシスタント

同社代表取締役社長の金澤俊昌氏は、CALNAを「食生活にまつわる面倒くさいことを解決してくれる、バーチャルアシスタントみたいなアプリ」だと説明する。

「『健康診断で痩せてください』って言われたり、『痩せたいな』と思ったりしたときに、『糖質制限が流行っているの?』『なに、朝バナナがいいの?』みたいな情報が錯綜していて、結局、何をしたら良いのかよく分からなくなってしまうということが多いのではないでしょうか。そういう人たちに何をすべきかを教えてくれる、あなたのパートナーになるAIアシスタントがCALNAです。『今日はこれにしたら?』などのレコメンデーションに対してそのとおりに実践していくだけで、いちいち考えることなく自然に痩せることが可能な設計になっています」

代表取締役社長の金澤俊昌氏。前職BEENOS株式会社からスピンアウトするかたちでmeuron株式会社を設立した。社名は、人の情報を扱う神経系細胞ニューロンのNを変数のnに見立てて、Maximumのmを入れてミューロンとなったという

最近、テレビコマーシャルでも話題のパーソナルトレーナーが個人個人に付くプライベートジムというスタイルがある。プライベートな空間でトレーナーからマンツーマンでのトレーニングと食事指導を受けながら、理想の体型を目指すというものだ。金澤氏はそれを見て、「自分の健康を誰かに見てもらうというのは、確かに良い体験だな」と感じたという。

「自分自身の身体ってどんな状態か分からないし、客観的に見てもらうにも他人からしてみたら関心もない。そこにプライベートジムのニーズがあると思うのですが、マンツーマンになるので料金は決して安くはありません。それを自動化したり、アルゴリズム化したりして価格破壊を起こしていけば、一人ひとりにパーソナルトレーナーを付けることができるのではないかと思ったのが開発のきっかけです。CALNAの食事指導のベースは、管理栄養士やパーソナルトレーナーが行う指導を自動化するというところからスタートしました」

アプリ上に管理栄養士やトレーナーを搭載して食事指導の自動化をすると考えた際、一番いい方法がAIだった。またパーソナルトレーナー1人が、個人に生涯つきっきりで指導を行うことは難しい。AIというバーチャルな存在であるからこそ、そのハードルをクリアできている。

「どんな仕事でもそうだと思いますが、ベテランになればなるほど、仕事のやり方ってある程度パターン化してくるじゃないですか。例えば営業の場合なら、こういうクライアントはこういったセールストークで、このポイントを抑えておけばだいたい何パーセントぐらいで契約が決まるだろう、というような。そういったパターンが生まれる背景には、その人が今まで培ってきたたくさんの経験があるんです。ですから、トップのトレーナーの人たちがやっていることを、どうやったら再現できるのだろう、どうやったらベテランのトレーナーに近づくんだろうという観点でアプリを作りました」

CALNAのサンプル画面。作り置きプログラムは忙しい人にうれしいサービス【同社提供画像】

半人力で2年間運用されていたCALNA

meuronが設立されたのが2014年10月で、CALNAがリリースされたのは2016年10月。この設立からリリースするまでの2年間は半人力でCALNAのテストを行っていた。

「半人力とはどういうことかと言いますと、裏側に人がいてアドバイスを送っていたんです。ユーザーからのメッセージをある程度言語解析をして、『こういうものが来たら、こういうふうにアドバイスしてね』と、システム側でアドバイスをレコメンデーションするようなエンジンを作り、その中から人力でチョイスしたメッセージを返信していました。例えば、ユーザーから『ハンバーグ定食を食べました』という投稿が来たら、システムがメッセージを解析して、『ハンバーグを食べるなら、デミグラスソースをやめておろしソースにしよう』みたいなアドバイスが生成されて、それを人が判断・チェックして、チャットなので文章が噛み合うように書き換えて送るというようなフローでやっていました。この元となるアドバイスの中身は最初、トレーナーと一緒に作っていて、トレーナーがどんな時に、どのタイミングで、誰にどういうふうにアドバイスをするのかを、ひたすら細かく観察し、体系化してロジックに落としていきました。それをシステムに入れて、みんなに実装してもらってみたいな作業を2年間ぐらい繰り返し行っていたんです。その当時で3万人ぐらいのユーザーに使用してもらっていて、データも蓄積されてきてシステム的にできるようになったので、完全自動化しようとCALNAの開発に着手しました」

実はこのCALNAには隠し機能が搭載されている。

「結構、細かい機能とかがたくさんあって、例えば、よく行くお店を登録しておいて、『今日は○○コンビニで食べます』と設定すると、その○○コンビニで何を食べたら良いかをレコメンデーションしてくれるわけです。でもそのコンビニに行って、Aというものが売っていなかったりしたら、似たカロリーの別商品を探してくるような機能もあります。この時にレコメンデーション以外に何かほかに買って、『これじゃちょっと足りなくて食べ過ぎちゃった』って報告すると、次の食事のレコメンデーションで、『糖質制限しました』と出てくるようになっています。炭水化物がカットされてレコメンドされるわけです。これは、その通りにできたと報告しない限り解除されないようになっていて、クリアできるまで炭水化物がずっと少ない形で出てきます」

CALNAは、次どう食事したらいいのかを1食単位というよりは、1日とか1週間とかいうスパンで食べ過ぎている、食べ過ぎていない、摂りすぎている、摂りすぎていないというのをチューニングしていくような計算を行っている。

個人個人に合わせたパーソナライズ提案が可能

CALNAは実際にプロのトレーナーが使っているアドバイスをほぼ全て網羅している、と金澤氏は語る。例えば同じ食事をとったとしても、食べ方、食べる時間によって、太るか太らないかは大きく変わってくる。CALNAでは会話機能を用いることで、こうした知識的な部分でのフォローも可能にしている。

「CALNAの会話にはユーザーが聞いてアドバイスをもらうというフローと、CALNAから話しかけるフローがあって、例えば体重報告して減量しているとピョコンと出てきて『最近、順調ね』って、返答があったりします。CALNAから話しかけられることもあり、『最近帰り遅くない?』とか聞いてきたりするんですけど、実は聞いた内容が、『あなたについて』の情報にどんどん付与されていきます。あとは『アレルギーがあるか?』とか『便秘がちか?』とかの生活習慣を聞いてきます。聞いた内容をもとに、今後のアドバイスや食事のレコメンデーションが変わってくるんです。最初は均一なんですけど、どんどん分岐していってパーソナライズが細かくなっていく仕組みになっています。ちなみに僕はキノコが嫌いなので、キノコは二度と出ないようになっています(笑)」

人によって毎日晩酌する人や、食べられないものがある人など、健康を保つための課題は個人個人で異なる。CALNAはそれぞれの課題別に分岐して、どうしていったら良いのかをアドバイスしたり、その人に最適なレコメンデーションができるように学習していく。

「有料版では、自炊もサポートをしています。忙しい人をターゲットにしているため1週間分、土曜日とか日曜日にまとめて作り置きできるようなレシピを想定していて、例えば、1週間分で何種類作るのかだけ指定すれば、その1週間分のレシピを栄養バランスを考えて出すようになっています。5品作ると決めれば、今度はそれを全部買い物リストにまとめてくれ、また使い切りたい食材などがあれば、それに対応したレシピも考えてくれます」

現在、レシピ自体は1,000件ほど。CALNAは調理手順も教えてくれる。

「実際料理するときって1レシピずつは作らないじゃないですか。たとえば5品だったら、5品同時進行してもっとも効率のいい手順を計算して提案します。CALNAが提案した手順で調理を行うとだいたい1回の調理時間が30%ぐらい短くなります」

CALNAで取得できるデータはユーザーが何を食べたかだけでなく体重は何キロなのか、食事の好みなどほか、その人の食生活パターン、食事の時間など幅広い。そのため、B to Bでは、メーカーや流通業者などに対して、購買行動に関するデータビジネスも始めている

今後は離乳食向けの食育プログラムや糖尿病予防プログラムなどをそれぞれ個別にアプリ化し、目的に合わせたマイクロサービス化を進めていきたいと金澤氏は話す。今までにはなかったAIを活用した食生活改善アプリ。ダイエットだけでなく健康維持、病気予防などで今後、医療界に革新的な影響を与える可能性を秘めているかも知れない。

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