大規模データ分析でコンサルティング方法論をソフトウェア化。企業の顧客志向の浸透を目指して

株式会社ビービットは、ユーザビリティの高い社会の実現を目指し、ユーザー行動観察調査に基づくコンサルティングやSaaS型のソフトウェアサービス提供・活用を通じて、クライアント企業のデジタルマーケティングを支援している。そのビービットが2017年4月、満を持してデジタル行動観察ツール「ユーザグラム」をリリース。利用企業には大手教育関連企業や新聞社など多くの著名企業が並ぶ。

元々はコンサルティングファームとしてスタートしたビービットだが、代表取締役の遠藤直紀氏は「3年後には、ユーザグラムに関連する売上が全売上の50%になることを目指している」と語る。今、ビービットがソフトウェア開発に注力する理由とは何か、話を伺った。

ユーザー分析で企業のグッドスパイラルを回す

「ユーザグラム」は、クライアント企業のユーザー1人1人の行動履歴を可視化するツールだ。PC、スマートフォン、ネイティブアプリといったデバイスをまたぎ、2年という長いスパンにわたって行動を記録する。また、1回のセッションについて、流入元や検索キーワードが何か、サイト内のどのページをどれくらいの時間見たかなどの行動履歴を記録しており、2年間の長期の行動を詳細に観察することが可能だ。そのため、ユーザグラムが取り扱うトラフィック数はグーグルのそれに迫る。

ユーザグラムを導入することで、これまで見えていなかったWeb上でのユーザーの振る舞いが可視化されるので、企業は集計された数字の塊としてではなく、1人1人の人間が行動している様子として捉えられるようになる。

「ユーザーが何に喜んで、何に不満を持っているかということを企業が理解して動けるようになれば、まずユーザーが幸せになる。ユーザーを幸せにできれば、働く仲間にやりがいが生まれる。その結果、売上が伸びて株主にもリターンがある。こういうグッドスパイラルを回していくのが一番いいと思うのです。我々はそのサポートをしていきたい」と語る。

ビービットが目指すのは、より多くの企業に顧客志向のマーケティングの考え方を広め、実際の業務がその考え方に変化させていくことだ。

遠藤直紀 代表取締役
横浜国立大学経営学部経営システム科学科を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。技術グループに従事。 2000年3月ビービット設立。

日常業務から企業を改革するソフトウェア

ある大手ECサイトでは、ユーザグラムの導入で現場のメンバーの意識に大きな変化があったという。

「ユーザグラムを使いはじめてから、社内の会話の中心が『お客様』になったんだそうです。今まではそれぞれの部門で自分たちの数字や活動しか見えていなかったのが、ユーザグラムのデータを見ながら『こういう反応があるんだったら、今度一緒にこんなことをやってみようか。お客様に喜んでもらえるのではないか』みたいな話が部門を超えて議論されるようになって、すごくやりやすくなったというお話を聞きました」

これはまさにユーザグラムを日々使うことによって社内に顧客理解の意識が生まれている事例だといえよう。

「売上何兆円規模の大企業だと、トップから号令がかかっただけではなかなか組織が変わらない。現場にユーザーの行動をリアルに見てもらうことで顧客理解の重要性を認識してもらい、上からも下からも組織が変化していく必要があります」

顧客志向の思想を内部から生み出しそれを長期的に支援する。その方法としてビービットが選んだのが、ソフトウェア部門を強化することだったのだ。

ソフトウェアとコンサルティング、両面からの課題解決を目指して

3年後には「ユーザグラム」の導入数を1000社まで増やすことを目標とするビービット。それに伴い、さらなるユーザグラムの開発を進めていく。

「ひとつはコールセンターの対応や来店情報など、リアル接点での顧客行動データを取り込むこと。もうひとつはユーザーの主観的な感情評価を時系列で取り込むこと。これによって、ユーザーが何に怒っていて何に喜んでいるのか、それがどんな体験をした結果なのかを可視化させることを目指しています」

遠藤氏は今後、コンサルティングで培ってきたノウハウをさらに方法論化し、ソフトウェアサービスとして提供していきたいという。一方で、同社が目的とするのはあくまでも、コンサルティングとソフトウェアの両面から企業を変革していくことだ。

「コンサルティングの担っていた領域がソフトウェアに置換されるということは、ある程度起きると思います。例えばビービットがコンサルティングの主軸にしていたユーザー行動観察の一部分は、『ユーザグラム』を導入することでユーザーが日常的に行えるようになる。一方で、コンサルティングでは、個別の顧客のニーズに合わせて、より高度な分析や企画立案など、人間の強みが活かせる。両方を一緒に提供していくことで1社1社とより長期なお付き合いをしていきたい」

求む、世界を変えるエンジニア

ビービットは「クライアント企業の先にいるお客様を見て、必要な時にはクライアントにノーを言う」という社風がある。

「我々は、目先の売上のためにクライアント企業に言うべきことを言わず、御用聞きに回ることを『悪し』としています。エンドユーザー主義、企業の先にいるユーザーのことを考えた支援をすべきという理念があるので、『それはユーザーからみると価値がありません』という主旨でクライアント企業にノーと言うこともあります。一時的にクライアントの機嫌を損ねることもありますが、最終的には評価されますね」

また、「ユーザグラム」の開発当初を振り返り、こうも語った。

「『ユーザグラム』の構想自体は、3年前くらいからありました。リアルタイムで毎秒何百と来るデータの中から1人1人を抜き出してきて、その行動パターンを可視化し、さらにその行動パターンの割合を可視化するという要求仕様に対して、技術的な部分で多くの困難があり、なかなか作れなかった。そういう困難な課題も打破できるような、力のあるエンジニアの方に来てもらえたら嬉しいですね。そのための開発リソースは惜しまず必要なだけ提供します。大量データを分析する面白さもあると思いますし、事業としてもこれからどんどん成長させていくためなので、やるべきことは数えきれないくらいたくさんありますよ」

真にユーザーにとっての価値を生み出すための開発ができるだけでなく、技術的にも、企業としてもチャレンジングな環境がビービットにはある。ソフトウェア部門を強化する、という大きな方針転換によるリスクについて問われた遠藤氏は、こう答えた。

「会社を長続きさせるためにやるんだったら、スタートアップはただの零細企業じゃないですか。リスクがあっても、やる時は強くペダルを踏んでいかないといけないっていう覚悟をしています。世界を変えるためにやっているので」

企業改革から世界を変える。その一員になれるのは、今だ。

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