大企業出身者が集まる日本酒メディアベンチャー、好きを仕事にする人生は幸せか?

いつのまにか、日本酒がここ何年かで、おしゃれなお酒になっているではないか。つい10年前までは女性が日本酒を飲むと「おやじみたい」と揶揄されたものだが、今では和食、鮨はもちろん、フレンチレストランやバーでも楽しめる、奥深い酒としての市民権を得た。

コンビニでパック酒を買って家でグイっと…ではなく、おいしい料理と一緒にいただく上品なお酒に変貌したと言っていいだろう。

酒蔵側も、消費者のその嗜好の変化についていくために、様々な方法を模索している。株式会社Clearの代表、生駒さんは、酒蔵と消費者を「情報」という点で繋げることによって、もっと日本酒の豊かさや楽しさを知ってもらい、日本酒ファンを増やすことを目指している。彼らが手掛ける日本酒のウェブメディア「SAKETIMES」は、丁寧な記事の作り込みと発信力の高さから酒蔵関係者や日本酒ファンから大注目のプラットフォームだ。急成長するSAKETIMESは、どんなメンバーが、どんな理念で運用しているのか、取材してみた。

今までなかった、消費者が日本酒と触れあう「メディア」

もともと日本酒の通販サービスを立ち上げ、運用を行っていた生駒さんは、当時から、消費者が日本酒を選ぶ基準がスペックに依存してしまう状況に違和感を抱いていた。

1986年生まれ、2013年にClear社を創業した代表の生駒さん

「日本酒はもともと精米歩合や日本酒度、酸度といったスペックで選ばれることは少なく、”地元の酒だから”と、当たり前に飲まれるものでした。それが、技術の発展やメディアの後押しにより、精米歩合や使用する酵母などの価値基準が生まれ、消費者の選択基準もスペックに依存していきました。結果、日本酒は難しいという印象になり、一般消費者が置いてけぼりになってしまった側面があります。だけど日本酒にはスペック以外にも魅力的なストーリーがたくさんあります。そこを知ってもらうことで、もっと日本酒を楽しんでもらいたいんです」

確かにSAKETIMESには、「月桂冠でただひとり”杜氏”の肩書きをもつ人物。 日本酒文化の伝道師・相川さんのものづくり精神」や、「地方有力酒蔵復権のカギはどこにある? 『事業譲渡』を選んだ 富山・銀盤酒造の物語」など、お酒のパッケージからは読み取れないストーリーを、キャッチ―に伝える記事ばかりだ。

「僕らは『態度変容』を起こせるメディアでいたいと考えています。ただの暇つぶしを提供するのではなく、行動が変化するきっかけを与えたい。それは例えば”スーパーでお酒を選ぶときに、SAKETIMESで読んだあのお酒を買ってみようと思うこと”だったり、”SAKETIMESで紹介されている日本酒イベントに行ってみよう”と行動を起こすことなどです。実際に読者の方から、記事にあった商品を買ってファンになったとか、告知をしたイベントが大盛況だったなどの声をいただくことがあります。メディアをやっていてやりがいを感じる瞬間ですね」

SAKETIMESは、一時的に消費されて消えていく情報ではなく、読者と酒蔵を繋ぐ、そして変化を生み出すための記事づくりに注力している。その影響力から、同社は内閣府の「クールジャパン拠点連携実証調査」や農林水産省の「日本料理と日本酒のマリアージュ体験研修」に参加するなど、行政との連携を依頼されることも多い。

アクセンチュア出身、国際利き酒師が見据える海外市場

国際利き酒師という資格をご存じだろうか?英語・中国語・韓国語のいずれかを用いて認定される、日本酒に関する資格だ。この資格を持っている古川さんは、2016年12月にClear社に入社。大学時代から好きだった日本酒を広く学ぶため、オーストラリア留学中に現地の酒蔵の研究をするほどの日本酒好きだ。

新卒でアクセンチュアに入社、その後IT製品の卸の会社に転職。業務の中でウェブサイトの企画運営を任されて強い興味を持ち、ウェブメディアの企業への転職を考えるようになった。ウェブメディア×日本酒、という組み合わせの会社は他になく、迷うことなくClear社に応募した。

日本酒業界や日本酒ファンの間で、SAKETIMESの知名度は圧倒的に高い

「お鮨や和食の広がりとともに、少しずつ”SAKE”の人気も高まっています。とはいえ日本人である私たちが求める日本酒情報と、外国の方が求める日本酒情報には違いがあり、難しさを感じています。まだまだ手探りで、成果を一つづつ積み重ねていくフェーズですね」

大手企業から、当時社員数2名のClearに転職

もともと、大手の広告制作会社に勤務していた高良さん。当時代表の生駒さんを含めて社員数2人のClear社に転職した。2015年11月のことだ。

広告制作会社に新卒から5年半勤務したのち、Clear社に転職した

日本酒が好きだった高良さんは、趣味で利き酒師の資格を取得。酒蔵の経営をしていた同級生とともに利き酒師のイベントを開催したりと、本業のかたわら、趣味の日本酒活動を積極的に行っていた。その同級生と、新しい日本酒ブランドを作るプロジェクトを共同でスタートすることになった。そこにアドバイザーとして参加したのが生駒さんだった。

「当時転職は考えていませんでしたが、日本酒好きの一人として、代表の生駒のことは一方的に知っていました。日本酒ブランドを作るプロジェクトが終わった後も彼と定期的に情報交換していたんですが、ありがたいことに一緒にやらないかと誘ってもらいました」

特にベンチャー企業に興味があったわけでも、詳しかったわけでもないという。実際、転職を検討した時には、お金の面に限らず、漠然とした不安を抱えていたそうだ。

「とはいえ、そのまま当時の会社にいたら安心なのか?幸せなのか?と考えたら、そんなことは保証されていないだろうと。だったら、好きなことでチャレンジしたいと思ったんです。生駒の事業へのビジョンがはっきりとしており、具体的だったことで、不安はすぐに払しょくされましたね。自分もここで、チームの一員として仕事をしたい、と強く思うようになりました」

そんな高良さんに、Clear社にどんな人が向いているかを聞いてみた。

「僕らは、ほかにないサービスをしているので、成功までの道筋も、自分たちで創っていかなきゃいけないんです。なので、誰かの真似ではなく、自分で考えて行動できる、自ら仕事を作っていける人が向いていると思いますね」

スマホゲーム作りを経てClearへ、育休を取りながら開発を担当

社員第一号としてClear社に参画した西久保さん。Yahooをはじめ、大企業でのキャリアを積んできた。エンジニアとしてClear社のプロダクトの開発全般を担当している。現在は生まれて4か月のお子さんを抱えており、リモートワークをしながら「たま~~~に会社に来る(笑)」そうだ。

取得率が2%と言われている男性の育児休暇。取得日数はほとんどが数日だというが、西久保さんはなんと1年の育児休暇を取っている。

「子供って、常に張り付いてなきゃいけないんですよね。ここで良い子に1時間待っててね、なんてもちろんできない。3分も待っていてくれない存在なんです。今は妻と二人で育児に向き合うことができていて、本当に良かったなと思ってます」

Clear社は、働き方も、事業の今後も、スタッフのみんなで作り上げている。今後も「日本酒」というテーマに注力しながら事業の拡大を目指すClear社に、当事者として参加してみてはいかがだろうか?日本酒が好きな人、自分で事業を動かしてみたい人、ウェブメディアに興味を持っている人、Clear社と日本酒が待っています。

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