FinTechにおける「レンディング」という市場の面白さ、可能性に迫る

株式会社クレジットエンジンが展開しているのは、あまり聞き慣れないオンラインレンディングというサービス。つまり融資に関する申し込みから審査までの流れを、全てオンライン上で行なうというものだ。そのため書類審査が不要で、主に中小企業や個人事業主に向けてサービスを提供している。2017年1月にベータ版をリリースしてから、すでに数百件の融資を行なっているという。巨大なFinTech市場において、オンラインレンディングの占める割合は非常に大きい。そんな中、スタートアップである同社は、どのようにサービス拡大を図っていくのか。代表取締役の内山誓一郎氏に話を聞いた。

融資の在り方を変える、オンラインレンディング

融資を受けたいと思った時、決算書に事業計画書、印鑑証明書など、多数の書類が必要になる。それが揃うと金融機関の融資担当者と面談して、審査の判断を進めていく。非常に時間と手間の掛かる作業である。LENDYはこれを大きく変えた。
LENDYでは、申し込みから審査まですべてをWeb上で行なう。個人事業主や法人が使用しているオンラインサービスのデータをもとに、借入可能額を算出するという画期的なサービスだ。面倒な資料作成の手間を省くことができる上、最大で500万円の借り入れが可能。最短で即日着金するというから驚きだ。

これまで、多くの企業はローカルにある会計ソフトを利用し、企業の売り上げや事業に関わるデータの入力を行なってきた。しかし、IT化が進むにつれてデータの管理がクラウド上へと移行してきている。LENDYは、それらをAPIで連携し、データ分析をすることで、融資審査を行なっている。

「クラウドが浸透してきた今だからこそ、実現できるサービスですね。データ分析を通して、適切に融資判断ができるのが、我々の強みだと思っています」

より多くの金融機関や決済事業者と提携することで、多くのお客様にサービスを提供していきたいと話す、株式会社クレジットエンジン代表の内山氏。

広がる市場と与信モデルの構築

オンラインレンディングは、巨大なFinTech市場の中で特に成長著しい分野。その背景にあるのは中小企業の存在。多くの金融機関から融資を受けられる大企業と比べ、中小企業は融資を受けにくい状況にある。LENDYはそこに目を付け、中小企業がスピーディに、手間をかけずに融資を受けられる仕組みを開発した。日本ではまだあまり耳にしないこのサービスだが、今後成長していく可能性は大いにある。内山氏がMBA取得のためアメリカへ行った際、自身でもオンラインレンディング市場の盛り上がりを感じてきたという。アメリカで浸透しているオンラインレンディングにいち早く目を付け、日本でも展開をしていくことになった。

LENDYでは、2017年1月にベータ版をリリース、着実に提携数を増やしてきた。実際にサービスを開始して分かったことは、融資先の業種の振り幅は大きく、資金用途も様々だということだ。それは、想定していたよりも市場が大きかったということで、今後の広がりにさらに期待が膨らむ。

サービス提供の拡大をよりスムーズにするため、今後は機械学習を取り入れたデータ分析にも注力していくという。審査のクオリティを上げ、また判断を自動化することで、より一層多くの中小企業、個人事業主に対し、便利な融資サービスを目指していきたいと話す。

クレジットエンジンが展開するオンラインレンディング「LENDY」のロゴ

事業誕生の背景

そもそも内山氏はなぜオンラインレンディング事業を始めたのか。そのきっかけは彼自身の原体験からきている。それは、東日本大震災において被災企業に対する融資業務をしていた時のこと。人々が一日も早く普通の生活に戻ろうと奮闘している中で、融資の審査に時間がかかることに課題感を覚えた。また、審査する際に必要な書類の作成など、本来の業務以外のことに事業主が時間を割くことも問題だと感じていた。

「金融機関の融資判断では、資料を見てその事業がしっかり運営できるのか知る必要があります。しかし金融機関側は、資料を上手く作れているか、言ってみれば『お絵描き』が上手くできているかを見ており、判断のポイントがずれてしまっています。対してオンラインレンディングは、資料を作る必要がないためデータを直に見て事業運営の判断ができます。この仕組みなら、書類作成の『お絵描き』ではなく事業に注力したい人が評価されると感じました」

今のチームは、内山氏をはじめとするエンジニア5名、バックオフィス1名の計6名だ

ここ数年で新たに生まれたサービスのオンラインレンディング。今後、FinTech市場全体、そしてオンラインレンディングサービスも規模が拡大していくだろう。その中でLENDYがどのような展開を繰り広げていくのか、期待が膨らむ。中小企業の融資の在り方を大きく変えるこのサービスは、今後、社会全体に大きなインパクトを与えるだろう。

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