中二病が天才になれる会社、グリモアのCEO・神谷友輔氏インタビュー

スマートフォン向けゲームアプリの開発と運営を行う、株式会社グリモア。2014年に設立後、2015年に自社ゲーム第1弾としてリリースした、巨大な鍵が刺さった魔界を舞台に主人公・魔剣使いと少女の姿をした魔剣が物語を繰り広げるRPG「ブレイブソード×ブレイズソウル」は、累計200万超インストールを誇る人気ゲームへと成長している。今回は、グリモアを立ち上げ、「ブレブレ」の指揮を取っている同社CEOの神谷友輔氏に話を聞いた。

株式会社グリモアのCEO神谷友輔氏

——まず、グリモア設立の経緯を教えてください。

元々僕は別のゲーム会社にいたのですが、その頃からずっと、IPに頼らないゲームを作りたいと思っていたんです。IPもののゲームってある程度成功が確約されてはいるものの、その成功ってIPのものじゃないですか。そうではなくて、「この会社・この人たちが作ったゲームだから遊びたい」と思えるようなゲームを作りたかったんです。

あと、経営判断でたくさんのゲームが無くなるのを見てきたのですが、ずっと会社都合という他責だったので、これからは全て自責でゲームを作って運営していきたかったんです。その方法はいくつかありましたが、そのひとつの方法である、小回りが効いて分かっているメンバーだけで独立したのがグリモアです。

——「グリモア」という意味も含めて、どんな会社なのでしょうか。

「グリモア」というのは、魔道書という意味なのですが、名前からもちょっと感じ取ってもらえると思うのですが、中二病な会社です(笑)。といっても、痛い、ではなくゲーム作りには真摯に向き合っていて、おかげさまでユーザーさんからは「ユーザーに寄り添って運営してくれている会社」として認識されています。

——「クソ運営」とユーザーから叩かれるゲーム会社が多いなか、「ユーザーに寄り添って運営してくれている会社」という評価はめずらしいですね。

そうですね。ただ、実は最初はそうではなかったんです。リリース直後に想像以上に上手くいってしまったことで、めちゃくちゃ調子に乗ってしまいまして。そうしたら、一気にユーザーから嫌われました(笑)。大型掲示板にも「いいゲームなのに運営のせいでクソゲーになったよね」という意味で、スレッドタイトルに「自爆運営」と書かれてしまって。大好きなゲームで楽しんでもらいたかったはずなのにこういう結果になってしまい、自分自身が許せなくて、そこからは気持ちを改めた運営を行えているかなと思っています。

「自爆運営」という言葉は、ユーザーから「もう取ってもいいんじゃないの?」という話になり、一時期はスレッドタイトルからも取れていたのですが、また「元自爆運営」と付けられたりしています(笑)。でもそれは、ユーザーからの愛情の証ですね。

「あの時調子乗った自分には、今でもムカつきます」

——まさに、先ほどの「自責にする」ですね。また、中二病、というワードが出てきましたが、貴社のビジョンとしても「中二病を救う」が掲げられています。この中二病ということを具体的に教えて下さい。

世間では中二病=痛いというイメージしかないですが、僕らは中二病って夢を見る才能だと思っているので、治す、じゃなくて救う、にしているんです。「自分は空を飛べるんだ」と思っていた中二病の少年が、大人になって本当に飛行機を作って空を飛んだのと同じように、大きな、たくさんの夢を持って、それに近づくために頑張れば、中二病は天才になれるんです。普通は大人になるにつれ、諦めたり折られたりしてしまうけど、それを僕たちグリモアが小さな魔法をかけてあげることで救えたらいいなと思っています。

——貴社にも中二病はいらっしゃるんでしょうか?

はい。いま従業員が30名いるんですが、僕も含め、みんな夢を見ている中二病です。自分たちが中二病だからこそ、中二病が喜ぶツボが分かっているので、それがキャラクターをはじめとしたゲーム制作に生きています。ツノが大好きなデザイナーが自分の一番かっこいいと思うツノを日々デザインし続けていたり。「これは(中二病的に)かっこいいよね」という共通言語が、しゃべらなくても通じるのはゲームを作る上でやりやすいです。

——そんな中二病が集まって作った「ブレブレ」の開発時のエピソードや、開発においてこだわったポイントを教えてください。

他でも言っているんですが、やっぱり5人で作ったことは一番のエピソードだと思います。いま考えるとめちゃくちゃなんですけど、全員が同じ方向を見て、同じ仕様を把握して、ひとつのものを作り上げられたってことが成功の秘訣だったんじゃないかなと思います。実はリリース1週間前に突然機能の追加の話が出て、もちろんやらないっていう選択肢もあったんですが、このメンバーだから、もっと良くするため、ユーザーに喜んでもらうためにやろうっていう決断ができたのも、それがあったからですね。

とにかく、ユーザーファーストにこだわって運営しているとのこと

——いまは30名と当時よりもメンバーが増えましたが、動きやすさという点ではいかがですか?

確かに5人だったときと比べると色々調整することも増えてきましたが、それでもうちでは“グリモアらしさ”のある社員を採用しているので、大きな差は生まれないですね。「行動指針の三大パラメータ」はその“グリモアらしさ”を表現しています。一言でいうと、「大真面目にふざけている人」です。

——各パラメータのカンスト(カウンターストップの意味で、レベルの上限に達すること)を目指して行動することを示しているのが、ゲームっぽくていいですね。この他にも、御社に合う人材はどういうタイプか教えてください。

先ほどの話と同じなのですが、自責にできる人ですね。例えば、「ブレブレ」に変なところがあったとして、それを仕様だからとスルーしちゃうか、スルーせずに直すかって、自分と向き合うこと、それがゲーム制作には必要なんですよね。グリモアのかっこよさを分かって共感してくれて、かっこよくし続けるにはどうしたらいいんだろうってこだわり続けてくれる人が向いていると思います。

——具体的に、こだわる、というのはどういうことでしょうか。

やっぱり、ユーザーの方が熱量が高いことは往々にしてあって、運営よりもむしろゲームに詳しいこともあったりするんです。でも、僕たちは絶対にコアユーザーに負けないぞ、という気持ちで制作し運営していますし、そのコアユーザーにずっと楽しんでもらえるよう、ユーザーがネガティブに感じる要素はすぐに直しています。そのために、毎週金曜日は「割れ窓会議」の日に設定しているんです。

——「割れ窓会議」ですか?

「割れ窓理論」という、割れた窓をそのままにしておくと他の窓も割られ、やがて建物全体が荒廃していってしまうというものがあるのですが、この理論と同じように、ゲーム内の”割れた窓”をそのまま放置してしまうと、どんどんゲームがやりにくく、楽しくなくなっていってしまうので、毎週金曜日は徹底的にユーザーから上がったもの、運営から上がったものを見直して、アップデートを繰り返しています。

——その日々の積み重ねが、「自爆運営」から「元自爆運営」としてユーザーに認められたんでしょうね。ところで、神谷さんは元々エンジニア出身ということですが、エンジニアが働きやすい会社なのでしょうか?

現在エンジニアは3名いて、その中の2名は立ち上げメンバーなので、阿吽の呼吸で仕事をすることが多いのですが、新しく入ってきた1名のエンジニアも、同じ熱量で頑張ってくれているので、必ずしも阿吽の呼吸である必要はなくて、コミュニケーションをとっていれば大丈夫な環境ではあると思います。

うちは、ゲーム好きのエンジニアには働きやすい環境になるように整えていて、例えば、休憩の時にゲームができるようにしていたり、疲れたときに糖分が取れるよう駄菓子コーナーを設置していたり、食事面も気遣えるよう、いつでも美味しくて栄養バランスの取れた惣菜の食べられる「オフィスおかん」を導入したりしています。

あとは、「重要ゲーム発売日」として、このゲームは絶対にやっておかなきゃいけない、みたいなゲームが発売する日は休みにして、ゲームを心行くまで楽しんでもらえるようにしています。楽しいゲームを作るために、インプットは何よりも大切ですしね。「重要ゲーム発売日」のあとは、そのゲームをプレイした前提で話をするので、ゲームをプレイすることを強要はしないのですが、動画なり記事なり、ある程度チェックはしておいてもらいたいです。直近だと、「スーパーマリオ マリオオデッセイ」の発売日である10月27日と、「ゼノブレイド2」の発売日である12月1日を「重要ゲーム発売日」として休みにしました。

「重要ゲーム発売日」を作るほどゲームを大切にしているグリモアは、いつでもゲームができるようになっている

——ゲーム好きには、何よりもうれしい福利厚生かもしれませんね。それでは、最後に一言お願いいたします。

グリモアは、常にユーザー視点で仕事をしています。今後も、本来のゲーム会社の姿である、ユーザーにエンターテインメントを届けられるものを作っていきたいと思っているので、ぜひ僕らを見ていてください。1人1人を、素敵な魔法にかけていきます!

ユーザーから送られてきた手紙やグッズは全て大事に飾っている

「自爆運営」という汚名を付けられてしまったが、それを返上すべく1つ1つユーザー視点での運営を続けることで「ユーザーに寄り添って運営してくれている会社」として生まれ変わった株式会社グリモア。一般的に「中二病」というと、ネガティブな印象があるが、グリモアには“天才の卵”として受け入れてもらえる環境がある。これからも、そんな天才の卵たちが「中二病を救う」ゲームを制作、運営して行ってくれるはずだ。

中二病ポーズ。1番目の写真とのコントラストがすごい
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