大企業から一転、ベンチャー企業の立ち上げにジョイン!医師と患者のマッチングサービスは未来の医師選びを変えるか?

自分や家族が病気に罹ってしまったときに気になるのが、病院や医者選びだ。できれば名医に診てもらいたいという願いは誰しも同じ。しかし一方で、名医をどう探せばいいのかわからない人がほとんどではないだろうか。

そんな患者の悩みを解決すべく立ち上がったのが、港区の芝公園駅近くにオフィスを構える、株式会社クリンタル。同社は2015年5月に創業し、社員は3人(取材時、2017年2月)のベンチャー企業だ。独自の指標を用いて名医を選抜。名医と患者さんの出会いの場を提供している。

代表の杉田さんは東大医学部卒の元医者。また、開発の責任者として創業前からジョインしている上垣さんは、誰もが知る大企業でキャリアを歩んできたのち、30代で立ち上げに参画。異色の経歴を持つこの二人が、なぜ今のビジネスモデルにたどり着き、今後サービスをどのように成長させていくのかを伺った。

代表の杉田さん、すでに伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどから資金調達をしている、成長中の若手起業家だ

圧倒的な手間をかける名医判断の材料集め

「私たちは、名医を3つの指標で判断しています。1つ目は手術数や専門医の資格を持っているかという『臨床実績』。2つ目は論文や学会での発表から判断した『学術活動』。3つ目は予約がすぐに取れるのか、手術まで待たされないかなどといった『受診のしやすさ』です。これらをスコア化し、一定水準に達している医者を名医としてユーザーにご紹介しています」

重い症状の患者やその家族の「よい医者と巡り合う方法がわからない」という悩みを、クリンタルは独自の、オープンな指標を用いることで解決している。患者の立場になって、多面的な材料から名医を認定しているとのことだが、評判や受診のしやすさなどのデータを集めるのには苦労しているという。

「とても手間がかかります。たとえば病院で働いていた医者や研修医に対象の医師の評判を実際に聞きに行ったりしています。受診のしやすさでは、病院に何度も電話をして、診察まで何時間待つのか、いつ手術を受けられるのかを確認しています」

あえて手間のかかることをすることで、それが独自の強みへと繋がる

クリンタルが大事にしている「患者さんのため」という言葉

お話を伺う中で、クリンタルはIT企業である一方、元医者である杉田さんの影響からか、「患者さんのため」を非常に重視していることをいたるところから感じられた。それは杉田さんの”採用で重視する点”にも表れている。

「クリンタルでは、エンジニア以外にも、看護師を募集しており、実際に4月からは看護師の方がスタッフとして加わります。事業として看護師を必要としている理由はいくつかあります。まず医者にインタビューすることが多く、専門的な内容を聞いてデータベース化するので、ある程度の専門知識が必要だということ。そして、契約者から健康相談をチャットを使ってのサービスを考えているためです。こちらは3月末ころにはリリース予定です。一方で、細かく看護師としての経歴を求めているわけではなく、外したくないのは「患者さんのためになりたい」という気持ちです。この気持ちだけはブレることなく持ち続けていけるかたと一緒に仕事をしていきたいですね」

数値分析やマーケティングドリブンで事業を捉える人も多い中、一貫して「患者さんのため」という視点を持ち続け、その社会的な意義、責任を重視しているのはクリンタルならではと言えそうだ。

元ヤフーのエンジニアがスタートアップに参加

上垣さんは創業当初からクリンタルの開発担当をしている

上垣さんはCTO(最高技術責任者)としてクリンタルの立ち上げに参画。現在は開発を担当している。新卒でヤフーへ入社し、その後は野村総研に転職した経歴を持っているのだが、なぜ安定した超大手企業から、ベンチャー企業の立ち上げにチャレンジしたのか、その理由を伺ってみた。

「ヤフーの話をすると、当時ちょうどスマホが出始めたときだったのですね。それで開発や運用、企画の一部などやらせてもらいました。ただ、ヤフーは多くのエンジニアがいるので、自分じゃなくてもいいのかと思い始めました。そんなときに、大学の同期の紹介で(代表の)杉田と出会ったのです。お互いにやりたいことをいろいろディスカッションしました。杉田のバックグラウンドである医療系は今後伸びていくだろうし、エンジニアとしての私の力も活かせるのではと意気投合したのです。もちろん不安はありましたし、リスクはあります。それでも十分に勝算のあるチャレンジであると判断し、ゼロからスタートすることを決心したのです」

大手は嫌な言い方すれば、歯車になってしまいがちだ。ゼロから自分でサービスを作り、それが世の中に出ていく達成感。その面白さ、そして楽しさの広さと深さがあるという。

エンジニアだからこそできる患者目線

ある症状や病気についての情報を提供する際、患者さんは”素人”であることが多い。そういった意味で、上垣さんは「医療に詳しくなりすぎない」ようにしているという。医療情報とは一定の距離感を保つことが、利用者である患者さんと同じ目線でサービス設計を進められるという強みに繋がる。もちろん、医療情報としての確かさは代表の杉田さんが確認を行うので、そこは安心して任せることができる。

「エンジニアとしての今後の課題としては、私がいなくても、誰でもこのシステムをまわせる状態を作ることです。いわゆるデブオプスを目指していて、開発と運用担当が連携していき、ボタン一つで例えばサーバーが立ち上がるようにしたいですね。また、当初のペルソナは40、50代の女性で、自分の親やお子さんが病気になったときに使ってもらうことを想定してUIを構築していました。フタを開けてみたら、逆に40、50代の子どもが病気になったときに、いい医者を探したいという要望が、お爺ちゃんお婆ちゃんからもあったのです。そういった幅広い層にスムーズに使ってもらうインフラになれるように試行錯誤しています」

ビジネス面は杉田さんが、技術面は上垣さんが、お互いに信頼関係を持って担当している

日本語が話せないカナダ人のエンジニアが入社

4月からはエンジニアと看護師の2名が新たなメンバーとして加わる。エンジニアはカナダ在住の日本語が話せないというカナダ人。クリンタルのサービスが紹介された海外の記事を偶然見て、直接会社に連絡してきたのだ。フルタイムで日本で働きたいという本人の希望もあってSkypeで面接したという。

「カナダ人はゲームやチャットのプログラムをやっていたそうで、ヘルスケアのアプリを作りたいということから採用しました。まあ、エンジニアなのでソースコードは世界共通言語ですし、国籍も関係ないので問題ありません。契約条件がやはり日本とことなるので、契約書は日本の3倍くらいの量になりました。業務範囲や業務内容を明確にすることが必要なのです。もしかすると飲みニケーションは難しいかもしれませんね(笑)」

なんでも出来るが、なんでもやらないといけない

「大企業でもやろうと思えば幅広くやらせてくれるでしょうけれど、エンジニアにもいろいろあって、フロントの画面を作る人から、裏側のデータベースを作る人までかなり細分化されています。ですからピンポイントではプロフェッショナルになれるかもしれませんが、やはりスピード感や幅の広さでは劣る部分が多いと思います。一方でベンチャーはなんでもやらなければいけないし、よく言えばなんでも出来る。スピードよくまわしていけるのも良いところです。隣に座ってる杉田に話しながら即断できるし、チェックも早い。大企業だとたくさんハンコが必要だったり、ミーティングで決済したりとか、どうしてもレスポンスが落ちますから」

今後は上場を目指してさらなる成長を遂げていくであろうクリンタル。現在でも医療費増大が社会問題になっていて、超高齢化社会に入っている昨今、クリンタルのサービスが必要だと共感した方は一度杉田さんをランチに誘ってみてはいかがだろうか。

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