【27兆円の個人情報市場】消費者が自分の個人情報をマネタイズ!独ブロックチェーンプラットフォーム
自分の情報は、自分で売ろう
ITの巨人、Facebookですら個人情報の流出を防げない。
その事実は世界中のFacebookユーザーに衝撃を与えた。あなたの個人情報は、日本国内だけではない、世界中で売買されているかもしれない。
個人情報売買の市場は今や2,500億ドルの規模に至ると言われるが、我々消費者はその恩恵を感じることはほとんどない。
しかし、消費者が自分のデータを自分自身で企業に売ることができたらーー?
「個人情報は、21世紀の石油と言っていいほどの価値があります。Facebookの事件は、氷山の一角。私たちは、消費者一人一人が自分のデータをコントロールできる世界を作ります」
そう語るのは、消費者が自分のデータを直接企業に売ることができる、ブロックチェーン上のプラットフォームを開発するOpiriaのCEO・Christian Lange博士。
Opiriaは、既にワーキング・プロダクトを持ち、メルセデス・ベンツやアウディ、P&Gなど蒼々たる大企業たちがクライアントだ。
個人情報売買の、新しく、より公平な形を模索するドイツ発スタートアップに迫る。
売り買いされる個人情報、市場規模は2500億ドル。架空の個人情報も……
– 個人情報が勝手に使われている問題が、大きく報道されるようになりました。個人情報の現状について、どのような課題があるのでしょうか?
個人情報が盗用されていることは、Facebookの一件以来、よく知られるようになりましたね。
しかし、個人情報の盗用以外にも、さらなる問題がここにはあります。
それは、データブローカーが企業に提供する個人情報は、必ずしも正しくないということです。
元々集めた情報は本物であったとしても、様々なプラットフォームから集めたバラバラの情報を一元化する過程で、間違ったデータになってしまうことが多いのです。
また、悪質な業者だと、架空の消費者情報を作成して、売り付けているところもあります。
- そんな不確実なものでも、個人情報を進んで買う企業がいるんですね。
企業も、こうした問題について認識しています。しかし、対策方法がないのです。
それくらい、企業は消費者のデータを求めています。
よりパーソナルなターゲティングが必要とされる今、商品開発やマーケティング、様々な企業活動において、個人情報は非常に価値があります。
しかし、間違った消費者データを元に商品開発をしても意味がありません。
この状況から儲かるのは、データブローカーとプラットフォームを持つ一部の大企業だけ。消費者にとっても、企業にとっても、マイナスでしかないのです。
消費者が、自分の個人情報をマネタイズできる市場をブロックチェーンで作る
– 個人情報が勝手に売り買いされている現状に対して、Opiriaはどう問題を解決しようとしているのでしょうか?
私たちは、消費者が自分自身で自分の個人情報をマネタイズできるプラットフォームをブロックチェーン上に作ります。
消費者と企業を直接繋げ、個人情報を提供する消費者に対して、仮想通貨で報酬を返します。
これは、消費者も、企業もwin-winな仕組みです。
消費者は今までタダで取られていた自分のデータを、自分のコントロール下において、個人データを売って報酬を得ることができます。
企業にとっても、消費者から直接買うことで、低いコストで上質なデータを入手することができます。
-ここで言う「個人情報」は、具体的にどんな情報を想定しているのでしょうか?
1番早い段階では、消費者の視線情報と感情分析データです。
ユーザーの承諾の上で、PCなどのカメラにアクセスし、それらのデータを取得します。
将来的には、ユーザーのウェブサイト閲覧履歴なども扱う予定ですが、直近ではこの2種類のデータを優先します。
– なぜ視線情報と感情分析データなのでしょうか? 取得が難しそうに聞こえます。
確かに、難しいです。
しかし、視線情報や感情分析データは、企業にとって非常に重要です。
例えば、企業が自社ウェブサイトをデザインするときに、「ユーザーがサイトのどこにまず1番注目するのか」、「企業が見てほしいと思っている情報を本当に見てくれているのか」など、視線から分かる情報を得られれば、より訴求力の高いメッセージを発信することができます。
– 感情分析データはどう使うのでしょうか?
企業はユーザーに「楽しい気持ちになってもらいたい」、「高揚した気持ちになってもらいたい」と意図して広告を打ったり、プロダクトを開発することがあります。しかし、ユーザーは必ずしもそういう気持ちになるとは限りません。
企業は、実際ユーザーがどういう感情になっているのか知りたいのです。
欧州議会のお墨付き!? Opiriaの個人情報管理術
– 個人情報を第三者に渡すことへの警戒心が高まっています。そうした警戒心に対して、Opiriaのプラットフォームはどう対応しますか?
そうした気持ちがあるのは理解しています。むしろ、今の状況であれば警戒しない方がおかしいかもしれません。
私たちが、ブロックチェーン技術を使う理由はそこにあります。
たとえOpiriaがハックされたとしても、Opiriaのプラットフォームに上げた個人情報が盗まれることはありません。
私たちが扱う個人データは、特定の個人と結びつかないようにしています。
例えば、○○さんから視線情報やユーザー情報を取得したとしても、それが「○○さん」に属するとは分かりません。
さらに、ブロックチェーンによって、そのデータは暗号化されます。
暗号を解くには、公開鍵と秘密鍵という2つのパスワードのようなものが必要ですが、秘密鍵はユーザー自身にしか知らされません。
私たちOpiriaもその秘密鍵を知ることはできません。
– GDPR(※)を始めとして、個人データの扱いには厳しい規制がかかっています。特にヨーロッパは世界有数の厳しさだと思います。規制についてはどう対応していますか?
※2018年5月からEUで施行された個人情報保護の法律。個人情報を扱う企業にとって、より厳しい基準が課せられることになった。
GDPRには完全に対応済みです。Opiriaは、欧州議会からの承認も得ています。
– 欧州議会に承認されてるんですか? それは、かなりすごいことなのではないでしょうか?
すごいことだと思いますよ(笑)。
欧州議会は、個人情報の力を一般市民に戻そうと、努めています。そのビジョンにOpiriaがマッチしているので、評価してもらえたのだと思います。
他にも個人データのプラットフォームを構築している会社は数社ありますが、こうした承認を得ているのは、Opiriaだけです。
↓欧州議会議員のDaciana Octavia Sarbu氏が、Opiriaについて説明している
2018年現在、人間は、センサーを付けて歩いている?!
– 既にプロダクトが稼働しているんですよね?
はい。Opiriaのモバイルアプリを通じて、企業がユーザーから直接サービスやプロダクトのフィードバックを集められるようになっています。
実際に、Mercedez meというメルセデスベンツのモバイルアプリの機能改善にも使われました。
– メルセデスベンツを初めとして、クライアントに、スタートアップではあまり見ないほどの大企業が連なっています。
2005年に起業した最初の会社では、運転手の運転行動を分析するソフトウェアを開発していました。
アウディやメルセデスベンツなどは、そこで得たつながりです。
そもそも、Opiriaの案は、クライアントからの無茶ぶりで思いついたものなんです。
– クライアントは何と言ってきたのでしょうか?
「世界中のユーザーの行動をリアルタイムで同時に知りたい」と言われたんです。
その話を2008年に聞いたときに、「ユーザーにセンサーでも付けない限り、そんなことできないだろう」と思いました。
しかしその後数年で、スマートフォン、アップルウォッチ、スマートスピーカーなどが続々と出てきました。
そして、「もう人間には、センサーが付いているじゃないか」と気がつきました。
– そこからOpiriaにつながる訳ですね。
そうです。当時は、個人データの安全性の問題はそこまで騒がれていませんでした。
Facebookの事件が起きて以来、Opiriaのビジョンを理解して貰いやすくなっていると感じます。
– Facebookさまさまですね(笑)
日本企業にとっても、個人データ取得は死活問題
– 日本市場をどう見ていますか?
データ分析市場の規模では、日本は世界トップ10に入る大きさです。
日本は輸出入ともに非常に規模が大きい。
輸出の際は、国外の消費者データが、日本企業の商品開発で活躍します。
一方で、輸入の際には、外国企業にとって日本ユーザーの動向がわかることは魅力的です。世界中の企業が日本消費者のデータを知りたがっています。
– 日本では特にコインチェックの事件もありました。仮想通貨を利用することへの不安もあると思います。
Opiriaのプラットフォームと仮想通貨取引所のセキュリティは全く違います。
仮想通貨の取引所は、公開鍵と秘密鍵を一緒に保管しているので、ハッキングしやすいんです。その点が、Opiriaとは異なります。
僕は個人的に、取引所には絶対仮想通貨を残さないようにしています。
スポンサーみたいになりますが、仮想通貨はハードウェアウォレットに必ず移した方がいいですよ!(笑)
個人情報が持つ価値の高さに驚いた。
そんな高価値のものを今までタダでとられていたということだ。
個人情報の力が消費者に戻り、個人が自分の意思で、自身の個人情報を活用できるようになることを期待せずにはいられない。
欧州議会からも期待を寄せられるOpiriaが、この改革を実現する日も近いかも知れない。