「満」「空」サインの光をキャッチ! 時間貸し駐車場の空きが一発でわかる画期的なシステム
今まで駐車場の空き情報は、実際にその場所に行って目で見て確認するというのが主流だった。読者の中にも自動車に乗る人であれば、なかなか空いている駐車場がなく10分、15分とか駐車場を探し回ったという経験もあるのではないだろうか。
株式会社SPOTのIoTを活用した駐車場マーケティング支援サービス「Smart Park」は、時間貸し駐車場の満空情報をアプリやカーナビにリアルタイム配信する。駐車場事業者にもドライバーにも需要があるサービスだが、そのシステムはいたってシンプルなものだった。ハードウェア開発も行う同社代表取締役社長の金子素久氏に話を聞いた。
駐車場マーケティングの新しいカタチ
「Smart Park」は、カーナビアプリ「カーナビタイム」をはじめ、アプリやカーナビで駐車場探しをするドライバーに対して、効果的なマーケティングを行うことができるものと金子氏は説明する。
「これまで、時間貸し駐車場のマーケティングは、道路上の誘導看板などを利用するなど、『自分の目で見て駐車場を探す』ドライバーに向けた広告が一般的でした。しかし、今はスマートフォンやカーナビで『駐車場を検索する』ドライバーが増加。空車情報をインターネット上でリアルタイム配信することは、ドライバーの利便性向上、駐車場の稼働率向上の両面から、効果的なマーケティング施策になると認識しています」(金子氏)
大通り沿いなどの駐車場は常に高い稼働率で動いているが、道を1本入った裏手に行けば、稼働率が低い駐車場も多くある。「IoTを武器にこのギャップを埋めたい」と金子氏は語った。その考えが「Smart Park」のサービスの根幹にある。
既存の駐車場がIoT活用でコネクテッド駐車場に
SPOTが提供する満空情報の仕組みはいたってシンプルだ。それゆえ、コネクテッドシステムがない既存の駐車場でも簡単にIoT化することができる。
CFOの藤本瑞希氏は、「時間貸し駐車場にある電光看板を活用しています。『満』と『空』の表示で光る部分が違う電球のデータを光のセンサーで取得し、その電球が点灯しているかいないかで、空きがあるのか満車なのかを把握しています。データ自体はバイナリデータなのでデータ量も軽いため、通信コストも抑えられます」と話す。
電球のデータを取得するセンサーは同社で開発したものだ。事業開発部長の渡辺有氏は、センサー部分の開発には苦労があったと話す。
「『満』と『空』を判断する電球をひとつだけ決めて、そのデータを取得するのですが、そのデータを採取する電球以外の光を認識しないようにすること、そして屋外に設置するものになるので、太陽光や街の灯りなどといった光を除外しなければならないというところが苦労しました」
そのほか、電池部分と耐久性にも注力したと渡辺氏は話す。センサーの電源は太陽電池で稼働しているが、それに加え鉛蓄電池も搭載しているため、光の少ない屋内でも、4~5ヵ月は稼働する。また、屋外の過酷な環境でも耐えうる耐久性も兼ね備えたハードウェアを開発した。
「耐久性においては日中、どんなに高温になろうとも、反対にどんな寒冷であろうとも耐えることができ、また雨風にさらされても、上に雪が積もっても壊れたり、落下したりすることもないという自信があります。このハードウェアには、日本が培ってきた『モノづくり』の技術が詰まっています。よりもっといいものを目指して、電池性能や堅牢性は磨いていく予定です」(渡辺氏)
センサーはLEDライト以外の電球でも対応可能で、丸柱、角柱など取り付け場所も問わない。
「設置はバンドで止めるだけなので、15分程度の作業になります。営業をストップするような工事も必要ありません。この点についても好評をいただいています」(金子氏)
駐車場の満空情報配信は大手企業の特権だった!?
時間貸し駐車場の大手企業では、駐車場ひとつひとつに重量センサーを埋め込んだり、カメラセンサーを取り付けたりなどして、自動車がどの場所に駐車されているかといった情報を取得し、満空情報を配信している。
「このような大手企業が独自取得している満空情報には大掛かりな設備投資が必要です。当社のシステムはとてもシンプルなものですので、営業を止めるような工事は必要なく、簡単に15分程度で取り付けることが可能です。現在、東京都内の時間貸し駐車場業者を中心に、1,000件以上の駐車場でSmart Parkを導入していただいています。今後、さらに対応地域を拡大していく予定です」(金子氏)
日本全国の時間貸し駐車場は上位2社がシェア3~4割を抑えており、残りの6~7割をその他企業で分け合っている状況だという。こういった満空情報サービスを独自展開できる企業の数は多くない。
また、地方自治体からの問い合わせも増えているという。
「観光地周辺で駐車場を探す自動車によって、渋滞が引き起こされているとのことでした。観光客は地元の人たちではないので、スムーズに空いている駐車場への導線を作ってあげられれば渋滞は減るだろうと思います。日本全国で駐車場の満空情報配信のさまざまなニーズがあると実感しました」(金子氏)
今後はもっとこのシステムを導入する駐車場事業者を増やしていく考えだ。
「駐車場事業者を増やしていくのと同時に、満空情報を表示させるアプリやカーナビなどの出力先も増やしていかなければなりません。まだ未定ではあるのですが、このシステムの横展開できるサービスも提供していければと考えています」(金子氏)
駐車場の場所や満空といったリアルタイム駐車場データを統合し、とてもシンプルなシステムで駐車場事業者とドライバーのニーズに応えたSPOT。金子氏は近未来、リアルタイム目的地情報を指し示すプラットフォームを通じて、自動運転社会の実現に貢献していきたいという壮大な話もしてくれた。自動車のあり方が変わってきた今、その自動車を停める場所にも変化が起きている。その変化に挑戦し続ける同社にIT技術と日本のモノづくりの融合した姿が見えた。