新規顧客は、『カツサンド』がお好き? 人工知能にツイッターマーケティングを担当させてみた

人工知能は、人間の想像の付かないような、意外な相関関係を見つけることに長けている。

あるテーマパーク施設の公式SNSのフォロワーの「つぶやき」を人工知能が自然言語処理したところ、彼らがつぶやいている内容にはある共通項があることを見つけた。

『カツサンド』だ。

もちろんフォロワーたちのつぶやきには、そのテーマパークに関するものも多かった。

しかし、何故か『カツサンド』も彼らの中で共通してつぶやかれているワードであると人工知能が発見した。

カツサンド……?美味しそうではあるが、テーマパークと何の関係が?

フォロワーの思わぬ共通項。「こんなことが分かったところで何になるんだ?」と疑問に思う人もいるかもしれない。

しかし、企業のSNSマーケティングにとって、こうした情報はとても重要だ。

「人工知能がTwitter広告のターゲティングを行うことで、より高いエンゲージメントを実現することができます」

そう語るのは、株式会社ホットリンクの太田真明氏。

同社が提供するSNSマーケティングツール『BuzzSpreader(バズスプレッダー)』は、ビッグデータ解析に基づいたAIエンジンによるターゲティングをクライアントに提供している。

BuzzSpreaderのプロダクトマネージャーを務める太田氏。

Twitterや2ちゃんねるのビッグデータを持つ同社が、人工知能を活用することでいかに企業のTwitterマーケティングを支えているのか。AIの活躍に迫る。

某有名テーマパークとカツサンドの相関関係

ーあるテーマパークの公式Twitterのフォロワーが、カツサンドに対しても共通して高い興味を示しているというのはどうやってわかったのでしょうか?

フォロワーのすべてのつぶやきを自然言語処理AIで解析したところ、『カツサンド』というワードが上がってきました。施設とは全く関係の無いキーワードですよね。

ーこうして共通して上がってきたワードは、どのように活用されているのでしょうか?

TwitterやFacebookには、キーワードターゲティングという手法があります。

広告出稿するときに、いくつかのキーワードを設定してそのキーワードをつぶやいた人たちにリーチしたいと決める方法です。

キーワードがより正確なものであればあるほど、少ないコストで効果的に自分の潜在顧客にリーチすることができます。

このキーワードターゲティングにAIの自然言語処理を活用しています。

あとは、同じツイートをリツイートした人たちを1つのクラスタに分けて考える「コミュニティクラスタ」というデータ分析の方法と、性別や地域などユーザーの属性に分ける分析方法も活用しています。

これら3つの切り口から、独自のターゲティングを行います。

実際に、BuzzSpreaderの管理画面を開きながら解説してくれた。

テーマパークファンに対して「カツサンド」というキーワードは、人間では想像できないですよね。

こうした意外なキーワードはどこまで効果的なのでしょうか?

まず、既存のフォロワーに対して、“刺さる”投稿をすることができます。

フォロワーの中で、このワードが話題になっているということなので、それに関連した投稿をすることでコンバージョンを高めることができます。

また、潜在的なファンの獲得にも繋げることができます。

広告出稿する際に、既に既存ファンが興味を示している内容をツイートすることで、既存ファンと同じ特性を持つであろう潜在的なファンにもリーチできる可能性が高くなります。

ーTwitterは日々話題が変わっていく印象があります。カツサンドへの興味も一時的なものである可能性はありませんか?

その通りで、もちろんずっと同じキーワードを使えるわけではありません。

この例で行くと、『カツサンド』はたまたまこの時期にそのフォロワーの中で多くつぶやかれているだけであって、1ヶ月後も同じ訳ではありません。

BuzzSpreaderは、1週間おきにキーワードを選定し直します。

Twitterでは話題の移り変わりが早いので、その時々にあったワード設定をすることは非常に大切です。

ビッグデータ解析企業としてのレガシー

ーもともとはビッグデータ分析が主事業だということのすが、なぜSNSマーケティングサービスを開始されたのでしょうか?

元々は2ちゃんねるやTwitterなどのビッグデータを分析する企業としてスタートしました。

例えば、クライアント企業に対して、その会社に関するつぶやきなどのソーシャルビッグデータを分析していました。

しかし、次第に『分析してもらっても、その結果をどうSNSマーケティングに活かせばいいのか分からない』という声がクライアントから聞こえてきました。

分析結果をSNSマーケティング施策へつなげられないことが、1番の課題だと気付きました。

そこで、ビッグデータ分析のノウハウを活かした上で、施策まで行えるツールを作ろうということで、BuzzSpreaderが生まれました。

ービッグデータを扱う企業だからこその強みはありますか?

Twitterのビッグデータを包括的に持っているので、どのようにツイートが拡散されていったか、その経路を俯瞰的に見ることができます

例えば『こういう人たちにもうちの商品は興味を持ってもらえているんだ』ということが分かるので、そこから顧客の新規獲得等にご活用して頂いております。

インタビューには、太田氏だけではなく、エンジニアの王 文平氏(写真中央)、開発本部長の福山 和也氏(写真右)も同席した。

SNSマーケティングをAIに任せる時代はすぐそこに……?

ー今後の展開について教えて下さい。

キーワードターゲティングの枠を超えて、より多くのことをAIに任せていきます。

具体的には、ソーシャルメディア運用の施策について、AIがリコメンドできるようにしたいですね。

当社のノウハウに基づいて、SNSコンサルティングも行っているのですが、将来的には人の手ではなくて、AIが代替できるようになるのではないかと考えています。

『こういうコンテンツを出した方がいいですよ』、とか『この投稿の次はこういう投稿が適しています』とかそういったこともAIが行えるようになるはずです。

また、他の目標としては、Twitterだけではなく、他のSNSプラットフォームにも広げていきたいですね。

ハングリーな外国エンジニアを惹きつける開発環境

ーホットリンクでは、どのような開発環境を持っているのでしょうか?

うちは、データを解析しAIでソリューションにつなげる会社なので、基本的にR&D(研究開発)をしたいエンジニアに人気ですね。

でも、フロントの部分にも力を入れていて、昔の技術ではなくて、React.jsなど新しい技術を使って、エンジニアがチャレンジできる環境を作っています。 (福山氏)

グローバルな雰囲気はあると思います。

あと、フルリモートしている人もいるなど、自由に仕事ができるところも好きですね。私は、最近子どもが生まれたばかりなので、とても助かっています。(王氏)

部下と上司の関係も、とても和やかそう。

ー今日来て頂いたエンジニアの王さんは中国の方ですが、外国の方も多いのでしょうか?

外国のエンジニアの人は結構多いですね。

国数にすると、8ヶ国くらいから来ています。中国とかバングラデシュとか、ミーティングでは多言語が飛び交うこともあります(笑)

英語でのランチ会を開いたりして、日本人のエンジニアも海外から来たエンジニアもより親しめるような雰囲気作りを心がけています。(王氏)

外国の社員の方は、ハングリーで熱心な人が多いと感じます。

ちゃんと言われたこともやるけど、『それ以上に何かできることはないか』、と常に探してくれる感じですね。(福山氏)

本当に、みなさんの仲の良さが伝わってくるインタビューだった。

ビッグデータ分析を得意とする企業なので、研究者肌な人が多いということだったが、終始にぎやかなインタビューで、活気溢れる職場環境をうかがわせたホットリンク。

同社が開発する人工知能搭載のBuzzSpreaderは、思わぬ相関関係を見出し、人間では予測できないようなキーワードを設定する。

キーワードターゲティングだけではなく、すべてのSNSをAIに任せたらどうなるのだろうかーー? そんな未来が待っている日も近い。

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