「排泄予知デバイス」で世界展開、もう誰も漏らさない世界の実現を目指して

渋谷駅徒歩一分。トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社は、スタートアップらしい雑居ビルの一角にオフィスを構えている。同社が開発している「DFree」は、超音波を活用したウェアラブルデバイスで、体内の尿、便の状況を把握して排泄する時間を予測することができる。代表の中西さんの強烈な原体験から着想を得たこのサービスは、いったい何を目指し、どのように成長しようとしているのだろうか。

すでに世界中のクライアントへの展開を行うスタートアップ

トリプル・ダブリュー・ジャパンは、代表の中西さん率いる、社員十数名足らずのスタートアップ企業だ。今までにすでに十億円近い資金調達をし、日本全国での展開、そして香港やフランスでの展開を行っており、中西さんがどう思うかは別として、順調に成長していると言って差し支えないだろう。同社が開発するDFreeは、排泄予知をするためのプロダクトということなのだが…。

代表の中西さん、1983年生まれ、青年海外協力隊に従事したり、アメリカの大学で経営学を学んだりとグローバルに経験を積んできた

排泄を予知するウェアラブルデバイスを開発している???。

はじめて聞いたとき、面白そうなことをしているなとは思うものの、一体それで何をしたいのか、何のためのプロダクトなのか、いまいちピンと来なかった。

「今は開発と事業化までのスピードの観点から、便ではなく尿にフォーカスして、排泄予知をしています。2015年の夏にクラウドファンディングでたくさんの方々にご支援いただいた際、想定していたよりはるかに多くの『介護ニーズ』という側面で応援のお声をいただきました」

在宅介護をしている方、脊髄損傷をしている方など、非常に重い悩みを抱えた、たくさんの人たちから支援があった。

なかでも介護事業者からの引き合いは非常に強く、すでに共同での実証実験を終え、全国展開している大手介護企業への導入を行っている。さらに、フランス、香港でも実証実験を進めている。他にもアメリカ、中国をはじめ世界30か国以上から問い合わせがあり、日本に視察しに来ることもあるそうだ。

DFreeは、排泄予知を通じて、人々の尊厳や、これから迫りくる介護の問題を解決していくプロダクトなのだ。しかも可能性は世界に広がり、今後世界中の高齢者人口の増加に伴って、ますます重要度は高まっていく。

「介護事業者さんの業務負担を減らし、おむつ代や人件費などコストも下がり、利用者さんのQOLは上がる。このポイントを抑えることができれば、介護施設での導入が進んでいくと考えています。一方で、介護施設からのニーズに対して導入をサポートするための営業担当者が全く足りていません。また、現在は有料老人ホームなどで導入を進めていますが、今後展開を想定しているリハビリや在宅介護に向けてのサービスパッケージを作り上げていく企画職も必要としています。キーパーソンとして『営業本部長』のような、勢いがありガシガシ動いていけるような人にも来てもらいたいですし、もちろんエンジニアも足りていません。チームとしてはまだまだ発展途上です」

課題先進国日本だからこそ生まれたプロダクト

DFreeは、言語が壁にならない、世界を狙えるプロダクトだ。逆に言うと世界中が競合になりえるわけだが、先行する企業、競合となる企業は今のところいないのだという。その理由を中西さんに尋ねてみた。

DFreeを持つ中西さん、サイズは小さく軽量で、装着に負担にならないように設計されている

「要因はいくつかあると思います。どうしても生死に直面する問題よりは後回しにされてきた部分もあるでしょうし、そもそも海外では日本ほど高齢化が進展していないので、こういった問題がまだまだ健在化していないという部分もあります。他にも人件費が低い国では、介護周りの困りごとを、人力で解決してしまったりもしていますね」

確かに日本は介護の分野に関しては、「世界一の課題先進国」だと言える。だからこそ、クラウドファンディングで1,200万円以上を調達できたのだろうし、介護事業者との実証実験や、本格導入も進めやすかったのかもしれない。日本発、日本らしさを持ったプロダクトが、これから世界に飛び立とうとしている。

「テック・オリエンテッド・カンパニー」を目指して

中西さんの言葉で印象的だったものがある。それが「テック・オリエンテッド・カンパニーにしたい」というものだ。それは「エンジニア・リスペクト」など、別の言葉でも表現されていた。

「世界初のことをやる、という高いハードルに対して、これからグローバルに、世界と闘っていくことになります。競合は、シリコンバレーから出てくるかもしれないし、世界に名だたる大企業から出てくるかもしれない。そこで重要になるのはやはりエンジニアの存在です」

とにかくエンジニアが開発しやすい環境を作る。そして、その実現は、同社で技術開発の責任者である九頭龍さんが担っているようだ。

「うちには良い綱引きがあって、私は良い環境をエンジニアのためにどんどん揃えていきたいと思っている。一方で財務の担当者が財布の紐をしっかりと締めているので、そこはちゃんと合理的な説明をする必要があります。甘えすぎないけど、エンジニアにいかに成長してもらって、彼らの可能性を広げてもらうかを必死で考えています」

ハードウェアのベンチャーは、どんなエンジニアを求めているのだろうか。

「ビジネス側の人は、エンジニアの力量を把握できないから、キラキラした経歴を持っている人を欲しがるんですが、大事なのは経験やスキルです。回路図を渡したら読める、そのあたりは最低限スキルになってきますね」

やる気があれば未経験でも…という場ではなく、開発に関しては一定以上のレベルを求められることになるだろう。それは、プロダクトを今後世界規模に羽ばたかせていくために当然のことなのだろう。

面倒見の良さが雰囲気の柔らかさに繋がる

仕事にレベルの高さを求める一方で、エンジニアオリエンテッドを標榜していたり、しっかりとケアを行うところにトリプル・ダブリュー・ジャパンの特徴が表れている。

2017年3月に入社した齊藤さんは、開発や営業など同社の幅広い業務を担っている。前職には新卒として入社し、いわゆる「第二新卒」としてトリプル・ダブリュー・ジャパンに入社した。エンジニアがほとんどの組織で、いきなりハードウェアベンチャーに飛び込んだことになるが、コミュニケーションや商材理解についてはどのようにトライしているのだろうか?

「なんの話しているのかわからない時もありますが、週一回くらいは社内で勉強会を開いてくれたり、それでもわからない時は個別に教えてくれるので、少しずつですがキャッチアップできるようになってきました」

ビジネスモデルや会社の規模ではなく、「ミッションやビジョン」、「雰囲気」と「会社で飼っているハムスターの魅力(笑)」に惹かれて入社を決めたという齊藤さん。エンジニアが多い会社において、女性が働きたい、働きやすいと思える環境を作っていることも同社の魅力だ。

トリプル・ダブリュー・ジャパンの野望は、排泄予知だけで終わらない。超音波センサーを使って、全身のモニタリングをし、さらに広い領域での成長、拡大を目指している。世界を目指すハードウェアベンチャーで、内側からその景色を眺めたい人。まずは扉をノックしてみよう。

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