学生マンション業界トップ企業×Peakersオフライン2Dayコンペティション 最優秀賞 鈴木賢人さん– 京都大学大学院 情報学研究科 社会情報学専攻 修士2年

『学生マンション業界トップ企業×Peakersオフライン2Dayコンペティション』が2021年10月30日-31日、京都市にて開催された。

本イベントは、株式会社ジェイ・エス・ビーによる学生支援活動の一環として行われた機械学習コンペティションだ。「学生マンションにおける賃料推定」をテーマとし、「学生支援」を共通言語にする同社とPeakersがタッグを組んだ。

コンペティションでは物件の広さ・設備・築年数などの情報をもとに、指定された物件・部屋の賃料を予想。ジェイ・エス・ビーが長年蓄積してきた物件関連のクローズドデータ(テーブルデータ)が提供され、企業のリアルなデータに触れながら成長できるチャンスとなった。

主催の株式会社ジェイ・エス・ビーは、管理戸数76,612室以上、学生マンション事業で業界トップクラスの事業規模を誇る。1976年の創業以来「学生に安全で良好な就学環境を提供すること」を目指し、従来の賃貸住宅業界にはない分野を切り開いてきた。

学生視点のあらゆるニーズを柔軟に取り入れ、賃貸物件の企画から賃貸・管理までの一気通貫したサポート体制を構築。「学生マンションのUniLife(ユニライフ)」ブランドで、業界トップクラスの事業規模と顧客支持を得ている。「新時代の学生育成」に注力している同社は、日本語学校や幼児教室も展開中。日本の次世代を担うAIを学ぶ学生の育成に注目している。

当日はプロのデータサイエンティストが技術メンターとして参加し課題解決をサポート。より幅広いスキル保持者に対応するため、ベースラインコードの配布や初心者向けの質問サポートを実施した。また、個人対抗ではあるものの参加者同士での意見交換や質問を推奨し、オープンマインドな交流による成長も体験できる場となっていた。さらに、個人ワークの終了後はチームを組んで更なる精度アップを目指すエキストラワークも実施。ライバル同士としての切磋琢磨と仲間としての協力、両方を通じて大きく成長できるプログラムとなっていた。

最優秀賞受賞者:
最優秀賞に選ばれたのは、京都大学大学院 情報学研究科 社会情報学専攻 修士2年 鈴木賢人さん。「コンペティションの印象は?」「好成績につながったポイントとは?」お話を伺った。

―普段の研究内容について教えてください。

京都大学大学院の情報学研究科で医療情報学の研究をおこなっています。研究テーマはリハビリテーションの自動化やAIの導入です。

―参加してみていかがでしたか?

メンターの方からは親身になって教えていただき、参加者同士でも情報共有して進めていくところが新鮮で楽しむことができました。運営・主催企業の方には、事前データやモデルサンプル構造作成、会場設営などの準備をしていただき、貴重な経験の場を与えていただきました。修士論文が大詰めを迎えており忙しい時期ということもあり、よい息抜きになりました。

―好成績を修めましたがどのような工夫をしましたか? また、最も優勝に繋がったと思うポイントについても教えてください。

モデル構築、スコアの提出、メンターの方への質問など、それぞれの時間配分を工夫しました。

最も優勝につながったと思うポイントはモデルの選定です。
今回のテーマは物件の設備の有無が特徴でした。そこでフラグやカテゴリの分類がしっかりできるモデルを選定したところがよかったと見ています。

2日間という短い期間において「周囲が使うモデルを使うのはどうなのか」とまず考えました。そこでまず1日目は、普段の研究でも扱っているデータ分析や仮説検証よりも、モデル構築に時間を使うと決めて優先的に取り組みました。

優秀なスコアを記録したモデル構築手法について解説する鈴木さん

―苦労した点や、もっと伸ばせたと思う部分はありますか?

2つあります。1つ目はデータの扱いです。今回、(前処理などを行っていない)生データ状態での配布だったため、そのままでは機械学習に適さない部分がありました。それらの処理をやり切るには時間が足りず、改善の余地があったと思います。2つ目はモデルのパラメータです。時間的な制約と自分自身の経験不足から、パラメータチューニングまで実施できませんでした。メンターの方に教えていただき、最終的に方法は理解できましたが、試すことはできなかったので、次の機会があればこの知識を活かしたいです。

―普段の研究開発で好成績に繋がった部分はありますか?

一番大きかったのは大局的な視点を持って進めることです。

研究においても取り組まなければならないことはたくさんあります。しかし目の前のデータや現象に深く入り込みすぎると時間が足りなくなります。そこで一歩引いて、仮説をもってデータに向き合うことが求められます。

今回のコンペティションにおいても「データの何が大切か」という特徴量の作成において、大局的な視点を持って進める経験が役立ちました。

―主催企業から提供されたデータを通じて、不動産におけるDX活用にどのような印象を持ちましたか?

率直な感想としては「不動産業界」と聞いたときにアナログや非データが思い浮かび、不動産におけるDX活用は難しいと感じました。

実際に物件を選ぶ際は、写真や立地、設備や周辺環境などから目算を立てていきます。

このような人間の目算ではなく、値段以外の情報から機械で価格を算定するというのが今回のテーマです。簡単なようで実際にはAIで算定することが難しいと改めて感じました。

―課題への取り組みやメンタリングを通じて、特に学びになったことを教えてください。

データサイエンスの基礎について知識を得られたことが、一番学びになりました。
オンラインでは質問しにくい「こんな初歩的な質問をしてもいいのだろうか」という内容のものでも、(オフライン開催だったため)気軽に質問することができました。バグを直すための個別のソリューションだけではなく、おおもとになる考え方をメンターや他の参加者から教えてもらうことができ、勉強になりました。

参加者同士の意見交換では、それぞれの取り組みの違いを実感しました。
3人集まればひとりひとり進め方や得意分野が異なります。1人はデータの前処理が得意でそこを教えてもらいました。もう1人は全く違うモデルを作成しており「そんなモデルを使うの?」という驚きと共に自分にはない視点に触れることができ学びに繋がりました。

―今後、どのようなチャレンジをしていきたいですか?

コンペティションへの挑戦はしばらくお休みしたいと思っていますが、今後は前処理が必要なデータにも挑戦したいと思っています。私はテーブルデータが専門ではないため、画像データなどにも取り組みたいと考えています。

現在は大学院で研究に取り組みながら、京都のITベンチャーでAIエンジニア(インターン)として勤務しています。春からはビジネスパーソンになります。研究開発職ではありませんが、技術面(エンジニア的側面)も兼ね備えたビジネスパーソンになっていきたいと考えています。今はエンジニアではなくても、コーディングやプログラミングの知識が求められる時代になっていると見ています。これからも学びを続けていきたいです。

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