大麻産業にブロックチェーンを活用!? スタートアップが挑む大麻産業の”透明化”

今最も成長が見込まれている市場の1つ、それは大麻市場だ。

合法化に向かう国が多いと予測される中、今後年平均で約60%もの成長率が見込まれている。(Forbesより)

「大麻=悪いもの」という認識はアメリカやカナダでは既に過去のものかもしれない。

最近ではカナダが、医療用大麻に続き娯楽用大麻を合法化することを決定した。また、2027年までに合法大麻の消費額は、世界で570億ドル(約6兆3000億円)に届くと予想されている。(米Forbesより) (もちろん違法の大麻を吸引する人口も想定できるため、産業の世界全体としての成長は未知数だ。)

今月17日には、コカ・コーラが、大麻入り飲料の開発について検討していることを明らかにするなど、大麻産業への新規ビジネス参入も相次いでいる。

そういった時代の流れの中ついに、大麻ブロックチェーン企業が現れた

チームほぼ全員がエンジニアで構成されるGANA Coin(ガナコイン)は、ブロックチェーン技術とAIで、大麻産業を「裏ビジネス」から「安全、安心感のあるビジネス」へと変革させる。

「大麻産業は、今まで“裏の世界”として扱われていたこともあり、未だにとてもアナログな産業です。売買のやり取りはすべて現金。さらに、情報の透明性が低いために、不純物が混じった低品質な大麻商品が横行しています」

GANA Coinにてクリエイティブディレクターを担当するYongjun Choi氏。

GANA Coinは、エストニア企業だが、実はほとんどのメンバーが韓国系のエンジニアで構成されている。韓国も日本同様、大麻使用が合法化されていない国の1つである。

「私たち自身は大麻を吸いませんが、この産業には見過ごせないほどの大きな問題があります。またそれ以上に、大きな市場に成長する可能性があります」

データアナリストのYongho Ko氏。

大麻産業にブロックチェーン技術を取り入れる、エンジニアたちの先駆的な挑戦に迫った。

【大麻のトレーサビリティを保証】ブロックチェーン技術で、不純物入りの大麻から使用者を守る

ー大麻産業には、どういった問題が存在するのでしょうか?

大麻産業は成長している一方で、未だテクノロジーの活用が遅れた、とてもアナログな業界です。

その弊害の1つは、大麻製品の情報の透明性の低さです。

普通、食品を買うときには、どこの誰が生産したのか、製造元の企業、またどういった成分が入っているのかなどの情報が開示されていますよね。

でも、大麻の場合、この大麻がどこから来ているのか、何が入っているのか情報が行き渡っていないことが多いんです。

そうした透明性の低さを悪用して、大麻以外のものを混入する悪質な生産者やディーラーがおり、“Laced Cannabis”と呼ばれる、不純物の入った大麻が売られていることがあります。

例えば、大麻の一部分には、ガラスのように見えるところがあるのですが、本当にガラスが混入されている製品もあります

ーガラスが大麻に入れられているんですか?! それは、健康被害もありそうです…。

特に、メンタルヘルスや身体的な痛みの治療に大麻を使用している人にとって、こうした不純物入りの大麻はとても大きな問題です。

不純物のせいで、状態が悪化してしまったり、使用する必要が高い人が大麻の使用を止めてしまったりする場合もあります。

ー大麻産業の情報の透明性を上げるために、ブロックチェーン技術がどう活用されるのでしょうか?

私たちは、大麻のトレーサビリティをブロックチェーンで保証しようとしています。

大麻の生産者情報や成分情報をブロックチェーンに記録して、消費者が正しい情報を得られるようにします。

具体的には、大麻生産者から大麻の生産や成分に関わる情報を仕入れ、それをブロックチェーンに記録します。

そして、それらの大麻製品にQRコードを付与し、ユーザーがそこから情報にアクセスできるようにするんです。

ブロックチェーン技術によって、情報が改竄されることはありません。

ーなるほど。でも、もし生産者自身が嘘の情報をブロックチェーンに記録したらどうなるのでしょうか?そもそもの情報が間違っていたら、改竄できないことも意味が無くなると思います。

良い質問ですね!

しかし、僕たちは信頼できる生産者とだけ契約を結ぼうとしています。誰彼構わず結ぶわけではありません。

生産者にとっても、ブロックチェーンにちゃんと情報を載せることで、他の大麻生産者と信頼性の点で差別化できるはずです。

画像認識AIで大麻成分を判別

ーブロックチェーンの他に、AIも活用されるということですが、AIはどう活用していくのですか?

大麻にスマートフォンのカメラをかざすだけで、大麻成分がわかるようにするつもりです。

大麻には大きく分けて2つの種類があります。心を落ち着かせるものと、多幸感が増えて気分が上がるようなもの。

大麻製品の中に、どういった成分がどのくらいの割合で入っているのかを画像認識AIで判別できるようにします。

しかしまずは、ブロックチェーンの実装が優先で、この機能はそのあとですね。

今はプロトタイプ用に、普通の草と大麻を見分けられるように学習させています。

このような大麻の画像を集め、学習させている。「今、パソコンの中に大麻の画像が溢れています……」とのこと。

大麻の消費データ提供者には、仮想通貨で報酬を与える

ー仮想通貨(トークン)はどう活用される予定でしょうか?

ユーザーが、自分のプロフィールや、大麻の消費の仕方を記入すると、トークンで報酬がもらえるようになっています。

また、集めたトークンで、ユーザーは大麻に関連する商品をGANA Coinのモバイルアプリ上で購入することができます。

ー集めたユーザー情報は、どう使用するのですか?

ユーザー情報を、医療機関や大麻開発会社に売ることを考えています。

現在、特に医療現場において、大麻の研究開発が急速に進んでいます。

大麻を医療用に使う人が増えているからです。

しかし、“裏の世界”でやり取りされてきたので、ちゃんとした大麻の消費データは不足しています。

そのために、私たちはユーザーデータを医療現場などに提供する予定です。

「ユーザー情報を売る」というと、人聞きが悪いかも知れませんが、私たちはFacebookやAmazonなどのようなやり方はしません。

許可をくれたユーザーからしか情報は集めませんし、無料で取るのではなく、対価としてトークンによる報酬を支払います。

また、ユーザーの情報は、特定の個人に紐づかないようになっています。

例えば、わたしのデータだとしたら、「韓国の男性」ということはわかっても、「Yong Ko」という個人のものだということはわからないのです。

大麻業界をブロックチェーンでクリーンに

ートークンで大麻を買うことはできないのでしょうか?

大麻を仮想通貨で買うことはまだ法律で認められていません。

しかし、将来的にはそうした可能性も視野に入れています。

なぜなら、大麻産業の問題の1つには、大麻の小売業者や生産者は、銀行口座が作れないこともあるんです。

そうすると、彼らは、常にキャッシュを持ち歩かなくてはいけないのですが、それには危険が伴います。

大麻小売り店や大麻農場が、現金のために強盗に襲われることもあるんです。

強盗から身を守るために、セキュリティガードを雇っている人も多いですね。

ー大麻を売るのも命がけですね……。

大麻産業はその成長に比して、テクノロジーの活用が伴っていない状態です。

昔は、裏取引が中心でしたし、使用者もごく一部の人に限られていましたから、それでも良かったかも知れません。

しかし、今はそういう時代ではありません。「普通の人」が、娯楽用、また医療用の大麻を消費しています。

大麻+ブロックチェーンというと、流行っているものを掛け合わせただけかのように受け取られることもありますが、私たちは本気で大麻産業を変えたいと思っています。

「ただ流行り物を掛け合わせただけじゃないか」という批判について反論。

裏の世界のものから、表の世界のものに大麻はなりつつあります。

大麻を医療用として必要とする患者さんも多くいます。

しかし、大麻業界のアナログさが、大麻使用の安全性を下げています

私たちのミッションは、大麻使用を、ブロックチェーンやAIといったテクノロジーの活用で、より安全なものにすることです。


ブロックチェーンやAIの活用が進んでいるが、大麻産業にもその波が及んでいることは驚きだった。

日本の感覚だと、未だ悪いものというイメージが強い大麻。(実際、医療用大麻も娯楽用大麻も、日本では違法である)

しかし、合法化されている国を初めとして、大麻消費が普及してきている国も多い。

そうした普及の中で、テクノロジーを大麻産業に活用することは自然な流れなのかも知れない。

テクノロジーの面から大麻の安全性を支えるGana Coin、さらなる活躍が期待される。

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